【特別寄稿】新入社員・宇野雄登「地域の魅力を発掘、若き養蜂家の挑戦」
読みもの|8.3 Mon

ミツバチと環境

 私たちが毎日食べている果物や野菜が美味しく実るには、受粉が必要不可欠です。農家さんの中には一つ一つの花を手作業で受粉させることもありますが、その役割を自然界で担っているのがミツバチなのです。
「顔の見える」関係を大切にするみんな電力では、そんな素敵なミツバチの世話を毎日している養蜂家であり、電気の生産者でもある方にお話を聞いてきました。
電気もハチミツも、どんな人がつくっているか知るだけで、今までとはまるで違って見えてくるのではないでしょうか。
 健康食品としても注目を集めるハチミツ。
古くから健康維持やエネルギー補給のために用いられ、現在はその汎用性の高さから、化粧品やサプリにも使われています。
ハチ好きな少女と養蜂の出会い
 舞台は千葉県大網白里市。太平洋に面したその土地は、田や海に囲まれた自然が豊かな場所です。


 そんな土地を愛し、その地元ならではの魅力の発掘をしようと立ち上がったのが、23歳の佐久間千晴さんです。
 佐久間さんは大網白里市で生まれ、その豊かな自然の中で育ち、昔からハチが大好きでした。
実家が農家だったこともあり実家の農地を活かしながら、ブランド化できるものをつくりたいと考えたときに、養蜂に辿り着きました。ハチミツは地域や季節によっても味が変わるので、その地域特有の味を出すことができます。地元でしかできない取り組みだからこそ、本物を作っているという自信や、やりがいに繋がります。

佐久間さんは企業からもらっていた内定を断ってまでも、ふるさとのブランドをつくり、世界へその魅力を発信するために養蜂家への道を進むことを決心しました。

光太陽農園取材記事_02

大きな夢へ彼女を突き動かすもの
 佐久間さんをそこまで突き動かしたものは何だったのでしょうか。それはインドネシアでのある出会いでした。
 3食チョコレートで過ごしてしまうくらいチョコレートが好きな佐久間さん。大好きなチョコレートの原料のカカオについて調べていた時、カカオの生産地の途上国では児童労働が蔓延していることを知り、心を痛めました。
大学で国際関係学を専攻し、児童労働について勉強をするうちに、農家の収益が不安定であること、そして先進国から搾取されていることに問題意識を持つようになりました。

カカオ農家1

 そこで、思い切ってインドネシアのカカオ農家を訪問するツアーに参加しました。ツアーを主催するDari K㈱さんは、カカオの調達からチョコレートの製造まで行う会社。Dari K㈱さんに現地のカカオ農家を案内されながら佐久間さんが学んだのが、「生産者を大切にする」ということでした。
 Dari K㈱さんは現地の農家への指導にも力を入れています。インドネシアのカカオ農家さんとともに高品質なカカオづくりを目指し、いいもの適正な価格で買うことで、生産者の所得向上を目指しています。

カカオ農家2

 何事にも生産者がいて、その人たちがいるから食べ物も食べられます。しかし、世界の現状では生産者が過酷な立場に置かれていました。そして、日本でもどんな生産者がいるのか顔が見えなくなっている中、「問題の本質は同じではないか」と考えるようになりました。そんな経験が彼女を突き動かしたのです。
人にも地球にもハチにも優しい環境を作っていきたい
 ハチミツにはあまり知られていない奥深さがあります。それは、地域や季節によって味や香り、そして色までも変わるのです。桜の蜜を集めたハチミツだと、桜がほんのりと香り、菜の花の蜜だと菜の花の香りというように、地域の花がハチミツに強く反映されます。
 そしてミツバチがいることで花粉が媒介され、より多くの花が咲き誇ります。ハチがいなくなったら、3分の1の食べ物がなくなるとも言われるほど、ミツバチは生態系にとって大切な存在です。
 しかし、元々多種多様な植物が存在していたところを単一作物の生産地に無理やり変えるようなプランテーションによって、ハチの住む環境がどんどんなくなっているのが現状です。
 「ハチと言葉は通じないけど、想いは通じる」話す佐久間さん。毎日ハチを近くで世話し、ハチたちの些細な変化にも気づく養蜂家だからこその言葉です。ハチは環境の変化に敏感なため、ハチを通して環境の変化に気づくこともあります。
自然環境を守ること決してハチだけのためではありません。ハチにとって住みやすい環境をつくることが、結果的に様々な動植物の多様性を生み、人間にとっても地球にとっても優しい環境に繋がるのです。

光太陽農園取材記事_04

養蜂の魅力と未来に繋がる地域
 移住したい人にとって、養蜂は新たな可能性だと話す佐久間さん。移住して農業を始めたいときにいきなり野菜を育てるのが難しくても、養蜂とソーラーシェアリング(※)で最低限の収入が入ってきます。そして、地方で増えてしまっている空き家をうまく活用することで、地方での生活の開始のハードルが下がります。新型コロナウイルスによって生活環境を見直す人も出てくる中、地方での生活に新たな選択肢を与えてくれます。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

(※)ソーラーシェアリング:農地を活用して、太陽光発電と農業を両立させる仕組み

 養蜂は生き物と向き合う職業であり、予期せぬトラブルなどたしかに大変なこともあります。その一方で、ミツバチはずっと見ているとどんどんかわいく見えてきて、とても癒されるのです。
ドイツには「ミツバチを見る」というセラピーがあるほど、健気に働くミツバチたちにはどこか人の気持ちを落ち着かせるパワーがあるようです。
 そして、自信を持ってつくったものに対して、直接お客さんからの声が聞けるのも養蜂の大きな魅力の一つです。佐久間さんは、「みんなに人それぞれの故郷がある。今後は大網白里市だけではなく、みんなの故郷の味のハチミツをつくっていきたい」と話します。
 ハチミツの用途は、食べるだけでなく、化粧品、サプリメント、マッサージオイルやアロマなど無限の可能性を秘めています。そんなハチミツの魅力を知ってもらいたいと、目を輝かせて熱く語る若い養蜂家の挑戦はまだ始まったばかりです。

光太陽農園取材記事_03

プロフィール写真

宇野雄登 みんな電力 事業本部 パワーイノベーション部

2020年4月新卒入社。
全国には様々な素敵な取り組みをしている発電事業者がいることを知り、その発信に力を入れる。特に、食と電気を同時に生産するソーラーシェアリングの仕組みに強く共感し、日々電力と農業について勉強中

今回特別寄稿くれた宇野さんが所属するパワーイノベーション部は、新たな電源を求めて全国各地へ出張の多い部署。
そこで出会った、そもそも地球環境に必須で、Iターン移住時の収入源としての可能性でもある養蜂。注目していきましょう

 

(取材・文:宇野雄登、構成:平井有太)
2020.07.29 wed.
SHARE: LINE Facebook
URL
URLをコピーしました