【後編】CDPのCEOが語る、「RE100」と日本
トップ写真、「SBT」とは「Science Based Targets=科学に基づく目標設定」。
できることを積み上げるのではなく、どれだけ減らさなければいけないか、からスタートして、応分の目標を設定すること
氏の言葉を借りれば、
「生活において私たちが何かを買う時、それは実は『投票』をしています。生活における購買活動の影響力はとても大きいのです。
私は16年間、100%再エネを供給する会社の電力を使っています。ですから私は再エネを応援していますし、投票を続けていますし、投資をしているわけです」
ということだ。
去る11月29日(水)、環境省との共催で開催された「CDP|2℃に向けて動き出す 企業・投資家セミナー」を成功させた翌日、CDPを突き動かす理念、見据える未来について、聞いた。
今中国は世界最大規模のソーラーパネル生産者です。風力発電ついても、世界一です。太陽光と風力発電の設置数でも、世界のトップ。とはいえ多くの問題も現在進行形で、まだ潤沢に資源としての石炭も持っています。しかし彼らは石炭が自分たちの土地、そして市民を苦しめていることを体験している真最中ですので、それとは異なる道を進むことにとても前向きです。
最も大事なことは、今後私たちが生きる世界が安全であり、安定することです。NPOは目標に集中し、それが達成でき次第消えればいいわけですが、悲しいことに、現実社会にはまだまだやることがたくさんあります。つまり、休暇の希望よりも長く働かなければいけないようです。
私たちCDPは2000年に始動しました。以来、「情報開示」をメインストリームに押し上げ、世界では6300の企業から賛同いただき、その点においては勝利したと言えます。しかし本当に勝利しなければいけないのは、エネルギーの転換に関しての問題です。
理想的には2020年、現実的には2030年になるかもしれませんが、具体的なエネルギーのシフトを日本でも実現させます。2020年代には環境意識を軸とした、野心的な取り組みがビジネスとして、世界の投資家や都市にとって最重要課題となるでしょう。誰もが気候変動、再エネを念頭に生活することが当たり前の時代となるのです。
それが、世界を次の段階へ移行させる分岐点にやっと辿り着いたことになるかと思います。2020年を大きな節目として、全体の50%を超える世界的企業が、気候変動に真剣に取り組む状況が生まれます。
また、現行のシステムが機能していないとするなら、新たなものを提示しなければなりません。人類は進化を続けてきた種です。海のバクテリアから始まって、長い年月をかけ、今現在のかたちまで辿り着きました。私たちは今加速して、私たち人類が生きるシステムを発展させなければなりません。それは現行の資本主義でも可能ですが、もっと的確な規制と個々から湧き出るリーダーシップが必要だと思います。すでにそれらが出現するための素地、勢いもあります。
現実にTV、カメラその他たくさんの先端機器は、日本製です。ですからそういったテクノロジーを是非エネルギー業界で活用いただき、また、持っている資産は投資して技術を促進させ、お持ちのポテンシャルを十分に活かして世界に貢献してもらいたいと思います。
セミナーのSBT/RE100パネルセッション、RE100に日本企業から初参加のRICOH・加藤氏。登壇者は同じくRE100参加の積水ハウス、ゴールドマン・サックス、環境省
しかし世界は激動の最中にあります。実際にものすごい速さで変化もしています。日本はそもそも自然災害の多い国ですが、温暖化は世界中に自然災害を増やしています。グローバル経済における供給網はお互いにすべてが関連し合い、当然日本もその一員です。ですから日本も世界で起きる問題に、常に関係しているのです。
その事実を踏まえて「日本社会には危機感が足りない」と感じていますし、その共有さえできれば、政府や投資家、そして企業が真剣に動き出す動機となるでしょう。また、公教育プログラムにおいても、気候変動について警鐘を鳴らしてもらえるようになるはずです。
そして、だからこそ今も私はこの取材を受けているわけですが、メディアの力も重要です。
しかし確かなのは、日本には再エネに使える資源は豊かにありますが、化石燃料はないことです。それなのに化石燃料にこだわれば、例えば今後も中国やオースラリアといった国々の言い値に経済が影響を受け、それはとてもリスキーです。
日本には風、太陽光、海があります。それらは無料で、持続可能な経済を実現させるポテンシャルに溢れています。
当初はイギリスでもなかなか理解は進まず、動きはゆっくりでした。それが今は洋上風力が盛り上がり、現実に国の20%を賄っています。洋上風力の許可取得にかかる価格は、原発のそれの半額です。
私は大学でビジネスを学べて幸運でした。でも「じゃあ」ファイナンス業界でやっていこう」と考えても、ただお金を稼ぐことにあまり興味が湧きませんでした。それよりも「社会を具体的に変えたい」、「この世界を今よりもいい場所にしたい」という気持ちが強くありました。
私たちは全員、私たち自身がつくりあげたシステムの一員です。であるならば、一人の責任として、そのシステムを少しでも良いものとすべく行動しています。
根拠と科学は大切です。個人でも企業でも大きな投資をする際、まず事実を知ることが必須です。
CDPの役割は科学的事実をビジネスや投資の世界に持ち込み、持続可能な社会を実現するための、正しい判断を促すことなのです。
インタビューは帝国ホテル1階のカフェラウンジにて、みんな電力からは取締役の三宅も同席した
本年度はこれが最後の記事。お読みいただき、本当にありがとうございました。新年は9日に最初の記事が公開されます
ポール・シンプソン
CDPのCEO兼共同設立者。We Mean Business理事会、国際統合報告評議会(IIRC)委員、オックスフォード大学のスミス企業環境大学院のグローバル座礁資産諮問委員会役員など要職に就く。それ以前は、Chesham Amalgamations & Investments Ltd.、エコロジーと文化のための国際協会(ISEC)およびにソーシャルベンチャーネットワークでディレクターとして勤務。バース大学にて責任とビジネスプラクティス修士号取得