2020.09.14
みんな電力には、ムハマド・ユヌスさんの「イズム」が受け継がれている。 みんでん代表の大石さんは、ユヌスさんから受けた影響を要所要所で公言している。 その視点は常に社会的弱者の支援にある。とはいえ、それは安直にお金を渡して支援は終わりというものでなく、それぞれがそれぞれだからこその力を発揮することに繋がる、持続可能な自立を促すものだ。 そもそもの起業の目的を、「貧困の解消」と当初から口にされていて、ユヌスさんの存在を抜きに考えると、実際「電気とどう繋がるの?」とピンとこないこともあった。それが、起業から10年の節目が近づくタイミングですべてが一つに集約されてきた、そんな必然性まで感じる今回の邂逅。 両者終始笑顔で、さらには未来に向けた協業の可能性まで見えたエポックメイキングな対話、ぜひ。
大石 こんにちは。マイヒーロー、ユヌスさん! ユヌス ありがとう、とても嬉しく思います。
大石 早速質問です。 ユヌスさんのまわりの起業家、例えばリチャード・ブランソンさんや「チームB」と呼ばれる方々の行動は、コロナパンデミックを受けて変わりましたか? ユヌス まだ明確には変わっていないと思います。しかし、どう変わるべきか、論議は始まっています。ただ、まだ明確なビジョンがないため、様々な方面からの話を聞いている段階だと思います。 そこでは、例えば「プロフィット(利益)、プラネット(惑星)、ピープル(人類)」という3つのPを融合させ、それらをどう年間レポートに反映させるか、そこにカギがあります。企業は現在、プロフィットのレポートしか出していません。株式市場もプロフィットのことしか意識にないので、プラネットのこともピープルのことも見落とされています。本来であれば利益だけでなく、この惑星のこと、そこで暮らす人々のことまでを含めて、評価の対象にしなければいけません。 私がいつも指摘するのは、皆さんはそれだけ働いてきて、価値観は確かに少しずつは変化してきているものの、オペレーションそのものにまだ変化がないということです。 大石 ユヌスさんは「グラミン・シャクティ」という電気の取り組みも、なさっています。その仕組みを日本に持ってくる予定はありますか? ユヌス それはありません。グラミン・シャクティのモデルは限られた範囲で実施していて、対象となっているのは、今まで電力にアクセスのなかった家庭向けの取り組みです。私たちは今主に、市民のケロシン(灯油)オイルから太陽光エネルギーへの転換に取り組んでいます。ですので、もしそれを日本に持っていくとすると、プロジェクトの全体を再設計し直す必要があるのです。
ムハマド・ユヌス × 大石英司「世界を治す具体策」 https://youtu.be/QDZ-PSBDKOI
大石 それでは、グラミンファミリーがつくったバングラデシュ製のアパレル製品は、日本に流通しているでしょうか? ユヌス いくつかの企業がつくっていますので、そのリストは用意できます。 また、最近ですとユニクロがソーシャルビジネスとして、バングラデシュで製造をしています。しかしユニクロはグラミンの工場からだけでなく、バングラデシュ全土の工場と取引をしています。ですので結果として、様々な窓口からバングラデシュ製品は日本に流通しているかと思います。 大石 例えば、そういったアパレル製品をグラミンブランドとして日本で売れば、付加価値と共にもっと高い値段で売れると思います。 これまでそれをやっていない理由は、あるのでしょうか? ユヌス そういったことはやっていません。 理由としては、私たちは製造を請け負っていて、これまでマーケティングには携わってこなかったからです。私たちはオーダーを受注し、その通りにつくるということをシンプルにやってきました。 もしオファーがあれば、グラミンの名を使う上で、そこに込められた意味を理解、共有してくれる企業とジョイント・ベンチャーのようなかたちで協業することは可能です。それはもちろんあなた方、みんな電力とも「グラミン」の名の元に日本でマーケティングを開始できたら、嬉しく思います。 大石 その時こそブロックチェーンを使って、日本でグラミン製品に付加価値をつけ、通常よりも高い価格で売ることができると思います。 ユヌス ぜひ、まずはテストケースからでも、やってみましょう。どんなビジネスを構想しているか、具体的な計画を記してもらえれば、スタッフたちとも共有して進めていきます。お待ちしていますよ。 今回の対話中、繰り返し人間がそもそも生まれ持っているクリエイティビティと「誰もが起業家である」という、独自の視点について言及されていたユヌスさん。 私たちの日々の暮らしの参考にもなるであろう、グラミン銀行はもちろん、ユヌスさんの様々な取り組みの背景にある哲学/思考については次回、そして最終回にお伝えする。
大石 「みんなが起業家」というメッセージは、とても重要なものだと思います。世界の起業家が今動いている最中ということも、とても参考になりました。 かたや日本の起業家の意識変革は、まだまだです。彼らの意識は利益中心ですので、私からも働きかけていこうかと思っています。そして私の娘、息子にもその精神をしっかり伝えようかと思います。 ユヌス それはとても重要なことです。今後もぜひ連絡をとりあって、取り組みを続けていきましょう。 大石 いつかバングラデシュにお邪魔して、直接お会いしたいです。 ユヌス ぜひぜひ、お待ちしています。大歓迎しますよ。 ワクワクする協業の可能性まで飛び出したユヌス×大石対談。ユヌスさんの哲学的背景に迫る次回は、9/23(水)公開です ★毎月の電気代から寄付できる『グラミンでんき』はコチラ★ ↓↓↓↓↓ https://minden.co.jp/personal/grameen/
通訳:鈴木敬子
エネルギーのポータルサイト「ENECT」編集長。1975年東京生、School of Visual Arts卒。96〜01年NY在住、2012〜15年福島市在住。家事と生活の現場から見えるSDGs実践家。あらゆる生命を軸に社会を促す「BIOCRACY(ビオクラシー)」提唱。著書に『虚人と巨人』(辰巳出版)など https://www.facebook.com/dojo.screening Twitter @soilscreening
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