
【第1回】佐藤彌右衛門|世界ご当地エネルギー会議
2016.10.31
きたる11月3、4日の2日間、福島県福島市、JR福島駅から徒歩3分のコラッセふくしまにて、世界的イベントが催される。 「第一回 世界ご当地エネルギー会議」(英題:THE 1ST WORLD COMMUNITY POWER CONFERENCE)は、副題に「パリ協定から1年 – 福島原発事故から5年 未来に向けたコミュニティパワー!」とある。ドイツ、デンマーク、スウェーデン、イギリス、スペイン、ポーランド、カナダ、アメリカ、オーストラリア、メキシコ、トルコ、キューバ、マリ、エチオピア、南アフリカ等から各地の「ご当地エネルギー」リーダーが集まる。 前例のない世界会議の中心で、福島県は会津地方、喜多方市で会津電力を牽引する佐藤彌右衛門氏に話を聞いた。


佐藤氏は、寛政2年(1790年)から226年続く合資会社・大和川酒造店の9代目当主であり、
地域のために立ち上がった、本物の”旦那”でもある
佐藤 「これからはエネルギー分散型だよ」と。「原発は時代遅れでしょう」と。つまりは、エネルギーを「市民の手に、地域の手に取り戻す」ということだよな。もう世界中で流れはできているので、「それをやろう」ということです。 去年、ドイツに福島市の小林(香)市長と行ったんだよ。市長も環境省時代に再生可能エネルギーを応援してたから、「福島市も積極的にやりたい」と言ってくれていて。そういう流れがあった上での、イベントなんです。 ——市長はそんなに乗り気なんですか? 佐藤 そういう気持ちはおおいにあると。でも、なかなか市長一人がそう考えたって、実際に実現させるには、なかなか難しいものなんだ。 ——市役所にも匹敵する地域の組織として、農協があります。最近福島県の17農協が4つになる合併もありましたが、現・JAふくしま未来の菅野孝志組合長も頼もしい、一緒に取り組めそうな方に思えます。 佐藤 組合長は今、忙しいんじゃないのか?(笑)。合併後トップになったはいいけど、まだ苦労している時期かもしれない。でも、彼のことは誘わなきゃならないな。 あれは何年だっけな、出会った当時、彼はまだJA新ふくしまの専務だったんだ。2012年かな、震災の後「桃の涙」を一緒につくったんだ。 ——原発事故直後の福島の、一つの復興の象徴であり、当時の哀しみや踏ん張り、頑張りが詰まったお酒ですね。菅野組合長が、そこからJA新ふくしまの組合長となり、合併後のJAふくしま未来でも組合長になったことを考えると、長い道のりをきた気がします。 佐藤 改めて考えてみると、これまでには珍しい躍進かもしれないね。 飯舘電力にも、もともと二本松市で有機農業やった後にJAみちのく安達に入った人間がいるんだ。それで、「何かしよう」という話になった時に、「バイオマス(発電)やらねえか」と。 だから本当はJAが合併した後、「バイオマス発電を事業計画に入れる」というのがあったんだよ。でも合併という大変な渦中で、気がついたらそれがなくなっていて、それで彼には飯舘電力に入ってもらったの。本来バイオマス事業は、JAのような組織が取り組むのにうってつけなんだ。ヨーロッパなんかに行けば、農家が協同組合つくってエネルギーやってるんだから。 日本はどうしたって縦割り行政の中で、農水の仕事の中でしかできないんだから、わかるんだよ。仮に再エネをやりたい気持ちがあっても、事業を抱えたところで、それを動かす組織体制をつくるまでに時間がかかるんだ。

——例えばまず部署をつくり、そこで2、3人のやる気ある職員を育てるところから、という。 佐藤 そういうきっかけのためにも、菅野組合長が今回のコンファレンスに出てきてくれればいいな。 ——それにしても、福島から「ご当地エネルギー会議」と銘打って世界的イベントを開催するというのは、すごいことです。 佐藤 そりゃあ、すごいですよ。NHKもトータルで取材すると言ってたから。最初に言い出したのは飯田哲也で、ドイツに一緒に行った時に「国際会議ってあんべ」と。じゃあ「それを福島でやろう」ってね。 ——しかも、世界に先駆けて。 佐藤 厳密には、ヨーロッパの各地域では、似たような会議をやってるところもあるかもしれないよ。でも、それを全世界規模で、しかも「『福島でやる』ということに意味があるだろう」と言ってるの。 それで、この主催の「一般社団法人全国ご当地エネルギー協会」はご存知でしょうが(笑)、オレが協会長をやっていて。そして、NPO法人環境エネルギー政策研究所は「ISEP」って、それこそ飯田のところ。もう一つ、「世界風力エネルギー協会」も飯田君が持ってきた。 共催に福島市に入ってもらって、さたに後援に県にも声をかけたんだけど、断られちゃった。 ——なんとなく常に及び腰な行政と、どんどん実践と実績を積み上げていく市民という図式は変わらない、、? 佐藤 まあ、そうかな(笑)。 ——福島市では、土湯温泉も発電事業がうまくいっていると聞きます。 佐藤 あそこは事業がバイナリーだから、すごい発電量があって利益はあがってる。ただ、小水力が色々手間ひまかかって、予定通りいかずに大変だということも耳にします。とはいえ、それをさっ引いてもバイナリーが引っ張って、事業自体はうまくいっると。 その上で、その成功例をうまく商品として売出し、それが土湯そのものの活性化に繋がってるかというと、そこは観光協会と発電の組合の関係とか、まだ課題はあるらしい。とはいえ、これからも第2、第3の発電所ができる。今後、盛り上がっていくと思うけどね。 ——コンファレンスに参加するのは、「ご当地」をうたっているだけに、徳島、京都、名古屋、宝塚と並ぶ中、逆に首都圏、東京からというのが少ないようです。 佐藤 そもそも、「再生可能エネルギー」というものが何か、まだやってる連中しかわからないというか、未だに社会に浸透してないんだよな。

喜多方の代名詞としての蔵であり、展示やイベントスペースとして地域振興の舞台でもある、大和川酒蔵北方風土館
——現時点で、手応えはいかがですか? 佐藤 事務局はISEPの事務所がやってくれていて。 それにしたって、海外からこれだけ来てくれて、福島のコラッセでやるとなると、満員で350人くらいでしょう?それくらいは余裕で埋まるだろうけど。 ——会津電力としてのモチべーションもお高い? 佐藤 うちは昨日も50番目の発電所の竣工式をやって、私のフェイスブックでも報告したところです。今度水力も始めるわけだけど、それにしたって大変だよ(笑)。「地域分散型」ということで、発電所が50ヶ所会津に点在してるんだから。 ——発電量はどれくらいですか? 佐藤 全部で4.5メガくらいにはなったかな。でも、会津全域の電力を賄うのが目標だから、それには50万キロあればあらゆる産業用、家庭用も含めて足りる。つまりまだ100倍近く、まあ、実質は「25万もあれば」ってことだけど、それにしても道半ば(笑)。だから水力も始めたわけだけど、当然そんな簡単に、電力会社を完全に立ち上げられるまでいくわけじゃない。まだまだ、猛烈に投資もしなきゃいけないからね。 11月3、4日開催の世界会議に向けた緊急掲載、第2弾記事もすぐ更新いたします。
TADORiST

エネルギーのポータルサイト「ENECT」編集長。1975年東京生、School of Visual Arts卒。96〜01年NY在住、2012〜15年福島市在住。家事と生活の現場から見えるSDGs実践家。あらゆる生命を軸に社会を促す「BIOCRACY(ビオクラシー)」提唱。著書に『虚人と巨人』(辰巳出版)など https://www.facebook.com/dojo.screening Twitter @soilscreening
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