【前編】SouGo代表・北條裕子|自然体の環境配慮
読みもの|2.12 Wed

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  創業は東京・中央区、そして江東区・門前仲町を経て、60年の節目を迎えた今は同区・塩浜に拠点を構える印刷会社「SouGo」
 グッドライフアワード環境大臣賞優秀賞、ヘルスツーリズム大賞激励賞、環境優良工場「経済産業省局長賞」受賞など錚々たる受賞歴を誇る同社は、電気もみんな電力を通じて、創業者・北條晴久氏出身の、長野県産エネルギーを使っている。
 江東区・深川エリアは江戸文化の中心地であり、葛飾北斎や松尾芭蕉はもとより、日本で初めての電気=エレキテルを発明した平賀源内も闊歩した場所。それでいて、運河に囲まれ情緒ある街並みは、昨年の、気候変動由来とされる記録的な大台風15号、19号で、リアルに浸水の危機を感じた海抜0m地帯でもある。
 現在同社を牽引する3代目・北條裕子さんは印刷業と並行して、国産カモミールにこだわったスキンケア商品「華密恋(KAMITSUREN)」と、独自の厳しいガイドラインを規約とするビオホテルジャパン認証を日本で初めて取得したホテル「八寿恵荘(やすえそう)」も運営する。
 そのバイタリティで、本年8月に深川エリアで大々的に開催される「深川アートパラ 2020  おしゃべりな芸術祭」発足のきっかけまでつくってしまった北條さん。自然体の背景にある想いを聞いた。

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北條 父は、何というか、いいご縁を持ってる人でした。すぐそこに東陽橋があるんですが、昔はそのたもとに工場があり、橋ができるタイミングで今の場所に移ってきました。

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—そもそも御社名、SouGoは漢字で「相互」だと思うのですが、とても素敵な名前だなと思います。
北條 昔は相互印刷工芸だったんですが、それを株式会社の「相互」にして、去年の4月から英文字の「SouGo」にしました。それは相互関係であるし、今の言葉で言ってみればサーキュラーエコノミーであるし、父はもともとそういう意識を持っていた人だったんですよね。私は2015年から、この会社を継いでいます。
—そこから、こういった化粧品などの展開も始められた?

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独自の製法で、国産カモミールの有効成分を閉じ込めた「カミツレエキス」が、すべての製品に潤沢に配合されている

北條 いえ、華密恋の入浴剤は約38年前から販売していますし、私ももう20年以上携わってきています。以前は別会社だったんですが、もう「一緒に発信していった方がいいだろう」ということで、去年合併させました。他にホテル「八寿恵荘」をやって、そこでストレスフリーな生活をする乳がん体験者やアトピーの方々のツアーをもう14、5年やっています。
—印刷業務にとどまらない取り組みは、お父さまから受け継いだもの?
北條 父は本当に自然体で、自然や環境のことを気にして仕事に取り込む人で、私自身もそれを見て育ちました。40年ほど前に父が癌を患った際、漢方薬学博士の方にお世話になり、自身でも漢方やハーブについて学ぶ中で、カモミールとの出会いがあったんです。
 父は戦争体験者ですし、そういう経験とマインドがあったので、「環境を害することはしちゃいけない」という意識でいた背中はずっと見てきました。
 そこで今度は私が、乳がんやアトピーの人たち、それは20代の乳がんが増えている状況とか子どもたちの酷いアトピーを知って、「なんでこうなるの?」って。それはやっぱり食べる物、ストレス、あとは建築で使われる合成の用材でアトピーになっちゃった人にも出会っていきました。

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北アルプスの山々に囲まれた「カミツレの里」では、5月中旬〜6月上旬、一面がカモミールの優しい香りに包まれる

—建築用の合成用材については、やはりみんな電力のお客さまで建築業者の「アトリエデフ」さんも仰っていました。
北條 私は華密恋にずっと携わっていたので、そこには社員としてそういうマインドの方々が入ってきてくれていました。でも、とはいえ市場としてはオーガニック化粧品は全体の1、2%です。だから基本的には、ずっと「オーガニック・スキンケアをもっと広めなくちゃ」と思ってきた立場です。
 でも、この印刷の方でも代表になってからは、社員もその意識が低くて苦労しました。今年5年目でやっと社員が理解して、動き出したような感触があります。
—今、良くないことですが気候変動を体感できるような状況になってきて、世の流れに背中を押されている感覚はありましたか?

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北條 それはすごく感じます。でも、私が最初に華密恋の営業をやっている頃は、そんな栽培からこだわって無農薬なんて「よくやってるね〜」とか、しかも、そのエキスも合成成分を一切入れないでつくるなんて「よくできてるね〜」って。
 父と一緒に当たり前だと思ってやっていたことが、20数年前には異端児のように言われることの方が多くて、「ちょっと違うんだよな」と思ってました。だから、やっと最近になって社会が理解してくれるようになってきた気がします。だって最初の頃、実際に一本売るのに20分くらいかかりました。お客さまに、入浴剤についてそれだけ説明しないと、買ってくれませんでした。

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—まさに私たちが最近、BEAMS JAPANで史上初めて電気の店頭販売をやっていた時と同じ状況です(笑)。興味を少しでも持ってくださった方に、20分間電気についてとにかく話したおすという。
北條 (笑)。
 それが今は、普通に話すとすぐに通じる感触があります。それも、若い人が特にそうなってきているので、それはいいことに感じます。
 ウチの社員の中でも、若い人は感度がよくてエコバッグなんかも男子も持っちゃったりするんですが、年配の人はなかなか難しい(笑)。やっぱりバブル経済全盛の時期を知っちゃってるというのと、それも経験した上でここまで健康でこれている人は、成功体験があるわけです。
 そういう流れでの中で、ウチではやっと、年配の社員の方々も「気にしないといけないんだよね」という雰囲気にはなり出しています。
—お父さまからの影響の他、江東区という土地柄みたいなものの効果はありますか?

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北條 約50年間この地に拠点を構える中、父は産業連盟とかいろいろなところに顔を出しては出会いを繰り返して、木場公園で毎年秋にやってる江東区民まつりでのご縁もとても多くありました。
 歴代の江東区長ともお付き合いがあって、そういう中で昔からのウチの会社の姿勢を理解くださって、会う人会う人に繋がっているということはあります。地域の国会議員さんとも父同士で繋がっていたり、ウチの場合はそういう、「場所」というよりも「人と人とのご縁」から広がってきたという気がします。
—それが下町らしさ、深川エリアの特性みたいなことと言える気がします。
北條 今でも産業連盟の方々が、父の代から「SouGoの北條さん」ということでかわいがってくれたりということがあります。
 皆さんそういうことで、「義理堅さ」という言葉で表現できるのかわからないけれど、でも、そういう風にしながら私たちは地域と繋がってきました。もちろん会社もプライベートもいろいろある中で、それでもこの土地に残って頑張っているということで、皆さんがフォローくださるお気持ちをとてもありがたく感じています。
—ここまでSouGoの歴史を聞いてみて、再生可能エネルギーへの切り替えはいたって普通の流れだったような気がします。

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長野県北安曇郡池田町にある「八寿恵荘」。日本初のビオホテルとしてオーガニックな食事や石鹸、シャンプー類他、建材や内装材まで、可能な限り自然素材を使用

北條 八寿恵荘は、2015年に内装のリノベーションをしました。そもそもは3年構想で八寿恵荘を建築してくださった、環境配慮型の建築デザイナーの方との出会いが発端で、それまでも他にアレルギーに悩む方とか、いろいろな人からの学びで得たすべてを込めました。
 同じようにエネルギーも、見えないけれど、ちゃんとトレースがとれているものって、意味があるし、感じるものが違うような気がしるんです。そこもうまく言語化はできていませんが、私はそういう風に感じています。
 ですから、それは自分がつくる化粧品もそうありたいと思ってやっているし、それが何であれ生産者を明確にすることを取り入れられるモノであれば、その部分はやっていきたいと常々思っています。
社長顔写真

北條 裕子(株式会社SouGo 代表取締役社長)

1959年、父・北條晴久が相互印刷工芸株式会社を設立、1964年、江東区牡丹に自社ビルを新築、1993年、江東区塩浜に自社ビルを移転、2019年、株式会社SouGoとして61期を迎えた。
印刷事業とライフスタイル事業を展開。印刷事業では持続可能な資材やインキなどを使用し、環境に配慮した印刷物の提案を実施。
ライフスタイル事業では、ご家族全員で安心してお使いいただける、カモミールにこだわったスキンケアシリーズ「華密恋」を製造・販売。
身体的・精神的にストレスにさらされていることの多い時代。心と身体をリセットする場、製品を提供することにより、「人のお役にたちたい」という想いを持ち、国内生産者と連携してカモミールの有機栽培を広げ、幅広い活動に注力。
また、10年前から乳がん患者支援団体の活動を支援し、所有するお宿「八寿恵荘」は、ピンクリボンのお宿ネットワークに登録。さらに、日本初のBIO HOTEL®認証を取得した宿。
カミツレエキス製造工場と華密恋の湯をお楽しみいただける八寿恵荘、有機JAS認定の自社農園のあるエリアを「カミツレの里」とし、長野県北安曇郡池田町の町おこしも行っている。

SouGoさんのような企業が実現する環境負荷の軽減。深川発の新しくも普遍的な価値観、来週水曜公開の後編もお楽しみに

 

(取材:平井有太)
2020.02.06 thu.
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