カフェスロー|市民の生活から湧き上がってくる動き
読みもの|7.9 Mon

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メイン写真は、カフェ入り口にて、みんな電力に切り替えてくださった方だけにお配りしている特別ステッカー。色合い的にも、カフェのロゴとの相性が◎

  場所はJR国分寺駅から徒歩5分。
 知る人には有名なオーガニックフード、持続可能なライフスタイルの先駆けとして、その実践と提案を続けてこられたカフェスロー。カフェスローは電力自由化を受け、いち早くみんな電力にエネルギーを切り替えてくださってもいます。
 ENECTでは先週、ロンドン発のイニシアティブ「RE100」が促す、世界の名だたる企業による使用電力の再生可能エネルギー化と、そのムーブメントの上陸に伴う日本企業の動きを報告しました。しかし究極的には、巨大グローバル企業であれ国家であれ、それをつくりあげているのは私たち市民一人一人、つまり「個人」です。

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  私たちは大きな組織を前にすると自らの無力を痛感し、「選ぶ」ことや「動く」こと、そして「伝える」ことを忘れがちになります。しかし7月7日(土)のカフェスローでは、市民の中から動き出した頼もしいムーブメントがありました。
 それが、カフェスロー発電所プロジェクト・キックオフイベント「オフグリッドフェス!」でした。代表の吉岡淳さんは、こう語ります。

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「そもそも、カフェがやりたくてこの場所をやってるわけではありません。2001年に別の場所で店を始め、今年は今の場所に移ってきてちょうど10年目の節目です。
 私たちが『スローな暮らし方』と呼ぶものは、みんなですすめるムーブメントしての生き方を考えるきっかけと、『繋がり直し』。そこで繋ぎ直すものとは、私たちが無作為にすすめてきてしまった大量生産、大量消費の中で断ち切られてしまった『自然と人間』、『人間と社会』、『人間と人間』といった関係性です。
 活動の起点にあるのは911ですが、エネルギーのことを明確に考えるようになったきっかけはやはり311でした。私たちは都会にいてもただの消費者でなく、生産者になれる可能性を探らないとなりません。今のままでは破壊ばかりで、では自然とどう共生していけるのか。だって自然が破壊されたら、私たちはこの地球上に住めなくなってしまいます。

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オフグリッド生活を実践している藤井智佳子さん。コツはプチオフとプチ自給で、スタートのタイミングはライフステージの変化がチャンス。メディア露出も多数

 ですから、それぞれにエネルギーの負荷をなるべく減らす生き方が重要ですし、ゆくゆくは発電もしたいと思っています。

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 とはいえ、社会における電力を実際に切り替えた数はまだまだ少ない。これは日本にとって初めての経験ですし、仕方ないとは思いますが、例えば私たちも店をオープンした最初の3〜5年は苦労しました。
 一つ言えるのは、こういうことは、最初から100%を狙わなくても例えば認知度が20%までいけば、その後はグワーッといくものです。そこまで努力して頑張れば、社会はその後自然と変わります」
  今回のイベントを取り仕切ってくださったカフェスローの山本さんは、7年間を青森県の六ヶ所村で過ごした後、ここにやってきた。

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「六ヶ所村には2010年から住みました。それは、いろいろと理屈で言うよりも、実際に自分で地方で暮らした方が社会的、環境的インパクトは大きいと考えたからです。
 六ヶ所村は使用済み核燃料の再処理場で知られています。でも僕は、あえて反対運動を広げないで、むしろ自分たちの活動の共感の輪を広げていくことを意識してやってきました。例えば有機農業、林業、ここのように美味しいコーヒーが飲める喫茶店などは、原発推進をすすめようとする側の中にも、興味を持つ方々がいるようなトピックです。

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同日早い時間に開催されていた、「ソーラー・ランタンWork Shop」でつくられた自家製ランタンたち。かわいいだけじゃなく、実用的なことが肝

 東京に戻ることになり、大都会で生活するということは、それだけで不可抗力で環境に負荷をかけてしまう。ですから、そのことを考えた時、自分の居場所はカフェスロー以外ありませんでした」

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上は特別ゲスト、開始時に素敵な演奏をしてくださったバンドLittle Tempo土生さん。下は、開会の挨拶中のみんな電力・大石代表。コンセントを挿した先の想像を

  地域電力会社の始動を視野に入れたキックオフイベントは、スティールパンの素敵な演奏からはじまりました。続いて、みんな電力・大石代表からの挨拶があり、さらに多様な”エネルギーの実践者”である皆さんの話が続く、和やかな雰囲気の中に熱い想いが宿るものでした。
 ゲストとして、吉岡代表と対談形式でお話された非電化工房・藤村靖之さんは

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「ライフスタイルを変えることで、社会システムを変えることができます。
 私たちは日々の生活の中で使用するエネルギーの量を減らしながら、使うものや関わるものが工業化、商業化、利権化しないくらいのところでやっていくくらいが、ちょうどいいと思っています。

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演奏を終えた土生さん、ソーラーランタンに興味津々。最後にはご自分でデコレーションしたものをお持ち帰りいただきました。私生活での活躍を期待します!

 そうやって使うエネルギーを減らしながら、逆に生きていく力を鍛え上げ、根本的な力を蓄えていく。そうでないと、結局は大きなものに依存する体質になってしまいます」
と、語られました。

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講演中の、藤野電力・鈴木俊太郎さん。「自分でやる」意識が大事だし、それも楽しくないと続かない。発電とは、家庭菜園のようでもあり、何より人と繋がること

  このような市民の動きは、目立たなくとも全国各地で起きています。標榜するのは一人一人が自ら考え、選び、他を尊重しながら動いてつくっていく社会。そして、ENECTがコピーとしてロゴの下に添える一文も「The Choice is Yours(選択肢はあなたに)」なのです。

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市民間から出てきたムーブメントを追ったENECT。来週月曜は予告より一週遅れで、先日の来日中30分いただいた
ザ・クライメート・グループ代表、RE100総括責任者のサム・キミンスさん独占インタビューをお届けします

 

(取材:平井有太)
2018.7.7 sat.
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