ブルーベリービネガー
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本記事ではTADORiで紹介している「ブルーベリービネガー」「ピンクのブルーベリービネガー」のブルーベリーを生産するSUNファーム市原を実際に訪れ、代表の生津 賢也(いくつ けんや)さんと農場長の風間 隆博(かざま たかひろ)さんにビネガー誕生のストーリーや畑でしか聞けない生産の裏側をお聞きしました。農園が取り組む「ソーラーシェアリング」や「自然農」に対する想いについても伺いましたので、ぜひ最後まで読んでみてください。

SUNファーム市原の外観と周辺の様子。高速道路の脇に残る農地や雑木林に囲まれています

東京都心から電車で2時間足らず、千葉県市原市にSUNファーム市原はあります。JR五井駅から車で15分ほど走り町を抜けると、緑に囲まれた心地良い景色が広がります。その一角に佇む小さなブルーベリー園がSUNファームです。

ブルーベリーの樹の上にはたくさんの太陽光パネルが設置されています。ここではブルーベリー栽培と同時に太陽光発電をする一般に「ソーラーシェアリング」と呼ばれる取り組みの実証実験が行われています。

太陽光パネルの下で育つブルーベリーの果樹。

代表の生津さんはもともと金融や海外での企業再建などに携わっていたのですが、40代後半にソーラーシェアリングと出会い大きく人生の方向を転換。まだその言葉すらもほとんどの人が知らない日本で、この技術を広めるための展示会場としての実証農園にしようということで、既存の農園(SUNファーム市原)の改革を始めたと言います。設立当初はトマトの水耕栽培やキクラゲの施設栽培といった環境制御を施した人工的な栽培をメインに展開していましたが、結局採算性が合わずに方向転換、様々な試行錯誤を経て現在の果樹をメインとした※自然農栽培に致りました。

※SUNファーム市原が考える自然農とは?
SUNファーム市原は未来型農業の実証実験農園として、アグリボルタイクス(ソーラーシェアリング)を利用した水耕栽培、養液ポット栽培、菌床栽培、アクアポニックス、養蜂に続き、新たな挑戦として農薬や化学肥料を一切使用しない自然農への取組みも始めています。自然農とは日本に於いて主流を占めている慣行農法や少数派とはいえ存在している有機JASといったものとは全く趣が異なる農業スタイルで、農薬や肥料は一切使用せずに大地と雨水の力、即ち自然の恵みを最大限活用しながら風土に適した四季折々の作物を栽培していく手法です。(公式HPより引用)

「木陰のようなソーラーパネル」

果樹園内に足を入れると早生から晩生まで30品種以上のブルーベリーがずらりと並び、すくすくと育っています。ブルーベリーは陰樹(いんじゅ)と言って日陰を好むタイプの樹木のため、ソーラーパネルがつくり出す木陰のような空間が成長に必要なのです。特にSUNファーム市原では発電と栽培にそれぞれ3:7の割合で太陽光が届くように遮光率を調整して、どちらにも最適な条件を生み出していると風間さんは語ります。果樹園で働くスタッフや収穫体験に来る人たちにとっても、ソーラーパネルがつくる日陰が快適と好評だそうです。

「ピンクのブルーベリービネガー」にも使われているピンク色のブルーベリーは、フロリダローズという日本では比較的珍しい品種です。私たちもその場で収穫させていただきましたが、チェリーのような爽やかさに豊かな甘みが特徴で、そのまま食べても美味しいですし、豊かな風味がジャムにしても生きそうですね。

このフロリダローズ、実は美味しさに秘密があります。それは数年前から取り組み始めた栽培方法である「自然農」です。具体的には農薬も化学肥料も使わずになるべく自然に近づけて栽培するというもので、SUNファームで数年前から始めた新しい試みです。

「自然農は良いことづくし」

ポットによる養液栽培の様子。ブルーベリー専用の有機養液を滴下している。

自然農を始める以前は養液栽培と言い、ポットの中で液体の肥料を使って栽培する方法を採用していました。SUNファームはもともと「田んぼ」だった土地。田んぼは水を保持するため、粘土質の土壌が多く、ここも例外ではありませんでした。しかもその後地域の高齢化で耕作放棄地になっていた場所を果樹園として復活させたため、必ずしもブルーベリーの栽培に適しているとは言えない土壌でした。当時はこれを克服するために土壌条件に左右されない栽培方法としてポット栽培を始め、今でもこれは継続しています。しかし、先輩農家が自然農でブルーベリーを栽培していると聞いて自分たちもそれに挑戦してみると、生育が悪くないどころか肥料もいらない、しかも味が格段に良くなるということで大成功。来年には全面的に自然農へと移行することが決まっています。

バーク材を近くでみた様子。

自然農で栽培されるブルーベリーの足元には木のチップのようなものが山積みになっていて、歩くとふかふかと気持ち良いのですが、これはバーク材と呼ばれる針葉樹の樹皮がチップ状に砕かれたものです。SUNファーム市原ではこれを地面から50cmほど積み上げて畝を作りブルーベリーを地植えしています。こうすることでバークが微生物に分解されたのち肥料の代わりになるので液肥が必要なくなり、バーク自体に虫を避ける作用があるため農薬も使わずに済みます。するとポットも要らないのでプラスチックフリー。さらにバークは千葉県いすみ市の製材所から出た端材であり、地域資源の循環にも貢献できるというまさに、体にも環境にも良いことづくしの農業を実現できると生津さんは力説します。

園内の養蜂の様子。蜂たちがブルーベリーの受粉を助けています。これが実現できるのも無農薬栽培だからこそ。

「中心にあるのは農業」

左から風間さん、生津さん

ソーラーシェアリングというと太陽光発電の部分が注目されますが、二人はあくまでも農業を中心にやらなければ意味がないと強調します。近年増加している再エネ事業者の中には山林や湿地を切り開いて太陽光パネルを設置したり、売電目的で農地を買い農業はやめてしまったりという、本末転倒なケースも見られます。そうではなくまず農業があること。それも自然農を通じて環境再生型の営農を実現して初めて、そこに付随する発電が意味を持つと二人は考えています。SUNファーム市原はそのための実証農園なのです。ソーラーシェアリングをしながらどうすれば農業の採算が取れるのか。さらにはソーラーシェアリングを社会にどのように実装していくことができるのか。こうした問いに一つずつ試しながら答えてきた結果が、今のブルーベリーなのです。

「ブルーベリービネガーを飲んでみた感想」

SUNファーム市原のビネガーは佐賀県の醸造メーカーであるサガビネガーで醸造しています。ここは100年前からの製法で今でも酢を醸造している数少ない蔵です。しかも醸造メーカーとしては珍しく少量でも委託を受けてくれるということでSUNファーム市原にぴったりだったので、生津さんと風間さん二人でわざわざ佐賀まで足を運び、自分たちの肌で現場を確認して決めたそうです。
実際にビネガーを試飲させていただくと、すっきりした味わいにびっくり。酢特有の重さを感じさせないまろやかな味わいで、夏場の取材だったというのもあり一気に飲んでしまいした。ちなみに生津さんからオススメいただいたビネガーの焼酎割りも帰宅後に飲みましたが、これもまた爽やかでとっても美味しかったです。こちらもオススメです。

今回はSUNファーム市原の「ブルーベリービネガー」「ピンクのブルーベリービネガー」をタドッてみました。TADORiではその他にも個性あふれる選択肢を見つけていただけます。

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記事を作った人たち

写真家/Spiral Club 
立山大貴 
熊本県出身。大学で地球環境について学んだことをきっかけに気候変動への危機感を覚え、Spiral Clubのメンバーに。同じ頃、偶然フィルムカメラを手にして写真を始める。写真家である前に一人の人間であることに立ち返り、暮らしを見くびらないことを大切にしている。
農民/ライター
酒向快
1997年東京練馬区生まれ。2020年京都大学農学部卒。大学在学中にバイオダイナミック農法・パーマカルチャー・アグロフォレストリーなど、オルタナティブな農法を国内外で実践を通して学ぶ。現在はSHO Farmで独立就農を目指して研修中。