【第2回】ソーラーシェアリング|農業とエネルギーの融合
読みもの|10.29 Sun

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長島彬氏のコンセプトに基づいて藤棚式に設置された太陽光パネルの間からは、美しい青空が見通せた

  ソーラシェアリングは、国内のみならず、世界でも前例のなかった発電方法だ。そしてだからこそ、抱えるポテンシャルの大きさとは裏腹に、その可能性を浸透させ切れてないからこその苦労が付きまとってきた。
 しかし、日本のエネルギーと食糧問題を同時に解決するかもしれない先駆的取り組みが、千葉の地からすでにはじまっている現実を目の当たりにすると、ただ取材の立場であるはずの自分も、否応なくワクワクしてくるのだ。
 「まずは象徴的な前例をつくるところから」
 そう語る、創電と農業、そして広報を同時にすすめる千葉エコ・エネルギー馬上代表。伺ったお話の第2弾(全3回)を、お届します。

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ソーラーシェアリングが設置されてから2年目の大豆畑。飯塚開畑地区の耕作放棄地は、着実に減りつつある

ー地域住民、農家さんの反応はいかがですか?
馬上 当初は、「畑にあんなものを立てるなんて」、「作物が育たなくなるのでは」といった懸念の声が多かったと聞いています。そこから少しずつ設備を立てて、農業の実績も積み重ねていく中で、地域の理解は進んできているように感じます。
 特に飯塚地区では、メガ・ソーラーシェアリングの完成で、更に地元の方には前向きに捉えていただけるようになったと聞いています。

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1300年続く農家、齊藤超さん。千葉県匝瑳市飯塚でソーラシェアリング農耕を担う合同会社「Three little birds」を、地元農家4名と移住者1名の有志で立ち上げた

ー農家さんが懸念されるように、パネル下の野菜に影響はないのですか?
馬上 農作物への影響については、学術的な研究はまだまだ始まったばかりです。今は、実際にソーラーシェアリングに取り組まれている農業者の方々の実感として、適切な遮光率が確保されていれば多くの作物で収穫に大きな影響がないことがわかっています。
 ただ、地域性や同じ作物でも品種によって生育に違いが出るとも考えられますし、これからソーラーシェアリング設備の下での農業を安定して行っていくために、千葉エコとしても作物学を専門とする三重大学の教授との共同研究を進めています。

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千葉県産在来品種の大豆を栽培から手がける、自宅庭の蔵で手づくりの、無添加味噌。ソーラシェアリングの下でも同在来大豆を栽培している。味噌は、美味い

ーソーラーシェアリングには、馬上さんがまだ大学の研究員の頃から可能性を見出していたのですか?
馬上 私がソーラーシェアリングに出会ったのは、千葉エコ・エネルギーを設立してからです。大学に研究者としての籍を置いていた頃にはまったく耳にすることがなく、起業して自然エネルギー事業に乗り出したからこその出会いでした。
ー出会ってすぐ可能性を見出されたのでしょうか?そもそも、ソーラーシェアリングはどのように始まったものなのですか。
馬上 当初は、まだ実際に設置されている設備が小さいこともあり、また導入コストも高かったのでどこまで農家を支える取り組みになるかどうか、判断はできませんでした。可能性を見出せたのは、匝瑳市の取り組みに関わるようになってからです。
 ソーラーシェアリングは、発案者である長島彬さんが2003年に提唱したもので、そこを起点にするともう14年以上が経っています。長島さんが2010年に千葉県市原市へ実証試験場を設けられ、そこから本格的に広まっていきました。
ーすでに世界に前例はあった?
馬上 長島さんが発案した当初は、前例はなかったと思います。その後、ヨーロッパではFITが広まる中でガラスハウスの屋根に設置したり、長島さんが提唱する藤棚式とは異なりますが、農地に太陽光パネルを設置したりする取り組みはあったようです。

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ー国内全土に広める上での課題は?
馬上 日本国内には450万haの農地があり、その中でソーラーシェアリングが導入されているのは0.01%もありません。水田でも畑でも果樹園でもできるモデルが整いつつあり、今後は千葉や秋田だけでなく、全国に広げていきたいと考えています。
 課題としては、各地の農業委員会がまだソーラーシェアリングの許認可手続きを知らないことや、農業者の方々でもまだまだ認知度が低いため、こういった取り組みがあることをまずは知ってもらう必要があります。
ー取り組みを広めるため、今まで何が有効でしたか?また、これからどんなことに挑戦していきたいと考えていますか?
馬上 最も有効だったのは、匝瑳市のメガ・ソーラーシェアリングに城南信用金庫からプロジェクト・ファイナンス型の融資を受けられたことです。今もそうですが、ソーラーシェアリングを広める中で最大の課題は、金融機関からの融資が受け難いことにあります。
 匝瑳市での取り組みの前にも、千葉県内でソーラーシェアリングに取り組もうとしたことがありますが、県内の地銀・信金のほとんどに融資を断られました。現在、飯塚開畑地区には11ヵ所のソーラーシェアリングが建設されていますが、そのほとんどが城南信用金庫による融資のおかげです。これが出来たことで、一気にソーラーシェアリングを広めることが可能になりました。
 これからの挑戦ですが、ソーラーシェアリング設備の電気を地元で消費したり、農作物を買っていただいた人に届けたりといった取り組みを進めていきたいと考えています。まずは、千葉県内にあるシンボリックな場所に電気を供給して、ソーラーシェアリング自体の認知度を上げていきたいですね。

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本年4月3日、メガ・ソーラーシェアリング落成式。この式についての詳細は次回として、前列向かって一番左の椅子に座るのが、城南信用金庫・吉原理事長(当時)

 

最終回へ続く

 

(取材:平井有太)
2017.10.01 sun.

 

▼千葉エコ・エネルギー株式会社 「顔の見える電力」詳細ページはこちら
https://power.enect.jp/#/powerplantdetail?introduceid=a0b5F00000c3bmTQAQ

 

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