電力の不思議を再エネ三銃士が紐解く! はてな②「食品でいう成分表のようなものなのに、電源構成を開示しなくてもいいの?」
たくさんの方に読んでいただいた
「【緊急寄稿】10分でわかる!自然エネルギー系新電力を選ぶ前に確認したい、7つのポイント」
好評をいただいた一方で、不思議な制度やよくわからない仕組みに首をひねってしまう方も多かったようです。
このシリーズでは、
<7つのポイント記事>でもサラッと説明されていたけれど、もうちょっと詳しくお伝えしたい!
というポイントを、電力・再エネの専門家が、背景にある制度の説明も交えながら、なるべくわかりやすく解説します。
全7回の連載を通じて、皆さまから寄せられた7つのはてなを紐解いていきます。
はてな①「石炭や石油の発電所から電気を仕入れているのに、どうしてお金を払えば自然エネルギー100%になるの?」
はてな②「食品でいう成分表のようなものなのに、電源構成を開示しなくてもいいの?」
はてな④「自然環境や地域資源を著しく破壊する発電所の電気は選ばない企業があるって本当?どうやって選ぶの?」
はてな⑤「自分の電気代ってどのように使われているの?」
はてな⑥「電源調達の世界ってどうなってるの?」
はてな⑦「どうして電気の切替が、省エネよりも、自動車に乗らないよりも、気候変動抑止に貢献できるの?」
2回目の今回は、
「食品でいう成分表のようなものなのに、電源構成を開示しなくてもいいの?」
を専務取締役事業本部長の三宅が解説します。
前回のはてな「石炭や石油の発電所から電気を仕入れているのに、どうしてお金を払えば自然エネルギー100%になるの?」を通じて、どの電力会社でも「環境価値」を購入することで、実質自然エネルギー100%メニューを販売できることを解説しました。
今回は電力会社の電源構成に注目して話を進めていきます。
皆さんは食品の成分表を見たことがありますか?
たんぱく質や脂質といった栄養が、どのくらい含まれているのか書かれているものです。
この成分表示は、法律によって義務化されていますし、皆さんもよく目にするかと思います。
食品の中にどのような栄養が含まれているのかを知ることは大切なことです。
この成分表のようなものが電気にもあることは知っていますか?
実は、電力会社が提供する電気も、その成分にはそれぞれ違いがあります。
もちろん、電力会社によって電気の質が変わることはありませんし、作られた電気が電線に入ってしまえば、他の方法で作られた電気と混ざってしまいます。
では、電力会社が提供する電気の成分の違いはどこにあるのでしょうか。
それは、「どのような方法で作られた電気を調達しているか」ということです。
そして、「どのような方法で作られた電気を調達しているか」を表示したものを電源構成と言います。
電力会社によって、電気を調達している方法は異なるため、電源構成も変わってきます。
また、契約している電力会社の電源構成が、ご家庭の電源構成となります。
上のイラストを見てください。緑色の部分が自然エネルギーの割合を表しています。
A電力会社に契約している場合は、家庭の電源構成は、75%が自然エネルギーと言うことができます。一方で、B電力会社の電源構成を見ると、自然エネが10%なので、B電力会社と契約している家庭の電源構成は、同じように自然エネ10%となります。
ここでもう1つ質問です。
皆さんはご家庭で契約している電力会社が、どのような方法で作られた電気を調達しているのか知っていますか?
ぜひ一度、契約している電力会社のHPから電源構成を確認してみてください。
もしかすると、電源構成を開示していない電力会社もあるかもしれません。
電力会社の電源構成は、食品でいうと成分表のようなものにも関わらず、開示を推奨としているだけで、開示する義務はありません。
そのため、電源構成を開示せずに、「自然エネルギー100%の電気」として販売されていることもあります。
自然エネルギー100%の電気と聞くと、太陽光や風力の発電所から電気の調達をしていると考えてしまいますが、必ずしもそうではないことは理解しておく必要があります。
自然エネルギーの発電所で作られた電気を選びたい人は、電力会社の「電源構成」を確認することが大切です。
2019年度のみんな電力の電源構成をご説明すると、
プレミアム100プランは自然エネ79.4%、FIT電気20.6%となっており、FIT電気分に非化石証書を当てることで自然エネルギー100%とし、CO2排出量も0としています。
また、スタンダードプランは、FIT電気59.3%、自然エネ20.7%、その他(卸電力取引)20.0%となっております。
その他を除く、自然エネ・FIT電気は、すべて顔の見える発電所から調達しているため、
毎月お支払いいただく電気代が、どのような発電事業者に届いているのか知ることもできます。
ちなみに自然エネ・FIT電気の調達量は、みんな電力全ユーザーの需要量よりも多くなっています。
私たちは電源調達に力を入れており、たくさんの電気を発電所から直接調達しているため、
「顔の見える電力™️」として、お客さまに透明性の高いプランを提供することができています。
環境に考慮しているという視点で電力会社を評価するポイントは2つあります。
1つ目は電力会社が自然エネ100%メニューを用意しているかどうかということです。
このメニューを選択すれば、CO2フリーの電気をご家庭で使用することができます。
2つ目は電力会社の電源構成を見ることです。
どれだけ自然エネの導入を熱心にやっているかが分かります。
出典:非化石価値取引市場について(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas
/denryoku_gas/seido_kento/pdf/038_04_00.pdf)
こちらは経済産業省が「小売が訴求する価値」としてまとめているものです。
電力会社を評価するポイントの1つ目である「電力会社が自然エネ100%メニューを用意しているかどうか」については、環境価値を購入することで作ることができます。
ただし、この電気には産地価値や特定電源価値がない場合もあります。
そのため、電源構成を見て、どのような方法で作られた電気かを確認し、さらにどこで作られた電気なのかも知ることで、環境価値、産地価値、特定電源価値の全てが揃った電気を選ぶことができます。
再エネ100%メニューがあるかと、どこから電気を調達しているのかというのはそれぞれ分けて評価すべきものです。
次回ははてな③
「結局、環境に優しい電気ってなに?」
をパワーイノベーション部部長の梶山が解説します。
はてな①、②を通じて電気の価値について理解ができたと思います。
では、結局のところ環境に優しい電気とは何なのか、改めてご説明します。
三宅成也
関西電力原子力部門にて13年間勤務。その後、アーサー・D・リトル、KPMGコンサルティングにて幅広い業界のコンサルティングの経験を積む。小売電力事業の責任者として、ブロックチェーンP2P電力プラットフォームの開発などに取り組んでいる。 「共著『コスト削減と再エネ導入を成功させる 最強の電力調達 完全ガイド』(日経BP)」 https://www.amazon.co.jp/dp/4296105361
(取材・文:長島遼大)
2020.7.6.Mon.
はてな①「石炭や石油の発電所から電気を仕入れているのに、どうしてお金を払えば自然エネルギー100%になるの?」
はてな②「食品でいう成分表のようなものなのに、電源構成を開示しなくてもいいの?」
はてな③「結局、環境に優しい電気ってなに?」
はてな④「自然環境や地域資源を著しく破壊する発電所の電気は選ばない企業があるって本当?どうやって選ぶの?」
はてな⑤「自分の電気代ってどのように使われているの?」
はてな⑥「電源調達の世界ってどうなってるの?」
はてな⑦「どうして電気の切替が、省エネよりも、自動車に乗らないよりも、気候変動抑止に貢献できるの?」