【第2回】「世界一貧しい大統領」ホセ・ムヒカさんに聞いた 今、世界、福島とエネルギー|ENECT プラチナム連載 Vol.2
ムヒカ元大統領は、ウルグアイは欧州経済の低迷を逆に利用して、安価にエネルギー政策の転換を実現させたと語りました。電力の約95%をクリーンエネルギーでまかなう人口約350万人の小国は今、世界屈指のエネルギー先進国とも呼べます。
プラチナム連載 Vol.2のお話からは、そんな大転換を牽引してきたムヒカさんの考えの根底に、何があるのか。その礎には、これまで世界のどの国のリーダーにも決してない体験があることを、知ることができます。
今、私たちは寛容さと、相手を理解し、尊敬するという姿勢について若者、市民を教育しなければなりません。暴力を使って民主主義を植えつけようとする行為自体が、間違っています。
世界の国の指導者たちは様々な会議で集まって議論はするものの、合意には至っていません。そして、世界の主要国だけで地球の問題に対処することは、できないのです。
これらは、本来であれば世界の国々が一丸となって解決に取り組むべき問題です。全人類の今、そして未来に関わることですし、一国だけで対処することは不可能です。今こそ世界が一つになっての合意が必要なのに、そこでナショナリズムが台頭する。
世界は一つです。
日本人も着物から洋服を着るようになったように、現代は全世界の人々が、他国の良い部分と悪い部分を取り入れ合う社会になりました。しかし政治はグローバルな視点を持つどころか、隣の国の次期政権に注意を注ぎます。
矛盾だらけですね。
刑務所での時間は大変な経験でした。
しかし、人間というものは、強くできているものですよ。
そこで人間は、「自己制御」という能力を持たなければなりません。購買能力のある人はどんどん買い続けることができます。しかし、それらの物を買うために自分の人生の時間を犠牲にしていることに、気付いているのでしょうか?
買い物のために仕事ばかりするのでは、消費の奴隷そのものでしょう。
私は、貧しい生活を勧めているのではありません。お伝えしようとしているのは、質素な生活をしてでも、「自分の時間を大事にする」ということです。例えば、友達や家族と楽しく過ごす時間は、お金では買えません。
私は、人々にもっと自由になって欲しいだけなのです。
私は無宗教ですが、宗教を持っている人を羨ましいと思っています。人間には信仰が必要です。それは、宗教が社会にとって大きな役割を果たしているからです。宗教には道徳も、見事な教えもあります。
人間は死を恐れるあまり、「死んだ後もあの世で生き続ける」ということを信じたいのだと思います。宗教を持っている人は、平穏な心でこの世を去ることができるように感じます。
人生、命は、素晴らしいものです。人は辛いことを味わってこそ学び、成長します。その反面、人は成功ばかりしていると、時に傲慢の塊にもなります。
トルコ、コロンビアの長期外遊から帰国し、お疲れ、そして多忙極まりない中受けていただいた、約1時間の貴重なインタビュー。80歳とは思えぬ活力で、間にマテ茶を飲みながら穏やかに、しかし経験に裏打ちされた、説得力あるお話でした。
ENECTプラチナム連載、ムヒカさんのお話はあと2回の更新、全3回です。