2017.06.14
映画「スーパーローカルヒーロー」(2014年・田中トシノリ監督作品)は、完成から3年以上の月日が経った今も、全国の”ローカル=地域”で上映され、作品に触れた人々に感動を与え続けている。 それは音楽を愛し、地域を愛し、人々を愛する、もしかしたらどこにでもいるかもしれない”おじさん”が、名だたるミュージシャン、そしてあらゆる人々に愛される姿を描いた作品だ。 エネルギーについて考えていると必ず行き着く「地域で何ができるのか」、「地域でどうやれるのか」という問題。音楽とエネルギーは、辿ってみると、実は根っこの部分で共通する価値観を共有している。 映画の主役である、広島県は尾道に、一概に「CDショップ」とも呼べない「れいこう堂」を構える信恵勝彦氏。文化発信源、地域活性化の拠点としてのれいこう堂で、エネルギーについて、地域を活性化する姿勢の核心について、聞いた。
ーやはり電力の自由化には注目されていた? 信恵 でも、しがらみが多いというか(笑)。 たちまち自由化したというか、チャンスではあったんだけど、やっぱり資本がいるのかな。 ーそもそも「電気を選ぶ」ということが、日本人には初めての経験です。 信恵 企業の競争あってこその電力自由化なんだけど、地方に行くほどその競争がない。結局、選べないんですよ。それで「自分たちで電気をつくろう」と思っても、自分でつくったものを自分の家で使うくらいが関の山な上に、それすらできない。それさえできれば買う必要もないし、送電線もいらないし、ある意味それが究極のエコかもしれない。 ー東北の大震災以降に起きた、明確にポジティブな事象の一つが電力自由化です。 信恵 切り拓く方が建設的ですよね。切り拓いて「どうだ!」って言いたい(笑)。 ー文句を言っているだけでは、結局何も変わらない。 信恵 実際そういうことに精力、体力、あと時間をあんまり使うと、本当にもったいない気がするよね。 ー信恵さんのやられていることはずっと、そういったポジティブな力を促進されているような気がします。 信恵 全部ひっついてますからね、考え方だけですよね。今、社会は都合主義だから、一部の人たちのためのことばかりが起きていて、そこで「さあ、、!」という感じですよね。
ー文化の力とともに、ポジティブな力を地域で循環させるようなサイクルを始められたきっかけは、あるんでしょうか? 信恵 歳もあるかもしれませんが、30代後半から40代中盤頃、まだパソコンもそんなに普及してなくて、携帯はあったけどネットをするって時代じゃなかったで。使えるのは電話とメールくらいで、もちろん地球の環境を問題視してる人もいて。 その頃に「環境負荷」という考え方が入ってきた気がして、そこを意識しだすと、自然の循環ってやっぱりすごい。人間がそれを邪魔してるだけで(笑)。本当はそれに従わなくちゃいけなくて、それが一番「自然に優しい」という言葉の意味だと思うんです。そんな時に、上関の原発の話を知って。 ー祝島ですね。 信恵 あそこに原発ができる、できないってことを30年くらいやってるおばちゃんたちがいるのを知って、現地に行って、現状を見てきたというのは一つ大きいかもしれません。そして、そういう時に311が起きた。やっぱり2、30年に一度事故は起きるし、人間がつくったものは壊れるし、自然災害があるのも当然です。そして、人間はそれには勝てません。 ー観念して、自然の一部になるしかない。 信恵 あの時、「もう日本は終わった」と思いましたからね。本当に運が良かっただけで、さらに爆発する可能性まであって、それからはとりあえず、東日本の皆さんの逃げる先をつくる活動をして。 ーその時も、信恵さんの場合は常に音楽の力と共に、前進されている。 信恵 でも音楽の力を利用するとか、意図的に使うことにはすごい抵抗があります。 もともとミュージシャン皆さんに、内に秘めているものはあって、音楽はもちろん、MCの時にそういった想いを語ってくれたりするんです。そして、来てくれた人たちの受け取り方も落としどころもそれぞれということで。
ーあえてベタは質問ですが、音楽の力ってどういうものでしょう? 信恵 日常生活における音楽といえば、耳とか視覚的に入ってくるもので、今はデジタルで、iTuneなんかで自分の好きなものをいつでも聴けますよね。 でもライブって、生で人を観て、そこから音が出てきて、やっぱり人なんですよね。「人を見る」という感じというか。その人の人柄を、音と共に何かしら自分が受け止めて、それが喜びであったり、悲しみであったり、勇気づけられたりする。または、日常を少しでも忘れることができたり、そういうようなものだと思うんです。 どんなジャンルにせよ、偽物のアーティストにそれはないんですが、本物のアーティストには「伝える力」がある。そういう方にはオファーして、呼んで、来てもらって。 ーそこの基準は信恵さんの心に響いたかどうか。 信恵 というか、CD聴けばその人の音楽性はわかるからね(笑)。でも311の後は、音楽もなしで、例年やる集まりもあるんです。 みんなで話し合って「311に何をするか」ということになって「イベントはしたくないね」、「原発反対のパレードもやだね」と。ただ少し目立つようにして、「自分たちがしっかりそこで、過去のことと未来のことを考える日にしよう」ということで、「You Think 311」としたんです。
それはイベントじゃないから、運営するのにお金もかからない。だから、続けられる。人を集める目的じゃなくて、曜日も関係ないから、「311ということ」の発信だけができる日なので、未来の自分たちに手紙を書くという。別に書かなくてもいいし、かと思うと、観光客の人がササッと書いていく。 「311」という日と、「You Think」という言葉が、通りがかりの人にチラッとでも擦り込めたらいいだけで。「え、今日は何の日だったっけ」って。 次回へ続く
今後の上映は以下のとおり 2017年6月17日 愛知 おおぶ文化交流の杜allobu 日時:2017年6月17日(土)14:00~(13:45開場) 場所:おおぶ文化交流の杜allobuこもれびホール 〒474-0053愛知県大府市柊山町六丁目150-1 料金:前売500円 当日700円(全自由席) チケット販売6月2日(金)~ ■おおぶ文化交流の杜allobu総合案内カウンター ■おおぶ文化交流の杜allobuオンラインチケットサービス 7/29(土)アン・サリー コンサートの関連企画として上映します。 ホールでゆったり上映をお楽しみください。 ※未就学児入場不可。有料託児サービス実施(1名300円) 主催:おおぶ文化交流の杜allobu、大府市 問い合わせ:おおぶ文化交流の杜総合管理室0562-48-5155
エネルギーのポータルサイト「ENECT」編集長。1975年東京生、School of Visual Arts卒。96〜01年NY在住、2012〜15年福島市在住。家事と生活の現場から見えるSDGs実践家。あらゆる生命を軸に社会を促す「BIOCRACY(ビオクラシー)」提唱。著書に『虚人と巨人』(辰巳出版)など https://www.facebook.com/dojo.screening Twitter @soilscreening
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