仕入の裏側〜福島南相馬のオーガニックコットンシャツ
福島に通うようになって2年半になります。
何をするというわけでもなく、何か自分にできないかな、自分にそんな資格あるんだろうか、でも何か関わっていたい、でもこれでいいんだろうか。そんな風に思いながら2年半が経ちました。
このお話は、再エネの仕入担当である僕が、福島の農家で太陽光発電もしている三浦さんと出会い、三浦さんたち「合同会社みさき未来」の育てるオーガニックコットンをシャツにしている日本橋の南さんと出会って、そのシャツをTADORiで販売させてもらうまでのお話です。
TADORiの仕入の裏側を辿る話ではありますが、いつかの僕と同じように、福島に関わりたいけど取っかかりがなかったり、福島に通っているけど何をしたらいいかわからなかったり、そんな人の助けになれば幸いです。
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始まりはひょんなことでした。僕は自分の住む神奈川県横浜市のカフェで、「福島の電気で音楽を鳴らす」という小さな展示をしました。
この時に初めて、三浦さんと連絡を取らせてもらいました。三浦さんとみんな電力でいろんな取り組みをしていることは、人づてに聞いていました。
三浦さんは快諾してくれて、上記の展示実施となりました。そこで展示をしながら、なんとなく淋しくなって「これ一人でやってると心折れるな」と思ったので、「横浜 福島」で検索して、同じような活動をしている人を探してみました。
それで、「ふくしま部」という若手組織が、首都圏から福島へ人を連れていくツアーを開催していることを知りました。その後、一緒に福島を訪問したり、プライベートでの活動につながっていきます。
ただそれまで僕は、福島の原発被災地区には行ったことがなく、行ったことがないことも忘れていました。これちょっと格好わるいなあ、と思ったので、まず一人で行くことにしました。
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その2月、三浦さんに会ったときのことをよくおぼえています。用もないのでアポも取らず、南相馬の道路脇から電話して、急に会いに行きました。三浦さんは自分のことや事業のことをイキイキと話してくれました。
それから、三浦さんの発電所の担当になった僕は、なにかにつけては行くようになり、2023年の春に田植えに行きました。そしたら、オーガニックコットンの種まきもありました。
オーガニックコットン、なんのこっちゃ分からなかったというか、知ってはいましたが、それが日本で栽培されているということを、脳がうまく受け入れてくれませんでした。
自分がいま着ている服も、誰かが畑でつくったものから出来ているということ。
それを日本でも栽培している人がいるということ。
それを脳があんまり受け入れてくれなくて、、よく言う「マグロを見たことない子供は、刺身が海を泳いでると思ってる」みたいな状態になりました。
よくわからないまま、とりあえずオーガニックコットンの種まきをしました。雨上がりの畑で、サンダルビチャビチャになったので、脱いで裸足になりました。泥んこ。
南さんにはじめて会ったのもこの時でした。
みさき未来のオーガニックコットンの畑は、福島県南相馬市小高区井田川にあります。南相馬といっても南隣の浪江町にほど近く、浪江の道の駅から車で10分ほどです。
この地域は海に近く、3.11で津波被害にあったとともに、原発20km圏内なのですぐには農業を復活させられなかったところです。みさき未来の三浦さんも、津波で家と畑を流されましたが、農業をすぐに再開することはできず、代わりに太陽光発電を始めました。
いつかその太陽光発電の収入で、農業を復活させるために。
そして、
2017年、オーガニックコットンの栽培を開始。
2023年には、13年振りの稲作を再開します。
その年の秋に収穫に伺ったとき、「13年振りの稲刈りは最高だぜ!」と叫ぶ三浦さんの姿が、いまでも脳裏に焼きついています。
オーガニックコットンの話でしたね。
2024年の春に、コットンの種まきイベントで、南さんに再びお会いすることになります。人見知りな僕ですが、2度目でなんとなく話せる気分になってきたので、「このみさき未来のオーガニックコットンを使った南さんのシャツを、販売させてもらえませんか?」とお願いしてみました。
その後に日本橋の南さんの店を訪れ、詳細をご相談していくことになります。
実は南さんのことはお願いするまであんまり知らなくて、ただ三浦さんが信頼してらっしゃる感じと、南さんの佇まい、南さんを慕ってコットン種まきに来ている人たちを見て、なんとなく、ここで決めてもいいかもな、と思ったのでした。
その後、南さんが日本でも屈指のシャツテイラーさんだということを知ります。(ゴメンナサイ・・)
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南さんはみさき未来のオーガニックコットンを、収穫量を問わず、畑面積あたりで買い取っています。農家さんの採算性を保証するためです。
布になったコットンを服にする縫製は、福島県双葉町のひなた工房さんへ依頼しています。
仕事でいろんな地域をめぐっていると、気付くことがあります。
人がその地域で暮らしていくには、産業が必要です。エネルギー施設、たとえば原発でも再エネ発電所でも、なくて済むならない方がいいです。
でも、何も産業がないと、人は生きていけないです。だから、なるべくまっとうな産業を、その地域で育んでいくことが大切なのだと思います。
コットンには、土の中の塩分を吸い上げる性質もあるそうです。
(了)
合同会社みさき未来 農園日誌
2017年06月22日 第一弾 井田川復活への道~綿花プロジェクト~
2017年08月29日 第六弾 井田川復活への道~太陽燦燦~
2017年09月20日 第八弾 井田川復活への道~コットンプロジェクト~
2019年07月19日 綿花を一緒に育てよう!~MS COTTON PROJECT~
2022年10月25日 コットン収穫祭2022開催決定!
農園日誌一覧
三浦広志
1959年福島県南相馬市小高区井田川生まれ。1982年大学卒業後、農業を始める。東日本大震災・東京電力福島第一原発事故後、東京や仮設住宅での避難生活を経て、相馬郡新地町に避難中。2014年合同会社みさき未来を設立。太陽光発電と農業を組み合わせた半農半エネで復興をめざしている。2023年より井田川で農地を作り直し営農を再開。福島大学大学院食農科学研究科でアグロエコロジーの研究を行っている。
南祐太
1983年生まれ。服飾専門学校を卒業後、地元のシャツ工場を経て、2007年に独立。自身のブランド「MINAMI SHIRTS/ミナミシャツ」「M.INAMI/エム ドット イーナミ」のオーナー兼職人。東京日本橋に直営店、千葉流山にアトリエを構える。2019年5月にみさき未来のコットン種まきイベントに参加。そのコットンで服を作っている。
M.INAMI CONCEPT
ひなた工房
フレックスジャパン株式会社が福島県双葉町に開設した、衣料品再生およびオーダーシャツ生産拠点。双葉町の未来への姿勢と再生の意志に共感し、町の活性化にも寄与することを目指し取り組んでいる。
ひなた工房について
ふくしま部
ダボス会議選定の若手組織Global Shapers Communityの、横浜ハブメンバーにより立ち上げられた派生団体。首都圏や海外の若者等を約100人、福島第一原発へ案内するツアーを毎年開催している。コンセプトは「福島のために、じゃない。」
ふくしま部HP
ShiftC
福島コットンの優しさを着る。松井愛莉が出合うM.INAMIのシャツ
TADORi みさき未来コットン使用商品ページ
オックスフォードシャツ/コットンキュプラシャツ/パーカー/デニムパンツ