【第2回】薬樹|新たな風を吹かせる薬局の「電力切り替え」
読みもの|10.7 Sat

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  薬樹が掲げる「健康さんじゅうまる」や「回収ステーション」、「健ナビ」についてなど、少しずつながら、同社がどのように一般的な薬局と違うのかはわかってきた。
 そして小森社長は10年以上前、私たちはどこでも当たり前の風景かと思っていた、病院の前に並ぶ薬局を見て疑問を抱いていたという。では、その疑問に対する答えは、どのようなものになったのか?
 新たな「健ナビ」という言葉とともに、「薬を減らす」薬局の全貌、そしてエネルギーにとっても大切な言葉である「持続可能性」を突き詰めてゆく薬樹記事の第2回(全3回)、是非。
小森 では、どういう薬局だったら「持続的に、一生涯必要とされるのか?」と考えていくと、まず一つのキーワードとして「薬ではなく、健康を売る」ことだろうと。これはつまり、健康に対しての伴奏者、、弊社では「健康ナビゲーター(以下、健ナビ)」と呼んでいますが、つまり主体はあくまでもまちの皆さまです。そして、それに対して私たちが専門的見地からきちんと伴奏させていただく立場であれば、それは個人だけでなく家族としても我々のことを見ていただけるのかなと。
 そしてそのために何をするのかと言うと、「薬を減らす」。薬局は病気になってから行くのではなく、予防の部分に関与していく場所であるべきであると。
 さらにその時、「そもそも健康って何?」と考え、それはまず病気になった時の薬と、それこそメタボ対策とも言えるかもしれませんが、食事と運動。ですから、「薬×食事×運動」という3つのキーワードを基に「薬局の在り方を再構築しよう」と言って、ちょうど10年前に動き出したんです。

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 そして9年前から「健ナビ薬局」をつくって、管理栄養士を常駐させました。それまでは人の病気に関与してきたのが薬局で、これからは「健康に関与していきましょう」、「人を健康にしていきましょう」と。
 するとだんだんと、現在のストレス社会では「心の健康」ということが浮かび上がってきたんです。核家族が増えている中、テーマが「人と人とのネットワーク」、「まちとのつながり」みたいなことに集約されていって、それは、健康の延長線上に地域社会とかコミュニティがあるということを意味します。となれば、いたって自然に「もしかすると、私たちも何らかのかたちでそこに貢献できるんじゃないか」と、そんな考えに至りました。
 それこそご高齢の方は集まっていると元気なんですが、世代間ギャップというものもあります。他には子育て世代の待機児童問題で、育児ノイローゼになっている方がいたり、そういった時にいつでも、ちょっとした相談に乗れる存在でありたい。
 そうしておのずと「まちの健康」、「地域社会」みたいなところに次のステップが行く。日本はまだまだ自然が豊かで、文化的な多様性を維持してきて、そういったものを次の世代に継承していく。それも我々がご先祖さまから学んだことであって、そういった「地域」というものを突き詰めれば、「地球全体の健康」ということに辿り着くわけです。
そのあたりをこんなにスラスラと喋れるようになるまで、これまでかなりの議論を重ねてきました(笑)。

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—長い道程を経て辿り着かれたお答えであると。
小森 現代において、社会保障制度の持続可能性というものも考えた時、今の薬局は薬を出せば出すほど儲かります。でも、みんながそれをやってしまうと制度そのものが保たない。それはみんなわかっていて、制度疲労なんだけれど、自分自身の収益を下げることはなかなかできない。でも、そこにこそあえて一歩踏み込んでいくことが、「気付いた人間の責任」だと考えています。
 失って初めてわかることが、「水と空気と健康」の大切さです。我々の世代では光化学スモッグ、現代では中国のPM2.0があります。すべては地球環境に行き着くということで、私たちのメッセージが全員に刺さることはなくとも、そういったコンセプトについて話した時、地域やお客さまの中の何人かには「面白いね」、「協力するよ」と言っていただける。それがエコステーションやワークショップ、映画上映やイベントの開催につながっていって共感が広がり、それはつまり、価格競争力とか商品の品揃え以外の部分で我々を選んでいただけるというわけです。
 それこそが、信頼関係に基づいて、一生お付き合いできる薬局として、一つのハードルをクリアすることになるのかな。そしてまさにそれが、「健康さんじゅうまるとまちの皆さまとの関係なんじゃないかな」と、考えております。

健康さんじゅうまる

—そうして、今仰られた理念とみんな電力の在り方が、合致された?
小森 非常に合うと思います。みん電さんがなさろうとされていることを最初に聞いた時点で「あれ、これは、、!」と、表面的な専門性が違うだけであって、やろうとしている方向、目指している意識はほぼほぼ合致していると感じました。
照井 「地域を意識されている」ということが近いのかなと。
 最近、『日本と再生』というドキュメンタリー映画を観たんです。そこでは、今の日本の電力網は、大手流通業者の一気に大量に送り込む物流に似ていると。それに対して、コンビニの物流が小電力に近くて、それこそみん電さんの目指されていることと重なるのかなと。それは小森もよく言っている、小回りが利いて、かゆいところに手が届き、何かあった時のリスクが少ないということだと思います。

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—薬局なのに「薬を減らしたい」とか、地域に「顔の見える関係を築きながら根ざしていこう」とか、社会の常の逆を行っているように感じます。
小森 最近、JRのターミナル駅や新幹線の駅前って全国どこに行っても同じですよね。飲食やカラオケのチェーン店があって、ビジネスホテルがあって。でも一方では、ちょっと裏の繁華街に行くと個人の郷土料理や小料理屋があって、というのが実態です。実は地元の方々もそういった意味では、再び地域のお祭りとか行事に原点回帰している。ある意味で世の中のトレンド、意識が変わってきているのかな?ということも感じます。
—ということは、世の流れに逆行しているつもりではない?
小森 むしろ「やっと時代がオレたちについてきた」くらいの感じを持っています(笑)。
 私は前職で製薬企業に勤めてまして、当初関西で営業職をやりました。そうすると、言葉も商習慣も違う中で、体験から「あ、医療は地域なんだな」ということに気付いたんです。
 インフラについてはナショナル(全国)チェーンが存在しえたとしても、顧客と直に接する部分については、「ものすごく地域色があった方がビジネスが上手くいく」業種なんだということを強く感じました。
 もう20年以上前の話ですが、当時恵方巻なんて関東で誰も知らなかったですよね?コンビニが売り出して知られるようになりましたが、未だに関東関西でおでんの味付けは違うし、カールは関東で売らなくなったりする(笑)。そういうことを考えていくと、実際の生活と本当の意味で密着している医療や食は、やっぱり「地域ごとに違う方がいいのかな」と思います。
 ナショナルチェーンの限界は「何でもあるけど、何にもない」ということ。我々はリージョナル(地域)チェーンでよくて、その中で何かいいことができるのであれば、それぞれの地域に応じて動く。その上でマルチ・リージョナルとしてシェアが全国に広がっていくのはありでも、ナショナルとして一つの価値観を押し付けるのは、それでは自己満足に過ぎないのではないか。
 であれば、きちんと地域の中で、ある程度「地域の方々との価値観を統一すべきである」ということで、自分が代表になってしばらくの間、神奈川と東京にしか店を出しませんでした。しばらくの間、自分が少なからずその価値観であったり、まちの雰囲気がわかる場所以外には出さないようこだわったんです。その後は徐々に、会社の人間から声が上がってくる場所に広げて、それでもまだ関東からは出ていません。

 

次回へ続く

 

(取材:平井有太)
2017.09.13 tue.

 

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