【最終回】サム・キミンス|RE100総括責任者(ザ・クライメート・グループ)
読みもの|7.22 Sun

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CDPと、RE100統括責任者であるキミンス氏が所属するザ・クライメート・グループの2組織によって運営されている

  みんな電力はブロックチェーン技術を駆使し、電力のトレーサビリティをクリアにすることを可能にした。しかしそれも本来、国が仕組みとして用意し、あらゆる電力会社が当たり前に自らのサービスの根拠とするシステムであるはずだ。
 現状、いつ「再エネ後進国」の烙印を押されても仕方のない政策を推し進める日本。しかしサム・キミンス氏はいたって明快かつ前向きに、日本が有する再エネに関するポテンシャルについて語ってくださった。
 明るい未来のため、私たちが乗り越えるべき壁は何なのか。
 貴重なインタビューの最終回、多くの示唆に富んだRE100総括責任者による箴言の数々、届くべきところに届き、未来を切り拓きますように。
ー日本はすでに中国やヨーロッパからずいぶん遅れてしまっているように感じます。国としてできることは何でしょうか?

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サム 日本にとって最も可能性溢れる領域は、洋上風力発電でしょう。洋上風力は日本の地理的な特性の上でも、ビジネス的にも、大きなポテンシャルを持っています。中国は確かに今再生可能エネルギー(以下、再エネ)で世界を牽引しています。でも、そのシステムは他国と大きく違うものです。政府が巨額の投資を関連事業にし続けているからです。
 日本に大きなチャンスがあるのは、これだけテクニカルな経済先進国においては、エネルギー・システムの転換は一気に可能だということです。しかもそれを、コマーシャルな文脈で成立させることも容易なはずです。中国にそういったセンスはないでしょう。世界には確かに再エネに先進的な国はありますが、アジアにおいて、例えば台湾や韓国といった国々より日本はまだまだ先にいます。
 リーダーとして、世界においてアジア地域を牽引する力が、日本にはあります。特に投資の世界においては、大きな需要があります。ベトナムやインドネシアへの石炭投資をやめて再エネに転換すれば、今後世界のリーダーになれる可能性だってあります。アジアからの世界的なエネルギーの大変革を、今からだって演出できるのです。
ー台湾は日本の原発事故を受け、いち早く原発をやめました。何か新しい試みはしていますか?
サム 台湾は日本のように、再エネ関連の証書の仕組みをつくったり、再エネそのものを増やすべく試行錯誤している状況にあります。それは、台湾経済の基盤が、世界的ブランドへの供給にあるからです。自分たちで大きなブランドを持っているというよりも、例えばアップル製品の部品をつくっていたり、グーグルやフィリップスをクライアントに持っているので、おのずと速やかにエネルギーは転換されるでしょう。日本のような固定価格買取制度も2024年か、またはもっと早くに導入されるでしょう。
ー来日中は日本の大きな銀行とも話されますか?
サム 今回は予定にありません。たくさんの組織、企業とのミーティングがセッティングされていますが、銀行とは次回以降に時間が持てればと願っています。
 日本はアジア圏でリーダーシップを示しつつありますが、つい最近韓国の大企業が100%の再エネ宣言をしました。サムソンが、彼らの経済基盤であるヨーロッパとアメリカ、中国での活動を元に、とても簡易なやり方で宣言をしたわけですが、かたやリコーはある意味で大変でも、実直なやり方を選びました。
 日本からRE100宣言をしている企業の皆さんは、自国のエネルギー政策をも変える気概を持って参加されています。それが、日本が今からでもリーダーシップをとれるポテンシャルを示しています。また、そうした深いコミットメントは、RE100として理想とするものでもあります。
ーみんな電力はブロックチェーンを利用して電気のトレーサビリティを実現し、それを必要とする企業が日本でも現実に現れ始めています。電力のトラッキング・サービスは日本が国としてやっていないことで、結果的に私たちが自前で用意する流れとなっているわけですが、その方向性は正しいものでしょうか?

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サム 日本における最大の障壁は、強固な官僚主義です。その官僚主義を少しでも回避できるものは、何でもやるべきだと思います。
 正直私はブロックチェーンについてそこまで詳しくありません。ただ、私の知識として知っている、様々な狭間に介在する仲介業者を省き、また、電力業界にありがちな複雑性を取り除くブロックチェーンの特性は、今こそ必要とされているものです。それでこそクリアで自由、そしてフェアな市場をつくり上げることができます。
 いくつもの仲介業者を経て、いくつもの規制をかいくぐり、いくつもの判子を必要とする今までとは違う、新しいシステムの構築にはテクノロジーの力が必須です。
 日本では、何かと言うと「ベースロード電源が必要だ」という言葉が聞こえてきますが、適切な需要と供給の管理さえできていれば、ベースロード電源は意味を成しません。極めて短時間な蓄電の必要性と自動化された仕組みだけで、すべては滞りなくまわります。
 この国の未来は、テクノロジーが切り拓きます。未だに残る官僚主義はそこでは意味をなさず、あなたたちのブロックチェーンに代表される新しい技術がそれを可能にするのです。
ー日本にも希望があるような気がしてきました(笑)。

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サム もちろん、あります。
 私たちが日本で実現したいことは、ここまで起きてきている様々な動きを一つのムーヴメントとすることです。政府が変わればそれですべて解決するわけではなく、たとえ小さな企業でも仲間になっていただき、コミュニティをつくっていきたいと思います。
 ヨーロッパで成功したやり方は、原地の風力と太陽光エネルギーの組合と私たちで協力するチームとして動き、いくつものイベントを企画しました。そこでは再エネを発電する側と、再エネを必要とする側が両方集まり、意見交換をし、私たちはより的確にマッチングが行われる基盤をつくることに努めました。
 そこではただ売買する関係ではなく、市場全体を健全化し、業界の方向性や姿勢、モメンタムを醸成したということです。
ーそういったムーヴメントは市民の間で行われたことなのか、あくまでも、企業の間で起きたお話でしょうか?
サム 私は、企業について話をしています。
 例えばグーグルは環境や再エネに関する大きなチームを持っています。そのポリシー、技術面、契約などに関して、すべてが再エネに繋がっていく内部組織です。
 RE100の140企業は、各々1〜50人の人員を稼働させ、グローバルにこの動きを展開させています。ポリシーはもちろん、それぞれに商品の製造工程まで踏み込みながら、かなりのリソースを割いていると言えます。
 何せよ、私たちはポジティブな動きを歓迎し、ネガティブな動きとは一線を画してきました。RE100が軌道に乗る契機となった一つは2010年か2011年頃、NGOのグリーンピースが各データに基づき、企業に対して再エネに切り替えるような一大キャンペーンを展開したことでした。その時にグーグルやフェイスブック、マイクロソフトなどなど、大きな企業が電力の切り替えに大変前向きに賛同してくれて、それがある意味で私たちの活動の基盤となりました。
 他には、ダイベストメントのムーヴメントからも大きな影響がありました。それはもちろん、石炭などからのダイベストメントです。
 私たちはそういった、アンチ石炭火力の流れからポジティブな、次世代エネルギーの流れをつくろうとしてきました。ですので、正直ここまで、それほど一般市民と連携はしてきませんでした。でもたぶん、今後はもっとしていくべきだと思います。
ーRE100のメンバーには、他の理由で社会的に批判されることが多く、どうしてもその免罪符として再エネの動きに参画しているように見える企業もあります。
サム 仰ってることはわかります。
 確かに、エネルギーの転換にはある企業の印象を変えるようなインパクトがあります。そして、私たちは誰にも、完璧であることを要求はしていません。ただ、もちろん社会に対して悪影響を持ちうる組織とは仕事をしないようにしています。
 企業の社会的責任の側面はもちろんあります。
 私たちは必ず、それぞれの企業にRE100宣言をした理由を聞くようにしています。それに対する返答の一番も常に、「企業の社会的責任」ということになっています。しかし今大切なのは、すでにそれよりもビジネスへの影響、効果が大きくなっているということなのです。

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すぐそこまで来ている未来について、世界でも最前線にいるかもしれないキミンス氏のお話、いかがだったでしょうか。
気候変動、環境はもとより、フェーズはすでに、再エネでないとビジネスは不可能な時代になっているということ。
来週月曜公開の新記事も、お楽しみに!

 

(取材:平井有太)
2018.6.18 mon.
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