【最終回】AMITA|持続可能社会の実現をミッションとする企業
読みもの|4.8 Mon

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上のメイン写真は、アミタ(株)100%リサイクルサービスを示す図式。理念が理論だけでなく、行動、そして事業に実際なっていることに感服

  アミタグループ代表・熊野氏からは、「みんな電力さんの電気を買えば買うほど地域の山河は護られる。使うほどに自然が豊かになる。しかもその収益のいくらかで地域ファンドをつくって、新たな人間関係もでき、それはつまり、利用者が出資者に変わっていくということ」と、勇気づけられると同時に、改めて自分たちの足元を見直す言葉をいただいた前回。
 誰一人取り残さない社会をつくるには、「自立分散ネットワークが有効」と仰る氏が標榜する未来とみんな電力が呼応し合うのは自然の流れとして、課題は「これからの社会の可能性はどこにあるか」。
 私たちがつくっていけるすぐそこの未来について、一人一人の生活に直結する熊野氏のお話、少しでも多くの方々に届きますよう。
ー大きなビジョンの一助となれる役割をいただいて、プレッシャーを感じると共に、とてもありがたい気持ちです。

3.11の翌年に策定した「Our Mission㈼」1

1995年に策定した、持続可能社会の実現を宣言している「Our Mission」

熊野 日本人はもともと、安全を信じていなかったはずなんです。火山、台風があり、地震があって津波があると。「安全はないんだ」という前提の上で、社を建てて「鎮まりたまえ」と祈って鎮魂をして、精神的な安心を得てきました。森羅万象の自然界においては、根源的には安定も安全もないんです。天変地異は避けられません。水が不足すれば農作物も減り、難民が生まれます。
 日本はそういった覚悟の上で、「どう弱者同士が寄り添って安心を得るか?」という思想を持った国だったのだと思います。
 自らエネルギーと居場所をつくることが実現できれば、国に依存しなくてよくなります。それは民でできるから、行政管理はいりません。行政に依存する安全ではなく、自分たちで安心できる社会をつくっていく。それを実現するには、自立分散のネットワーク社会が必要になるわけです。
ーお話を伺っていると、京都議定書なりパリ協定なりSDGsなり、それらも全部後付けで、やっと「世の中が追いついてきた」ということなのかなと思います。

アミタミュージアム「風伝館」京都の町屋で社会課題を学生に伝える社員2

アミタミュージアム「風伝館」京都の町屋で社会課題を学生に伝える社員

熊野 その実感はありますね。むしろ理想が高過ぎて、笑われていたんです。会社は私が23の時の創業で、「お前はドン・キホーテか」と(笑)。
 20代の時に見た理想は、言うなれば「遠い山」でした。それでも仲間を集めて「どこにある?」と言われ、「おまえら、見えないのか?」と言いながら、理想を目指してここまで来ました。その山の麓にやっと12年前(上場した年)に辿り着いて、今は一生懸命登っているわけですが、ずっとそれは孤独な道だと思っていました。 それがここ2年くらい、横からよく似たことを考えている方々が「あ、そこから来たのか」、「あっちから登ってきたか」みたいな、そういう中にみんな電力さんも出てきたという風に捉えています。そのこと自体、しかもそれが増えてきて「これ、実は頂上は近いんじゃないか?」と感じています。それは、とても急速な変化です。「あんたもそんなこと考えていたのか」と。
 そうしてやってきて、こんな会社でも12年前に株式の公開ができました。小さなものを集めて大きな力をつくるという資本主義の基本的な仕組みは、私にとっては「是」なんです。ただ市民の手から離れてしまうと問題が生じてしまうとは思いますが。
 事業家や若者たちへの私からのメッセージは「自分の可能性を信じろ」、そして「仲間と社会の可能性も信じよう」ということです。その、「可能性を信じる」ということは「自分、仲間、社会でトライ&エラーを積み重ねていこうじゃないか」ということです。その試みこそが、希望であると思っています。

アミタミュージアム「風伝館」京都の町屋で社会課題を学生に伝える社員

アミタミュージアム「風伝館」京都の町屋で社会課題を学生に伝える社員

ー今、私たち一人一人が本当に無力なんだ、何でもない存在なんだという風に思わされている風潮が強いように感じます。
熊野 「常識を疑うインテリジェンス」がなくなったし、本来それを仕事にするはずのジャーナリズムは商業ベースになってしまいました。そこで事業家こそが、思想を商品に転写しながらやるべきだと思っています。
 2018年、イギリスで女性の「孤独担当大臣」が生まれました。このポストは、イギリスでは人々の「孤独」が原因で年間320億ポンド(約4.9兆円)の経済損失が出ているという調査結果を受け、それをなくすために新設されたものです。
 格差は経済問題で、孤独は社会問題です。共感できる仲間と缶ビールで楽しくやっているのと、孤独な金持ちの老人が一人で一流フレンチレストランで食べているというのは、経済から離れた世界なんです。
 今、社会は孤独をなくす、共有、共感の方向に向かって歩み始めたと思っています。理想の山を登っている今、同じ山で出会う会社のほとんどが、団塊ジュニアのジュニアである20代から30代前半の層を社員として多く抱えている印象があります。彼らは今までの社会を見てきて「もう従来の方向には道がない」という感性を持つ世代です。
 例えばフィリップ・コトラーというマーケティングを研究し続けている経営学者によると、製品中心のマーケティング(マーケティング1.0)から消費者中心のマーケティング(マーケティング2.0)を経て、今は「マーケティング3.0」の時代に突入しているという。「マーケティング3.0」とは「世界をよりよい場所にすること」に焦点を当てた「価値主導」が中心のマーケティングであると。
 しかも今はそれさえも終わりを迎え、顧客と共に「価値共創」を目指していく「マーケティング4.0」が唱えられています。ソーシャルビジネスには、この「価値共創」を通して、顧客に感動を与えられる可能性が高いと思います。
ー市民の声だけでなく、世界的な研究者も社会を分析した先で、同じようなことを言っている。

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熊野 そのもっとはしりとして、20年前にドラッガーが「NPO、NGO、非営利組織の時代」ということを言いました。もっと感覚のいい人が、先ほども触れましたが、「Small Is Beautiful」を書いた経済学者シューマッハーだと思います。彼はそのメカニズムを解く前に死んでしまいましたが、「仏教では、最大消費を最大幸福とは考えない」むしろ、「分けられることに幸せを持っている」ということをヒントに、仏教的経済学を唱えていました。それこそが「関係性」です。
 現代では同性愛婚などを国際的に増やしながら、結婚の基本的な価値も、所有から共有、共感になってきました。それが家族の基本単位になりつつあります。
 そうなると、血縁関係があっても共感できない親や兄弟よりも、共感できる友人の方がいいと。それがインターネットの発達と同時に、2000年代からシェアビジネスがグッと伸びていきます。2008年に創業したAirbnbは、たった8年でホテルチェーン世界最大手のヒルトンホテルを時価総額で超えていくわけです。共感が我々の行動動機に大きな影響を与えているということは、希望です。

1992年 兵庫県姫路市に設立したリサイクル施設(マザーファクトリー)

1992年、兵庫県姫路市に設立したリサイクル施設「姫路循環資源製造所」

ー今日は御社の、電力切り替えの背景にある深い想いを伺うことができて、大変興味深いです。
熊野 「人間の尊厳」というレベルで議論をすると、対立構造しか生まれないと思います。でもそれを、「生命の尊厳」という風に考えると、原発は生命にとってはいらない話になるんじゃないでしょうか(笑)。
 私たちは「生命の尊厳」という、近代を超える哲学を持った時代をつくれるでしょうか。
 「ガイア論」というものがあります。それは、自己調整できるのが生命の力と考えたら「地球も生命体じゃないか」ということで、そこに立ち戻った時、産業革命以降どれだけ人類が愚行を犯してきたか。だから、私たちは「愚行に対して無関心すぎるだろう」ということが言えるかと思います。
 今、社会の大きなテーマは「人間の尊厳」から「生命の尊厳」に移行しつつあると思います。
 ヨーロッパにしても、考えてみれば、ギリシャもローマもゲルマンもケルトも、もともとは多神教です。つまり、アミニズムなんです。そこに立ち返れば、人類は対立ではなく、共有できるはなずなんです。そしてそういうことが濃厚に残っているのが、日本です。
 ですから、先ほども言いましたが、今こそ日本は定常経済を成功させた経験を活かし、関係性を豊かさとする社会を目指す時です。その社会シフトは、政治や、専門化された学問の世界では難しい。となると、事業家連合しかできないと思うんです。その上で、さらに民間の力、市民の力を巻き込んでいくことに、これからの社会の可能性があると思います。

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スケールの大きな、しかし私たちの生活に直接結びつくヒントばかりの熊野氏インタビュー、いかがでしたでしょうか。
来週からは、新たに素敵なインタビューの3回シリーズがはじまります。どうぞ、お楽しみに。

 

(取材:平井有太)
2018.11.15 thu.
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