映画『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』について
読みもの|8.25 Fri

  デンマークに1967年生まれた現代アーティスト、オラファー・エリアソン(以下、オラファー)。
 そのオラファーに約2年半密着してつくられた映画『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』が、現在渋谷UPLINKで公開中、ヒットしている。彼のことは2009年の東京・原美術館、2010年の金沢21世紀美術館での個展を通じて知っている方も多いかもしれない。

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  映画は2008年、NYを舞台に、イースト・リヴァーに突如現れた4つの滝を追いかける。それらはオラファーの作品であり、約17億円の制作費、75億円以上の経済効果、55ヶ国・140万人とも言われる目撃者の数はアートシーンに衝撃を与えたという。またそれは、オラファーのことをさらに世界に知らしめることとなった、やはりそこにも「滝」を出現させた、2015年の仏・ヴェルサイユ宮殿での個展にもつながっていく。
  映画で観るオラファーの制作風景はとてもユニークだ。科学的アプローチに基づき、まるで理科実験のような試行錯誤を繰り返してスタッフと共に作品をブラッシュアップしていく様は、時に町工場のようであり、建設現場のようでもある。
 オラファーの名前が最初に世界にインパクトを与えたのは、2003年ロンドンはテート・モダンに人口の太陽と霧を出現させた『The Weather Project』の成功だろうか。つまり彼は、私たちのまわりに「環境」そのものをつくり出す。近い将来、彼がエネルギーを扱う作品、、それよりも、エネルギーを生み出す自然環境そのものを作品に取り入れても、何ら違和感は感じないだろう。
「アートは世界を変える一手段であり、人は世界を変えることができるんだ」

 彼の言葉をそのまま受け止めるとするなら、エネルギーの資源や発電方法がそのまま社会のかたちに反映される電力の世界とアートは、親和性が高いと言える。
 映画の中でオラファーは、アイスランドで「ムーラン」と呼ばれる永久氷河の竪穴の、危険な撮影に臨んでいた。

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 「本物か否かを決めるのは誰か?僕はこの問いへの答えは鑑賞者に委ねたい。
そのためには鑑賞者が作品に”参加”する必要がある」
「”現実は主観次第”。これはアートに限らずすべてに言える。現実は見る者の見方で決まるんだ」
  本サイト「ENECT(エネクト)」がロゴの下に掲げるコピーは、「The Choice is Yours」。つまり私たちに選択肢は委ねられ、人に任せるのでなく参加することが当たり前になっていくエネルギーの未来と、オラファーの問いかけはきれいに一致する。
 また、実はオラファーについては、昨年5月にENECTに登場くださったオンサンデーズ・草野象氏が、彼の作品でありプロジェクトでもある、首からさげるソーラーライト「リトル・サン」について語ってくださっている。
  現在オラファーは映画の他、11月5日まで開催中のヨコハマトリエンナーレ2017にも出展中。まずは映画を観て、「視覚と知覚」、「理論と哲学」、「主観と客観」すべてを揺さぶられてみて欲しい。

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(取材:平井有太)
2017.08.28 mon.
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