赤紫蘇シロップに息づく葉山町への想い
目次
「葉山コーディアル」誕生秘話<その2 つくる人。>
「葉山コーディアル」は、神奈川の葉山町の畑で農薬不使用で栽培された季節の野菜や果物を使い、湘南地域の皆さんの手づくりで製品化される農産加工品のブランドです。企画元の「freebee」代表・中島広数さんが世に送り出した「赤紫蘇シロップ」は、すこやかなおいしさでたちまち評判に。今回は、そのおいしさの源である赤紫蘇を栽培する農家のひとつ、葉山の「いさむファーム」の代表・早苗さんにお話をうかがいました。
そこには葉山の自然をこよなく愛する想いが詰まっていました。
お洒落なマリンリゾートと素朴な里山が同居する葉山町
ブランド名にもなっている「葉山コーディアル」の葉山とはどんなところなのでしょうか。
葉山町は神奈川県の三浦半島のちょうど付け根に位置する地域で鎌倉や湘南に近く、景観美あふれる海沿いは首都圏の人々にとっては、おなじみの観光スポット。皇室の別荘である葉山御用邸やマリーナもあって、お洒落なリゾートのイメージがありますが、山側に入ると棚田や葉山牛の牧場もある緑豊かな里山の風景とも出会える場所です。
連綿と受け継がれてきた畑に自然に生えてくる赤紫蘇
そんな葉山町の山間部にある「いさむファーム」さんは、わかっているだけでも江戸期から葉山で農業を営んできたという歴史ある農家さん。
「赤紫蘇シロップ」の人気の秘密である、まるでフルーツジュースのようなおいしさは、やはり特別な育て方によるものなのか。まずはそこを早苗さんにお聞してみました。
「特別なことは何もやっていませんよ。ただ、自分達も食べることが前提なので赤紫蘇に限らず、うちの野菜や果物は三代前の祖父の頃からずっと無農薬・有機栽培で育てています。堆肥は近くの牧場から出る牛糞や伊豆の馬糞、山からとれる腐葉土やヌカなど自然由来のものをバランスよく使っています」。
では、この赤紫蘇は品種的になにか特徴があるのかと尋ねると…
「実はここの赤紫蘇は、江戸の昔からこのあたりに自然に生えていた赤紫蘇なんですよ。ただそれだけです。栽培の仕方も自然のまま。畑のあちこちに勝手に芽を出した苗を少し整理して育てているだけなんです」。
このことを聞いてふと思ったのは、「いさむファーム」さんの赤紫蘇は、種苗メーカーに品種操作されていない在来種なのかもしれないということ。在来種とは、たとえば京都の聖護院カブなど、それぞれの地方の伝統作物がそれにあたります。いま、日本全国で農家が減り続け、それと同時にその土地固有の作物も、栽培方法も消え、その野菜を使う伝統的な食文化も失われているのです。その点でもこの葉山の赤紫蘇は守っていく価値のあるものだと感じました。
苦労の多い傾斜地での作業それでも農業を続けていくわけ
「いさむファーム」さんが栽培している作物はほんとうに多種多様。葉野菜や根菜、スモモ、梅、柿、栗、オレンジ、みかん、ぶどうなどの果物も含めると年間では100 にも及ぶといいます。しかし「いさむファーム」さんの畑は葉山の山間部にあって1800 坪の畑のほとんどは傾斜地です。作業はどうみても楽ではありません。それでも早苗さんはこの農園を守っていくつもりだと言います。
「本格的に農業に取り組んだのは父が亡くなってからです。私は子供の頃から、この山野を駆け回って育ちました。そしてここで獲れたおいしい野菜や果物を食べて育ちました。この農園と里山は、私にとってかけがえのない聖地なんです。この素晴らしい場所をなくすことはできないんです。大変なこともありますが使命だと思って、楽しみながら続けていくつもりです」。
顔の見える人たちに大切に育てた野菜をすこしずつ
早苗さんが農園を続けていくために選んだのは、一年を通じて、いろいろな作物をすこしずつ育てるというやり方です。
「自分が無理せず作業できることや無農薬・有機なので大量には収穫できないし、スーパーのものみたいに、かたちも大きさも揃えられないんですね。それなら、おたがいに顔の見える関係で納得して食べてもらおうと。いまは予約制にして農園に買いに来てくれる方々にお売りしたり、近隣の「beach 葉山」さんや森山神社の「土曜朝市」とかに卸しています。
野菜や果物のひとつひとつが私にとって子供みたいなものなんです。だいじに、だいじに育てたものなので顔の見える方々に食べてもらいたいし、こういうやり方なら、つくり過ぎて廃棄するというフードロスも無くせるからなんです」。
フードロスを出さないそれが「葉山コーディアル」との出会い
では、どんな経緯で「いさむファーム」さんの赤紫蘇が「葉山コーディアル」の赤紫蘇シロップ になったのでしょう?
「「freebee 」の中島さんはもともと、うちの野菜を買いに来てくれていたお客さんだったんです。ここの野菜はうまい!っておっしゃってくれて、それが最初の出会いでした。中島さんはこのおいしさを何かのカタチにしたいと考えていたようで、いい赤紫蘇がたくさん穫れるけどあまり使い道がなくてもったいないんですよね、なんて話したら、それですよ!!となって、この取り組みがはじまったんです」。
野菜をわが子のように大切に育てる人。育てた命を無駄にせず、新しい価値に変える人。そして、そんな想いを応援する人たちがつながれば、いま私たちに投げかけられている課題のいくつかは解決していくのかもしれません。
「葉山コーディアル」では、赤紫蘇に続いて新たな商品も準備していると聞きます。葉山の野菜や果物がどんな素敵な商品になるのか、いまから楽しみは尽きません。
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