リアルな「顔の見える」関係のご報告
舞台は、東急世田谷線・松原駅から徒歩2分の赤堤保育園。去る2月19日(火)の朝、保育園の一部屋にゆり組、すみれ組、たんぽぽ組の子どもたち約70人が集められ、そこに全国ゆるキャラグランプリご当地部門で507キャラ中17位(!)に入った長野県の「アルクマ」が登場。子どもたちの元気過ぎる歓声が響き渡ったところから、その日ははじまった。
実現まで長い道のりをきた発端にはまず、再生可能エネルギーの普及に熱心な世田谷区・保坂展人区長の想いと尽力があった。さらには豊富な実績を誇る丸紅新電力、「顔の見えるでんき」を掲げるみんな電力が加わり、全国的にも先駆的な取り組みは実現した。
この日開催されたイベントは、再生可能エネルギーへの想いを募らせる消費者の存在があり、電気の生産者がわかる「顔の見えるでんき」が実現し、地域と地域がエネルギーを軸として繋がった国内初と言える基礎自治体と広域自治体における自治体間連携の、「その先」を具体化したものだったのだ。
さすがに聞きなれない電気の話に少しの間静かになった子どもたちだったが、「では、実際にみんなで発電してみましょう」という提案に熱気は再上昇。長野県から持ち込まれた、完成後この日が本番デビューというジオラマと電車を、自分たちの手で発電機を回して光らせ、走らせることで、部屋はまた大きな歓声に包まれた。これは子どもたちに、普段はスイッチ一つでつくのが当たり前の電気が、人力では相当な苦労が必要なものだということを伝えるのに、うってつけな仕掛けだった。
「なんで熊なのに緑なの?」、「(そんなこと誰も一言も言っていなかったのに)海が嫌いなのはなぜ?」、「リュックの中身は何?」。
青木所長に終了後、この日の取り組みの意義と手応えを聞くと「興味をアルクマに持っていかれてしまったような気もしますが」と苦笑いしながら、
「何よりも、子どもたちに喜んでもらえたことがありがたい。あの子たちの歓声が、目には見えないエネルギーの取り組みを続けていく励みになります。そして、ぜひ電気がつくられている場所に興味を持って、遊びに来ていただければと思います。ダムのあるあたりは全国有数の桜の名所としても知られています」
と、答えてくださった。
「自然エネルギーの電源を持つ自治体も単純に売るだけだと、その電力会社から収入は入るものの、それだけ。しかしそれに加えて『顔と顔が見える交流が生まれる』となると、『そっちの方がいい』となるんじゃないかと思います。
東京と地方の問題は、これから非常に深刻になります。そこに『どうやって繋がりをつくるか』という、これは電気だけじゃない、食やその他の問題も絡んできます。ただ電気の繋がりは、意外と自治体と自治体が当事者となりプラットホームを形成していけるので、『繋がりがつくりやすい』ということはありますね。
僕は311以降、防災の点からも『顔と顔が見える』ということを言ってきました。それに電力の自治体間連携も、進めるに従ってイメージがはっきりしてきて、具体的な制度も乗っかってきた。とにかく前例がないことをやっているので、そこはパイオニア精神がプラスに作用しているかなと思います」