【第1回】ソーラーシェアリング|農業とエネルギーの融合
近づくとその大きさがよくわかる。日本最大級の地域主導型ソーラーシェアリング、匝瑳メガ・ソーラーシェアリング 第1発電所
知らなければ読むことも難しいその土地で、日本の農業とエネルギーを一気に、躍動する未来へ導くポテンシャルを内包した取り組みが始まっている。
それが、「ソーラーシェアリング」。
そもそも農業と電力は、ともに自然の恵みを根源として、私たちの家庭に届けられている。そこに共通項があるのなら、作物と電力の共存を促し、同じ場所でつくり出そうという実践が「ソーラーシェアリング」と呼べるかもしれない。そしてそれは同時に、耕作放棄地や農家の後継者不足、天然資源が乏しいとされる日本のエネルギー事情を救う、起死回生の施策なのかもしれないのだ。
取り組みを率いるのは、キャッチフレーズに「自然をエネルギーに エネルギーを未来に」を掲げる千葉エコ・エネルギー株式会社。千葉大学の研究員の立場から現場に飛び込み、日本の未来を明るく照らすべく邁進する、馬上丈司代表に話を聞いた。
匝瑳飯塚 Sola Share 1号機地鎮祭。ここから、飯塚開畑地区のソーラーシェアリング・プロジェクトは大きく動き出した。写真中央が馬上氏
取り組みの背景として、今の日本の農業が衰退著しく、全国約190万人の農業従事者の平均年齢は67歳、これに対して若手の新規就農者は毎年2万人にとどまっています。農林水産省の調査では、新規就農が進まない一番の理由として「所得の少なさ」が挙げられています。ソーラーシェアリングでは、太陽光発電事業によって安定した収入を農業者の方が得ることができ、それによって農業経営の安定化を図ることが出来ます。
また、農地を潰してしまう太陽光発電が増えると、自然エネルギーを作るために食料生産基盤を損なうという、わが国にとっての矛盾が生じてしまいます。
こういった問題を解消するために、私たちはソーラーシェアリングに取り組んでいます。
千葉県匝瑳(そうさ)市では、地元農業者が主体となったメガ・ソーラーシェアリング(1,198kWp)にも出資しています。
匝瑳飯塚 Sola Share 1号機と、その下で繁茂するコイトザイライ大豆。大豆は手がかからないので、広い土地で少人数での栽培に向いている
そんな中で、地元の農業者の方々が中心となってソーラーシェアリングによる農業再生に取り組まれており、ご縁があって私たちもプロジェクトに協力させていただくことになったのが始まりです。
視察時の様子。手前の青いシャツが、馬上氏。農地として再生した、メガソーラーシェアリング下の畑
成長中の大豆と、均一に落ちる太陽光パネルの影。厳密には今も研究中ながら、ソーラーシェアリングのパネルは農作物の育成に影響を与えないとされる
様々な理由で耕作放棄地が増えていますが、発電事業による収益を活用することで農地の保全が図られたり、新しい農業に取り組んだりすることができています。
飯塚地区のソーラーシェアリング・プロジェクトでは、1年間で約4.5haの耕作放棄地を畑に戻して農業を再開することができました。これは、従来とられてきた様々な耕作放棄地解消のための制度・施策では成し得なかった、ソーラーシェアリングだからこそ得られた成果だと思います。このような成果を目の当たりにすると、ソーラーシェリングが持つ農業振興への大きな可能性が感じられます。
ソーラーシェアリング・プロジェクトが進む、匝瑳市飯塚開畑地区の全景。山を削って切り拓かれた農地は農業者を必要としている
次回へ続く(全3回)