【前編】小泉今日子、想いと素材を循環させる、大きな挑戦
読みもの|1.30 Thu

なんて素敵なステージ!

 我らがキョンキョンこと小泉今日子さんは、ただ”素敵”なだけでは終わらない。

 2024年に開催された「KYOKO KOIZUMI TOUR 2024 BALLAD CLASSICS」では、ご自身の隠れたバラード名曲たちに改めて息を吹き込むだけでなく、ステージにつかった木材や、社会で奮闘するひとり親家庭にまでの配慮が仕込まれ、小泉さんの突き抜けた優しさが表現されていました。

 環境から人の気持ちまでをも再生させた、近い未来には地球と社会を維持するためのスタンダードになって欲しい、語り継がれる取り組みの数々。

 全3回の初回です。ぜひ。

 大好評のうちに幕を閉じた、キョンキョンこと小泉今日子さんの「BALLAD CLASSICS」。UPDATERはそのサポートに入り、21公演の会場の電気や出演者、スタッフの宿泊や移動(機材車等も含む)から出るCO2をオフセットしています。

 「CO2のオフセット」とは国が運営する制度に基づき、CO2=二酸化炭素排出を吸収・回収する取り組みに投資して、実質的なCO2の量を埋め合わせる考え方。世界では2020年頃からコールドプレイやビリー・アイリッシュ、U2などが率先して行っている音楽興行のCO2を減らし、環境負荷をなるべく低減する取り組みです。

ツアー会場で掲示していたポスター

「できることからやってみよう」

 ライブを行うということは会場の照明、空調、舞台制作、出演者や観客の移動、宿泊、飲食、印刷物etc.あらゆるところからCO2が排出されます。そもそも私たち人間の営みにおいてCO2を出さないことは難しい。だから「せめて出した分だけ減らそう」というのが、この取り組みの根っこにある発想です。

 ただ”完璧な”脱炭素を考えてしまうと、会場でのソーラーパネル設置など、そこかしこで膨大な費用がかかってしまう。その点については小泉さんに「CO2のオフセット」ツアーを提案し、一緒に実現させたUPDATER・大石英司代表も「できることからやってみよう」と言っています。

 “オフセット”とは、今回のツアーを例に考えると、仮に朝9時から夜まで会場を使用したとします。まずその間の電力使用量から、排出されたCO2の量を算出できます。そこに対して、森林の拡大や保全に寄与するクレジットで投資すると「その分のCO2を吸収できる」。つまり「実質的にCO2排出はゼロになる」という考え方です。

 完璧を求めて取り組みのハードルを上げるよりも、はじめは小さくとも、最初の一歩を踏み出すことが大切。そうすることで、次にやるべき一手も見えてきます。それこそ誰にでもできる一手として、ご自宅の電気を再生可能エネルギーを扱う電力会社に切り替えることも、簡単かつ有効なアクションです。

 今回は算出の結果、なんと計21公演のツアーで約120トン*ものCO2を排出していることがわかりました。これは平均的な家庭1世帯ごとの年間排出量が約3トンとして、その40倍にもなります。「120トン÷21公演」の単純計算で、1公演あたりの排出量は5.7トン。1公演で1世帯ごとの年間排出量の2倍近くも排出していることとなります。

 移動に関しても、同様の計算が可能です。例えば1キロの移動でガソリン車は約180g、電車なら18g、自転車や徒歩であれば0gのCO2を排出します。生活の中の小さな一歩から意識が変わる。意識が変われば行動が変わり、やがて習慣が変わります。そんな小さな積み重ねが、未来の持続可能な社会につながっていけばという想いが、今回の取り組みに詰まっています。

 全21公演のステージで、小泉さんはご自身の言葉で、決してシンプルではない電力と環境負荷をかけないツアーの関係性について、語ってくれていました。

 昨今は日本でもORANGE RANGEを皮切りに、ダンスミュージックの祭典「TOKYO DANCE MUSIC WEEK」、スキマスイッチなどの試みが耳に入ってくるようになりました。

 さらにさらに、そこはさすが我らがキョンキョン。今回BALLAD CLASSICSでは世界でも類を見ない、円形ステージの資材をアップサイクルする試みも行われています。全国21公演を終えた円形ステージで使用された木材が、「添加物を一切含まない優しい猫砂」として生まれ変わるのです。

*2025年1月時点の算出結果

 

小泉今日子コラボレーション商品 “ツアー数量限定 猫砂パッケージ”の誕生

 UPDATERは過去5年、宮城県の栗駒山にて森林整備の活動を続けています。山の保全はただ木を植えただけでは終わらない。その成長を見守りながら、木々にとって健全な環境の整備を続けることが、質の高い国産の木材の確保へと繋がることを学んでいます。

 また、取り組みの頼もしいパートナーであり、国産の木、土、自然素材にこだわって注文住宅をつくる工務店・アトリエDEFのお言葉も忘れられません。

 「山がよくなれば、川がよくなる。川によって里もよくなり、水は川から海に流れていく」。

 DEFさんのつくる商品には食器の「循環皿」シリーズがあり、UPDATERは以前から一緒に「循環するお皿」を推してきました。そう、環境は循環してこそ機能するということです。

宮城県の栗駒山から採れた杉の木が円形ステージに

 BALLAD CLASSICSのステージには、この栗駒山から採れた杉の木が使われています。国産の木を私たちが使う理由は、よりよい自然環境を子どもたち、未来へと繋げていきたいから。加えて今でも毎年、安心安全な国産の木を使わず、例えば海外からきた薬漬け木材や使われているケミカルの接着剤が原因で、化学物質過敏症になる人が大勢います。

株式会社KURIMOKUのきこりさん達

 現地で私たちを導いてくれる、植林から伐採、搬出、原木輸送、製材、製品輸送までを一貫して手がける株式会社KURIMOKU・千葉さんの話を聞きました。

 「祖父、父と林業の家系で自分が3代目です。前職では分析の仕事をしていて、同じ部署で排水の分析をやっていました。水が含む重金属を見て、基準値内なら流していいという、それである時案の定、基準値内の水を使ったお米から重金属が出てしまった。もともと、そんな国の基準に疑問を持っていたんです。『0じゃないじゃん』て。

 これは建築でも同じです。例えばホルムアルデヒドの揮発量だって、根拠がない。たとえ少量でも病気になる人は大勢います。日本には木材も充分にあるのに、なぜ『リスクを負う必要がある?』って。そこは、薬を使わない方法もあることを伝えたい。そういった想いがあって、私は最初は工場の作業員だったんですが、その後営業に移って今に至ります」

ペレットの新たな使い道として猫砂に

 ツアーの円形ステージで使用されていた杉の木は今回、”キョンキョン特別仕様”数量限定の猫砂へと姿を変え、皆さまの元へと届けられます。猫砂はその売上から2%(約40円)が、皆で森を育てる「エコラ倶楽部」の森林保全活動に寄付されます。そうした循環する立て付けそのものが、この猫砂の特徴なのです。

 元々販売している猫砂にはすでに、全国各地のリピーターも付いてきました。ユーザーからは具体的に、「消臭力が本当に素晴らしい」との声が聞こえてきます。ペットに優しく、猫砂としての機能に優れ、環境を循環させられます。

 千葉さんは、「猫砂」というペレットの新たな使い道に気づいた後、それがまさかキョンキョンまで繋がるとはまったく予想できていなかったと笑います。

 「小さい頃から父と一緒に山に入って、後ろ姿をカッコイイと思って今の職に就きました。でも、当時の山から今の状態、荒れ方が全然違うんです。少なくとも山は、こんなに暗い場所ではなかった。こんな状況が続いて、将来日本に家を建てる材料ある?野生動物が生きる場所ある?本当に、心配になります。

 そのことに気づいてしまったからには、呑気に人任せではいられない。だからまず、声を上げる。責任感というより、焦りのようなものがあります。今回の小泉さんとの取り組みがその一助と言わず、もっともっと大きな力になってくれたらと願います」

ツアーファイナル山形公演でのフォトブース

 ツアー数量限定猫砂パッケージを事前ご予約いただいた方々からは、地球のためにできること、ライブを通じてこの活動を知った、などコメントが寄せられています。

小泉今日子コラボレーション商品 “ツアー数量限定猫砂パッケージ”  
※写真はサンプルです 実際にお届けする商品とは異なる場合がありますのでご了承ください

私たち一般ユーザーへのメッセージを千葉さんに聞いてみました。

 「本物を見極めて欲しいと思います。現代では、皆さんが木だと思っているものが木じゃないことが多々あります。それは家だけでなく、家具やまな板、お皿や箸1膳でもそう。生活の中に少しでも本物の木を取り入れて、それが山に還るまでを意識してもらえたらと思います。それでもしご興味あれば、ぜひ栗駒山まで来てくだされば、いくらでも一緒に森林整備をしましょう」

中編へつづく。

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小泉今日子コラボレーション商品 “ツアー限定猫砂パッケージ” の詳細はコチラ
ただいま事前予約受付中、2025年2月中旬頃まで受付予定です。

協力:ビクターエンタテインメント株式会社、株式会社ソーゴー東京、株式会社KURIMOKU
ステージ/LIVE撮影:田中聖太郎

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記事を作った人たち

ライター
平井有太
エネルギーのポータルサイト「ENECT」編集長。1975年東京生、School of Visual Arts卒。96〜01年NY在住、2012〜15年福島市在住。家事と生活の現場から見えるSDGs実践家。あらゆる生命を軸に社会を促す「BIOCRACY(ビオクラシー)」提唱。著書に『虚人と巨人』(辰巳出版)など