【第2回】特別配信!|社会が求める『ESG思考』
第2回目も、まずは本人からご挨拶。
初回では、私が一番聞きたかった2つの質問、「コロナの影響があっても、環境意識や人権問題に対してブレない企業の考え方は?」、「みんな電力として今後どのような姿でありたいのか?」に答えていただきました。その回答から特に印象に残った「ニュー資本主義」、「長い付き合い」というキーワードを、より深掘りしていく流れが今回となります。
夫馬さんの言う「ニュー資本主義」への移行は、決して簡単ではありません。それには投資の継続や、ビジネスパートナーの理解も必要。それでも多くの企業がニュー資本主義へと向かっている背景には「持続可能な社会をつくらなければならない」という、強い使命感を持った人が増えてきているからだと私は思います。
今はまさに時代の転換期。今後海外、そして日本の企業はどのような選択をしていくのか注意深く見ていきましょう。(長島遼大)
今お金の心配をされている方は、それが融資でも出資でも、お金の出し手の方がいたとしてそれがどういう方か、そして自分がその出し手の方にどう映るか、すごく気にされているんじゃないかと思うんです。
その点について、現場の肌感覚としてどう感じていますか?
その時に株主の方々が背中を押してくださったのは、とても大きかったと感じています。皆さんも、夫馬さんの言う「長期的な目線」をお持ちで、その目線に対する存在感として評価いただけたかと思います。
この状況でどこも財政的には大変で、そこで勘ぐって「こうしたら株主が離れちゃう?」、「これじゃ資金調達できない?」ということではもはやない。この10年間の大きな変化を経て、昔はあり得なかった「労働者を守れ」、「配当は後でいい」ということを、投資家たちが言い出していることを知っていただきたいと思います。
そしてむしろ、皆さんのお客さんであったり、サプライヤーさんや地域の方々が何に困っているか、その中から「これならやれるな」ということは必ずあるはずです。新聞や本だけでなく、もっと現場の声に耳を傾けることが大切です。
今欧米からは「近視眼的な意思決定ではなく、長期視点での判断を」というメッセージが出ているのもそうですが、どうか日本の投資家さんにもオールドに戻らず、このままニューに向けて行って欲しいと思います。日本では判断に悩む局面かもしれませんが、それでも世界のトレンドは「長期目線で見る」ということにあります。
今後頼れるものは、再生可能エネルギーしかないと思います。現状はまだ小さいですが、これは将来的には自国のエネルギーとなる、つまりは油田が国内にできるのと同じです。長期的な再エネへの投資は、オールドな業界とのせめぎ合いを起こしつつ、そのフェーズは今まさに始まっているところだと思います。
そしてアフターコロナで、世界各国は経済対策を打たないとなりません。当然安直に行けば、落ちてしまった化石燃料関連の産業を「支援しましょう」という話にはなりやすい。でも一方、EUから出てきているのは、「それはやめましょう」と。このタイミングなので、「化石燃料から再エネにシフトする最高の機会だろう」という声が出てきています。
先日には小泉環境大臣も参加して、COPの前哨戦として、各国の環境大臣会合がドイツでありました。そこでもグリーンリカバリー、つまり「経済対策では気候変動対策を重視しよう」ということが確認されました。加えて国際エネルギー機関からも「グリーンリカバリーでいこう」というメッセージが出てきているので、コロナのタイミングで、気候変動対策を加速しようという声は2倍、3倍にもなっている状況です。
もちろんそれは全員ではありません。
日本なら経産省は「どうしようかな?」と考えてますし、それがトランプ政権なら、話はわかるけど、今はエクソンモービルもシェブロンも大変なので、「どう助けよう?」という話でおおわらわです。ただ、気候変動対策の話題が最もたくさん出ているのが投資家というのが現状であって、日本もそういう投資家の声をどう追い風にできるか、そういう節目なんだと思います。
(出所)東京都のデータを基にニューラル作成。電力販売量2000MWh以上の低圧取扱事業者に限定。再エネ率0%はグラフから除外
一方で再生可能エネルギーは燃料が不要で、アセットさえあれば発電し続けます。その意味で、実は一般的に不安定とされてきた再エネの安定性というものが再評価されていい。しかもコストも落ちてきているので、そこのシフトはもっと自然に起きてくるんじゃないかなと思います。
認識して欲しいのは、RE100などを牽引して「CO2を減らせ!」と言ってきた海外の投資家たちは、今もまったくその動きをやめようとしていないどころか、さらに大きく声をあげていることです。それを受けて、「やっぱりやめちゃダメなんだな」ということを、皆さん再確認してもらえたらと思います。
とはいえ日本の状況は、現場の肌感覚としてかなり変わってきたと思います。法人の問い合わせも、名のある大きな企業さんからのものが明らかに増えてきました。とはいえハードルもあるようで、「電気代が1円も上がらないのなら変えられます」とか、過去はそれなりに引きずりながら、でも興味はあると。
そうした中にはもう一歩踏み込んで、それこそ長期目線で、「再エネを今のうちに集めておきたい」ということで投資に踏み切る企業もあります。
また、日本で最初にRE100に入られたRICOHさんも弊社のお客さんになっていただいています。RICOHさんの大きな工場を、電気代が高くなるのにあえて一歩踏み込んで、高い再エネ比率に価値を見い出していただいた上で、切り替えてくれました。
海外でも、投資額が減ることはあるかもしれませんが、0になるようなことはありません。大企業は信用力も返済実績もあるので、環境投資をできる限り継続するために「資金繰りは借り入れで乗り切ろう」という動きが起きています。
ここで何千億という借り入れをしてでも環境投資を続けようという理由として、残念ながら恐らく夏から秋にかけて、コロナに加えて、再び自然災害が起きることが予想できてしまう。その観点から、自然対策に備えるためには投資を減らすと逆効果なので、ここで借り入れしても、コロナが去った後の対策効果でペイするだろうという考えがあるのは事実です。
夫馬さんの言うオールド資本主義の中にいると、何かと「4半期決算で」みたいな、短期的に利益を出し続けないといけないプレッシャーが常にあるわけです。その世界では、ある意味における「無駄なこと」にはなかなか手が回らなかった。それが、資金さえついてゆとりができれば、長期的な目線での取り組みができるようになります。
例えば丸井さんは、確か100億円からの「グリーンボンド」を発行しています。市場から資金を調達して、彼らが考える「正しいこと」をやりながら社会の中で存在感を示し、株価も上げられるという、そんな好循環が実現しているのは素晴らしいことと思います。
ベンチャーにとって資金調達は、成長過程においてすごく大切で、その部分を見て投資いただいているのはすごくありがたいことです。
新型ウイルスの登場は、有事の際、再エネが実は安定性に優れていること、リスクヘッジになることを明確にした。
リーマンショックを経験した海外投資家の声は日本に届くのか。大きな世界的変化について、最終回は来週月曜の公開です