【速報!!】伝説のアーティスト、気候危機について「毎日考えてるよ」
読みもの|6.21 Wed

 ケニー・シャーフ「I’m Baaack」展が、草月会館・草月ホール(赤坂)とNANZUKA UNDERGROUND(神宮前)にて開催中。1985年、草月会館主催の「アート・イン・アクション」展でシャーフ氏がペイントと改造を施したキャデラック「夢の車」も38年ぶりの公開で、アンディ・ウォーホル、キース・ヘリング、ジャン=ミッシェル・バスキアと同時期のNYを駆け抜けた生きる伝説による作品群を体感できる、貴重な機会だ。

 去る6/10(土)、シャーフ氏と「アート・イン・アクション」展を企画した勅使河原宏氏の長女・季里氏によるトークショーがあった。氏は、当時マンハッタンのイーストヴィレッジを舞台に、自らにも大きな影響を与えた”ストリート”の重要性を説き、とはいえ自分はグラフィティアーティストではないと語った。 

 実際ストリートに出た時のこと、バスキアは隣で”SAMO”という、グラフィティライターなら必ず一つは持っている”タグ”を描いていた。その脇で、自分にそれらしきものがあるとすれば、いっときGE(General Electric)ロゴを拝借したことがあり、それは後にウォーホルも作品に取り入れたことがあったという。氏は、そもそもなぜGEロゴだったかという理由として、一筆書きで描ける流れるようなフォルムに言及しながらも、「石油の大量消費についてよく考えていたから」ということを挙げていた。

 筆者はこの日仕事ではなく、7〜80年代のNYのアートシーンに惹かれる1ファンとして(また、同じNYの美大SVA卒の後輩として)参加していたつもりだった。しかし、予想外に出てきたその言葉が引っかかった。GEが地球に与えてきた影響を気にされていた氏は、現代の気候危機について、どう思っているのだろう。

 トーク終了後、シャーフ氏と一言二言交わす機会があり、「気候危機についてどう思う?」と聞くことができた。そして、その時に出てきた言葉がタイトルの「毎日考えているよ」だった。氏は続けて、「とても怖いことだと思う。人間が、この地球に住めなくなってしまうかもしれないんだ」と、私の目をまっすぐ見て仰った。

 トーク中、氏は「80年代のNYがどれだけ楽しかったか教えてって、よく言われる。でも実際には、そんなに楽しい時代じゃなかった。だっていつ核戦争が起きるのかっていう危機感と、友だち20人で撮った写真を見直せば、そのうち15人が死んじゃってるなんてことが実際にある。あの頃、エイズが猛威をふるっていたんだ」と当時を振り返っていた。

 そしてだからこそ、一定の教育を受けてなければそれがアート作品だということすらわからないコンセプチャルやミニマリズムアートでなく、ストリートにJOYとLOVE、LIGHT(喜びと愛、光)をもたらす作品をつくりたかった。「何より一番に、自分自身にそれらが必要だったんだ」という氏の言葉に、突き抜けて明るい作品群に込められた真摯な想いを見た。

 氏に、「あなたの世代におけるエイズが、私たちの世代にとっての気候危機かもしれないですね」と伝えると首を軽く振って「いや、これは一つの世代でなく、私たち全員にとっての問題だ。何とかしなければいけないんだ」とのお答え。

 終わってみれば、氏が作品に込めていると語っていた「見てくれる人々の心をUPLIFT(高揚)させる」機能で、十分に気持ちを明るくでき、さらには勇気までいただけた、そんなトークイベントだった。

 気候危機を筆頭に、真面目に考えるほどあらゆる社会問題溢れる現代の日本、そして世界。ケニー・シャーフ「I’m Baaack」展は草月会館では6/30(金)、NANZUKA UNDERGROUNDでは7/9(日)まで開催。

 たとえいっときだとしても、笑顔を取り戻し、心をUPLIFTさせてくれるケニー・シャーフ展へ、ぜひお越しください。

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記事を作った人たち

タドリスト
平井有太
エネルギーのポータルサイト「ENECT」編集長。1975年東京生、School of Visual Arts卒。96〜01年NY在住、2012〜15年福島市在住。家事と生活の現場から見えるSDGs実践家。あらゆる生命を軸に社会を促す「BIOCRACY(ビオクラシー)」提唱。著書に『虚人と巨人』(辰巳出版)など