【第2回】LUSH|世界の、社会問題解決への萌芽
LUSH”らしさ”の詰まったグローバル・フラッグシップショップの一つ、オックスフォード・ストリート店。写真は2階の様子
私が理事を務める認定NPO法人「ふくしま30年プロジェクト」も参画する、全国34の測定室から成る「みんなのデータサイト」の一員として参加した、ロンドンでの「LUSH SUMMIT 2018」で見たものは、それこそ信じているものがなければ成立しないであろうものだった。しかもそれが堅苦しくなく、説教臭くもなく、当たり前にスタイリッシュに存在していた。
サブタイトルに書いた「世界の、社会問題解決への萌芽」は、決して言い過ぎではない。
もしLUSH SUMMITのようなことを、世界の大企業がこぞってやっていたとしたら、今解決の糸口が見えないとされている紛争や難民、差別、気候変動といった各地の社会問題について、容易に人々の意識が喚起され、社会のあり方は今とは違うものになっていただろう。
エネルギーや、福島の問題でも根幹にあると語られる「無関心」について、まずは丸田さんに前回最後のコメントについて伺うことから、始めた。
テムズ川とタワーブリッジをバックに、株式会社ラッシュジャパンから左がバイヤー・細野隆さん、右がブランドコミュニケーション・丸田千果さん
チャリティーのプログラムにしても、立ち上げてから昨年10周年を迎えました。それは、少しずつビジネスが成長して、それに伴ってできることが増えていって、じゃあ「今の自分たちには何ができるか?」と、いつも「ワン・ステップ・フォワード(その一歩先)」を探しているので、その意味で、昔から変わらないんです。
「LUSH SUMMIT 2018」会場の外観
イベント会場にはテーマごとに各種ブースがつくられ、スマートフォンを題材にした近未来的なデザインのブースもあった
それで全国のショップを見渡してみたら、ショッピングモールや駅ビルに入っているショップが多くて「今は自分たちだけでは意外とできないんだ」ということにも、気付いて。
とはいえ、今10数店舗の路面店があるので、「そこだったらできるかもしれない」ということで、いろいろな契約がある中で、実際にはまだ92店舗のうち2つしか「パワーシフト」できていません。今度3月末に新しいお店が関西でオープンしますが、そこはこの先再生可能エネルギーを推進する電力会社さんとの契約ができると聞いています。これでやっと3店舗目です。
原材料の一つである「カカオ」についてのブース
でも、実際にその直後に電力を切り替えたスタッフは、私が知ってる限り、社内では数名でした。理由は、「私の家は条件的に変えられませんでした」という人もいれば、そもそも当時、地域にいわゆる再エネ系の会社がなかったという人もいました。
私自身は「どれくらい簡単なのか」、もしくは「どれくらい難しいのか」と思って、家の契約を替えてみたら意外と簡単でした。ただ、この「LUSH SUMMIT」に参加して、日本のゲストスピーカーの方々のお話を聞いて、「帰国後電力会社を切り替える」と話しているショップマネージャーに、すでに数名会いました。
「コルク」についてのブース
原材料に限らず、気候変動とかいろいろな地球の環境課題があって、モノが普通に買えなくなっているということは、ここ10年くらいでもひしひしと感じます。一般的な商品の原材料というか、普通に流通しているモノにしたって、モノによっては採れなくなってきています。
とても怖いことだと思います。だからこそ、モノのつくり方とか使い方を考えていかないといけないんじゃないかなと思います。
福島や放射性物質による環境汚染といったテーマは、「ENVIRONMENT(環境)」ブースに組み込まれていた
それが2014年6月に入社して、その後南相馬の「菜の花プロジェクト」や、いわきの「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」から商品が発売されるというので、その企画担当者として「これは行かねば」と、往復を始めました。
そうしたら、すごくイメージも変わったし、自分が知らなかっただけだったと思いました。だから、「無関心」と「知らないだけ」はたぶん違うんです。
私は横浜生まれで、生活の中で土に触れることもなければ、地域付き合いとか、距離の近い地域の人との触れ合い方とか、あまりなかったので、そういうことも楽しくて仕事以外でも何度も福島に足を運ぶようになりました。
そういった会社の取り組みがあるから、同僚や社外の友人たちにも「一緒に福島行かない?」と誘って一緒に行き始めたら、彼ら、彼女らも「なんか、楽しい!」と思ってくれて、それこそ年間行事みたいな感じで福島に行くようになりました。
国道6号線とかを車で通る時は「やっぱりまだ線量高いところもあるね」というような話もしますが、結局は美味しいお酒とご飯、そこに面白い人たちがいると、人は結構行き来をするものなんだということもわかってきて。
もちろん復興・再生への長い道程もありつつ、いろいろな想いを持っている人がいることも理解して、「一括りに『福島』って言えないな」ということもわかりました。それに気づいたことは純粋に、原発事故前に福島第一原発の電気を使っていた一人の人間として「よかったな」って。
そこはやはり、友達を連れて行ったりもしながら、自分ができる中でできることをやり続けていれば、少しずつ広がっていくのかなと。
「オーガニックコットン」についてのブース
その時に、菜の花プロジェクトが「一つの発想として、いい方向に行くのではないか」ということで始まって、そのタイミングで商品企画とキャンペーン企画が立ち上がりました。
じゃあ、これは本当にわからないことですけれど、福島も「私が60になった頃に、福島が今のチェルノブイリと同じような感じになるのかな」と考えたりすると、それって全然いいことではないじゃないですか。そういうことが不思議と自分の中で繋がっていってしまって、それで今でも遊びに行っています。
福島県のいわき市で非常に高度な測定や、甲状腺の自主検査を行いクリニックまで開設した「たらちね」による映像
エクスクルーシヴなロンドン取材、次回で最終回。
日本にはなかなかないであろう会社「LUSH」がどう世界を変えるのか、さらに見えてきます