【初回】特別配信!|社会が求める『ESG思考』
読みもの|5.18 Mon

 コロナ禍のGW=ステイホーム週間中、みんでん社員の発案で、社としても初となるトーク配信の試みがありました。
以下、まずはご挨拶、、

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それぞれ、講談社+α新書から出たばかりの夫馬さんの著書を手に、和やかな雰囲気でトークはすすんだ

  はじめまして。みんな電力で個人さま向けサービスを担当しています、長島遼大(写真左上)と申します。
 この度は、夫馬賢治さんの著書『ESG思考』の出版を記念して、みんな電力のコーポレートカラーに合わせたみどりの日(2020/5/4)に、オンラインイベント「コロナ期に社会が求める『ESG思考』とみんな電力の想いとは?」を開催しました。みんでんからは専務取締役の三宅さんに、ご参加をお願いしました。
 私自身が、環境問題やコロナの影響により、企業は今後どのようにビジネスを進めていくべきか考えたい想いで実施したイベントに、Facebookではすでに8,000回近くの再生がありました。いただいた多くの反響から、広く関心を持っていただけるテーマということがわかり、今回の記事化に繋がりました。
 全3回の記事を通じて、これからの社会に生きるすべての人が必要になる「ESG思考」を持っていただき、また、みんな電力の覚悟も感じ取っていただければ幸いです。
長島 今日は、みんな電力として今後どうありたいか、自分自身もどう働きたいか、皆さんとお時間過ごせればと思います。
 まず夫馬さん、三宅さん、それぞれ自己紹介をお願いします。

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夫馬 僕はもう7年間ほど、「ESG」という分野に関わってきています。
 それには、まず「SDGs」がかなり社会に浸透してきたかなという背景があります。SDGsとは国連で2015年に始まり、17のゴールがあって、飢餓や貧困、そしてクリーンなエネルギーなどについて「大きくアクションしていきましょう」という国際的なムーヴメントです。
 対してESGは「E」nvironment、「S」ocial、「G」overnanceという頭文字で、どちらかというと企業が経営にあたって何を重視すべきか、社会問題に対してどんな対応が成長に繋がるのかといった概念です。僕はそのアドバイザー的なことを、大企業や機関投資家、政府などとやらせてもらっています。その中で、みんな電力さんとはここ4、5年、顧問という立場で関わらせていただいてきました。
 今、このコロナというものが突然登場して、もう「今までの経営ではダメなんじゃないか」、「何か変えないといけないんじゃないか」という過度期にきているんじゃないかと思います。そこでみんな電力も、この状況でいったいどういう対策を打っているか、その部分を聞けたらと思います。

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三宅 私はみんな電力の事業本部長をしております。
 今日は、このコロナがあって社会が実際に混乱している中で、電力事業者として何をすべきか、何ができるか、夫馬さんとお話できたら幸いです。
夫馬 そこでまず、私から皆さんに投げたい質問があります。
 コロナの問題が出てきたのは2月上旬頃です。それまでは何のメディアを見ても、どの企業でも「SDGs」というテーマがものすごく語られていました。それがコロナ以降、パタッと消えてしまった。
 これはメディア内部の方々と話すと、実際に「SDGsはいったん脇に置こう」ということになったと聞きます。そしてもちろん、ESGについて語られることもなくなりました。

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夫馬さんの提言は、日本経済新聞などにも影響力を持つ

 しかし海外では4/28に、このコロナのタイミングだからこそ、国連の機関投資家ネットワークである国連責任投資原則(PRI)フィオナ・レイノルズCEOが「気候変動と人権」について発信されています。
 機関投資家は危機や不況があると、予算を削減したり雇用を切ったり、もちろん気候変動のことなんて考えなくなるイメージが強いと思います。しかし実際に起きていることとして、海外の企業は引き続き「気候変動」、「人権」、「雇用」といったテーマに非常に強い興味を持ち続けています。
 つまり、SDGsとESGという言葉のオンパレードが続く海外の状況と、かたや消えてしまった日本という図式があるんです。
長島 なぜ海外では日本のように、コロナの影響があっても気候変動や人権問題、環境意識がブレないのでしょう?
夫馬 『ESG思考』の中でも言っていますが、僕は経済に対する社会の考え方を4つのカテゴリーに分けています。

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[*訂正]上下軸の下方は、環境・社会への影響考慮に「反対」です

 それらは、僕がつくっている言葉なのでダサくて恐縮なんですが(笑)、「ニュー資本主義」、「陰謀論」、「脱資本主義」、「オールド資本主義」の4つ。そして日本の企業の方々は、基本的には最後のオールド資本主義にいるんだと思っています。
 それは、企業の経営的に余裕があれば「労働者配慮」とか「人権だよね」、それこそ「SDGsだね」と言ってみたりはするんですが、余裕がなくなればすぐ「しばらくやめよう」となる。そしてヨーロッパの企業が近年どこにいるかというと、ニュー資本主義のところにいます。
 ニュー資本主義とはどういう考えかというと、「環境社会をむしろ全面的に考慮していこう」と。それも先んじて手を打つことで、経営は強くなるし、ビジネスチャンスもとれるし、不況になるほど「むしろ環境を考慮していこう」という思考です。
 日本にはなかなか海外の話題が入ってきません。でも今も海外では毎日のように、アップルやマイクロソフト、ナイキなどの企業が多額の寄付をしているニュースがあります。まさにそれらこそ、彼らが「不況期であるほど手を打っていこう」と考えての行動なんです。
 このコロナ禍、あくまで雑感値ですが、海外企業による環境や社会課題へのアクションに関するプレスリリースはコロナ前と比べて倍以上になっています。かたや日本はたぶん、半分以下か1/3になりました。それはお互いの立脚点の違いが、そういう結果を生んでいるんだと思います。
 ですから僕の本にも、なぜ海外勢はニュー資本主義にいけたのか。そこに行くためにどんな変遷があって、どんな考えの変化が必要なのかを記しました。そこにこの大きな違いの原因があるんです。

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長島くんはみんな電力初の新卒新入社員で、若手のホープ

長島 時代は今、仰るような過度期にあると。ではみんな電力としてこのコロナ禍、何をしたか?または、どうありたいのか?三宅さん、教えてください。
三宅 ここまで海外との比較の話がありましたが、確かに日本の企業が、この事態になって何かアクションを起こしたという話は聞きません。例えばFacebookが雇用対策をしたとか、そういった類の話が聞こえてこない気がします。
夫馬 日本でもあるにはあるんですが、少ない。当然日本企業も、できるだけ雇用を守ろうとか、助成金を使おうとはしていますが、現状は最低限のことをやろうと。だから、強く「このタイミングだからこそ!」というわけではないので、おのずと積極的にリリースを出すようなこともない。それでニュース性が出ないんだと思います。
長島 みんな電力が実施した取り組みはどんなものでしたか?
三宅 日本企業は総じて静観している雰囲気の中、みんな電力はベンチャーらしく「すぐできることは、どんなことだろう?」という風に考えました。
 お客さんの中には本当に困っている方々もおられて、例えば飲食店さんからの「閉店しているので収入がない」という声などは、結構ありました。
 まず最初は3月末頃、経産省の方から「電気料金の支払いを一ヶ月延期」という指示があり、これは、すでに業界として受け身になっている空気の中「そんなことやるの?」という感じでしたが、ウチとしてはなるべく早くやろうと対応しました。
 そして次に、やはり「もう一歩踏み込んだことをやろう」と。
 それは飲食業を中心に、かなりご苦労をされている個人事業主さんの方々の電気代を一ヶ月分、「基本料金無料」という取り組みを会社に出したんです。それは私としても結構悩んだんですが、意外にも社内には反対する人がいなくて、社長も含めて「ぜひ、やろう」と。
 すると思いの外「よくやってくれた」という、大きな反響をいただきました。そしてそういった声を通じて、皆さん本当に困ってらっしゃるんだなということがわかりました。私たちとしては、それを良い事例として見ていただけたらやったかいがありますし、業界としても、そうやって踏み込んでいくことがもっと普通になればと思います。

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長島 夫馬さんはご著書で、それは日本人のマインドなのか、私たちは政府や団体が決めたことは愚直にでも遂行するわりに、自分たちで考えて何かを0から始めるということがない傾向があると書かれていました。 
 今三宅さんが仰ったような電気料金の処置は、ある意味で有事には誰でもやらないといけない、本来であればもっともっと助け合えればと率直に思います。
 電力業界として、今後もっとアクションは出てくるんでしょうか?
三宅 端的に言うと、電力業界はとても薄利な業界なので、たぶんそもそも皆さんも大変だということがあると思います。
 そしてコロナみたいなことが起きて、夫馬さんの言う「ニュー資本主義」という考えももっと増えててくるとは思いつつ、じゃあ電気を売る私たちのような業界として、どのように生き延びていけばいいのか。つまり私たちはこれをきっかけに、お客さまとどのように長期的に付き合うことができるか、そこを考えなければいけない段階にきていると思います。
 電力業界は、今まであまりに価格競争や、短期的な「安ければ選ばれる」という価値観でやってきました。でもこれからは、それだけでは保たないんです。
 であれば、みんな電力として考えているのは、いかにお客さまと長いお付き合いができるか。その延長線上にあるのが今回のアクションですし、たぶん業界としても、今後はそうじゃないと生き延びていけないのではと思うんです。

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夫馬 今仰った「長い付き合い」は、非常に重要なキーワードです。
 だってもし、「長い付き合いをしよう」と思っていなければ、実際今のような時は、自分の身をとにかく守った方がいいはずです。本当は余計なことなどせず、手元のキャッシュをシビアに考えていることが重要という考えに至ります。でも逆に、そんな中で海外企業が寄付をしたり、みんな電力がとったアクションの裏には、必ず何らかの思惑があるはずです。
 そこにあるのは「純粋な美談」だけでなく、「長期的な視点」なんだと思います。
 先ほどから海外の話ばかりで恐縮なんですが、結局彼らが一番学んだのはリーマンショックでした。あの時にものすごく社会から批判されたし、「自分のことしか考えてないのか!」と責め立てられた。そういった経験から、彼らは何とか長期的な信用を得られるブランド力を手に入れるため、知恵を絞ったんです。
 そこから今の彼らを支える、困っている時にこそ、もっと困っている人たちに手を差し伸べることができたら、通常時に戻った時に必ずファンになってもらえるという、そういう強い考え方が生まれました。
 この状況では誰もがツラいと。でもたぶん、個人でやられている飲食店や宿泊業界の方々はもっと厳しい状況にいらっしゃるはずです。それでもし、より規模の大きい企業がまだ少しでも余裕があるのなら、ちょっとでも自分たちよりもさらに苦しんでいるスタークホルダー(関係者)の方を支援しようと思えるか。
 長い目で見てやれることと目の前のことだけを考えるのでは、そこで打つ手もジャッジの基準も変わってくるのかなと思います。
 ですから、今のような時だからこそ、長い目線で考えていただきたいなということをお伝えしているんです。

 

誰にとっても予想外だった新型ウイルス騒動の最中、電力会社がどう動き、今後業界はどうなっていくか。
みんでん若手ホープの発案を発端に、「ESG投資」スペシャリストを招いてのトーク企画、次回は木曜の公開です

 

(取材:平井有太)
2020.5.4 mon.
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