【第2回】“土から力を引き出す”デザイナー・梅原真 「地域の力はどこ?デザイン的思考の源流を辿る」|ENECT プラチナム連載 Vol.5
自然エネルギーの発電方法には、風力、太陽光、小水力、揚水、地熱、バイオマス等々があり、それぞれのポテンシャルは、地域地域の風土と共にあります。
梅原さんが訪れていた福島にも当然、彼の地こその風土がある。しかし、望まずして起きた原発災害は国外まで広く、風土の魅力を超えてネガティブな印象を、福島につけてしまいました。
そこで、唐突に降りかかった災害から土地を守るべく立ち上がったのは「土から価値を生み出す」農家さん。美味しいことは大前提で、行政よりも研究者よりも早くから土壌測定を開始し、自らのつくる果物の安全性を追求してきた、「ふくしま土壌ネットワーク」でした。
梅原さんが福島にいる理由は、そんな農家さんたちと始めている取り組みにあるようです。
でもそれは、やっぱり「人の金」ですから。人の金は結局どうでもいいんです。僕は、補助金を使って成功したケースは、あんまり見ない。それが何かと言うと、やってもやらなくても「人の金」ですよ。最終的なアウトプットの緊張感は、自分の金で、「これで失敗したらあかん」という強烈なエネルギーが詰まってないとあかんですよ。
そこの出口が緩いから、「なんぼいりますか」じゃなくて、「なんぼでもいります」と。そこに全部エネルギーを入れて、「やりたいこと全部やりましょう」という話は、そういう意味です。
やっぱり、メインはもちろん桃です。そこからメッセージを出して、何とか自分たちの桃から、2次的な桃の商品をつくりたい意欲が逆に桃の方にも反映されたら、それは製品で「美味しいな」と思ったところで、「今日この桃はあるけど、次は来年にならないと出てこない」という。
それがそのままメッセージになるじゃないですか。
「これ美味しいから、生の桃も食べてみたいね」という風に繋げていければいいなと。だから製造品にうんと力を入れるんではないけど、そういうものの農家らしい加工を少しすることによって、例えば、新幹線の中でみんなが食べてるようなものになりえる可能性がある。
それを今回抽出する要素としてはいくつか構えて、3点ほどやろうということで、やっています。
僕が製造するんではないので、高橋さんのチャンネルの場面で、試食もしながら、しかもそれは「農家らしく」ないとダメ。きれいな、キューピーマヨネーズみたいなものじゃダメなんですよ。
そこは「どこを狙って、どうやった時にこれは売れるんだろう?」という研究をしながら、その製品もつくっていこうと。今回はそれを売るための、触媒のような製品もつくっていますよね。
そういう風な、土地を使って、新しい価値を100倍以上にするような、一番の原点で言えば米ですね。その米、水田をさらに果物という、それも「桃源郷」と言うくらいの、桃がいっぱいなっているところ。そしてそれも、簡単にできるものではない。デザイナーにスキルがいるように、農家にもスキルがいるわけです。
それを感じる、「土から新しい価値を生み出す人」ですね。
だから、どちらかというと「あかんのですわ」というやつにスイッチ入れたいんだけど、それにもいろいろパターンがあって、そういうやつに限って電話かけてきたりする(笑)。電話に出た女の子が困っちゃって、「梅原さん、『どうしても話したい』って言っています」という、それを断るのも気分が悪くなって、嫌でしょう?
少しもデザインの意味がわかってないし、「わからないにもほどが過ぎるよ」と。「ロゴをつくってください」って、「『ロゴ』という言葉をどこから知った」って、それもほんの昨日の話です(笑)。
要するに、相手にちゃんと志がないと、できない仕事ですわ。
だって線量のところは、何ミリシーベルトというところに、キチッとシフトしたことをやってるわけでしょう。そこで「先手を打ってる」というかね。
それは一つのデザインであるし、考え方でもありますよね。それもよかったですね。
ここははっきりと言えます。ししとうをつくった。「今日は20キロやね」と言うたら、月末に金が入る。このシステムである限り、四万十の有機の人たちに僕は「お前ら、本当に愛着のない農業してるわ」と言った、ということですね。
そういう意味で何かをする時、「どうやったらみんな楽しくなる?」、「どうやったらお酒が美味しくなる?」とか、そういうことを考えることが、農業で「どういう箱に入れたらいいんだろう?」、「どう販売したら売れるんだろう?」と考えるのと、イコールなんですよ。そういう「自分で考える部分」をなくしてしまったのが、まあ、ここは農協ですけれども、「農協に持ってきたらOK」みたいなね。そこしかダイレクトになくて、「2キロ先に持って行ったら金くれるで」というシステムは、効率は良かったかもしれないけど、農業をスポイルさせたんじゃないですか。
都会の人もそれがどんどん分かってきて、ポーンと置いてあるのが嫌んですよ。例えば紀伊国屋だったら、何か「バイヤーがちゃんとしてくれてそうだから」、値段が倍でも買うと。それが他のところだと、生産者コーナーに行って買うんですよ。人の名前が書いてあって、安心そうだから。
農協の方はそうではなくて、「そのシステムをつくったから今の農業があるんです」と思ってると思います。以前僕が講演に行った時、会の後に円卓での交流会で、そりゃあもう、キツい眼してました。オレがあまりにええこと言いへんから(笑)。皆さん物は言いませんが、「オレらも、オレらなりにやっちがうぞ」みたいな感じを無茶苦茶受けて。
その時は営農指導会60周年のメインで、「梅原さんの講演を聞きたい」。「今の農協じゃダメです」って営農指導員の方が来て、「本当のこと言ってください」ということでもあったわけ。
梅原さんの高知からの眼差しには、あらゆる地域に共通する問題と、エネルギーや農業といったジャンルを超えて社会が乗り超えるべき提議が、含まれています。
自立し、状況を打破し、地域を活性化するヒント溢れるインタビュー。
全3回の最終回へ続きます。