【最終回】みんでん鼎談|ブロックチェーンのアツい本質
一つ目は、ブロックチェーンによる「電力取引とトレーサビリティシステムに関する特許を取得」であり、二つ目は、その処理速度が60倍となり、同システムの活用は今後、電気以外に土やバッテリーなど、いくつもの取り組みが控えているという内容だ。
Bitcoinなど仮想通貨の広がりから徐々に認知が広がり、サトシ・ナカモトという日本人が創始者という、世界的な都市伝説に多少なり親近感を覚えるも、じゃあ私たちはブロックチェーンについてどれだけわかっているだろう?
むしろ世界でこそ投票や納税にまでその広がりとポテンシャルを見せながら、日本ではまだまだ社会的認知の低いブロックチェーン。
みんな電力でその技術とエネルギーという、世界においても先駆的なコラボレーションを実現させたお三方に集まっていただいた本記事も、ついに最終回。コンサルの立場からその可能性を感じて身を投じた、森本さんへの質問から始まります。
みんな電力とブロックチェーンの関係性で言うと、「もっといろいろ使いようはあるな」とは思いつつ、電力の世界を中から知ってみると、業界にうまく適合させた、いい仕組みなんだなということも思います。
今、技術は世界中のどこで何をやってきた人間であれ「それさえ持っていれば」という、超平等な競争の時代だと思っています。しかも日本は世界のIT業界で、アジアにおいてさえも優先順位を下げられつつあります。
例えば、APIを日本では公開しないけど「ジャカルタで公開します」、「韓国で公開します」みたいな調子で「もう、ジャカルタより下か!」ということは普通に起きています。日本は、エンジニアリングの力をもっと海外に発信しないといけないんです。
そういう意味で、こういうブロックチェーンで先進的な取り組みをやっている会社で、もっともっと海外に発信できるようなプロダクトにするところに自分が貢献できたら、それはワクワクすることです。
ただ、いろいろなチェーンがそれぞれに特性を持っていて、そのいいところどりをしていく「クロスチェーン」という技術が出てきたり、様々なかたちでブロックチェーンの世界観をそれぞれが体現して新しい世界に実装させたりとか、人々の思惑に伴ってたくさんのことが起きています。
だから、「ブロックチェーンは完成している素晴らしいもの。あとは広めるだけ」ではなくて、ブロックチェーンごと変わり続けているんです。
当時私が家電メーカーの代表の方から聞いた話では、「日本企業はPoC疲れを起こしている」ということでした。
ブロックチェーンはAIみたいに投資価値があるかもしれないから、「とりあえず予算500億円つけるから2年で結果を」みたいなことが結構あったと言います。
その結果、皆さんが口を揃えて言っていたのは、「スケーラビリティやインターオペラビリティの欠如」、一言で言えば「遅過ぎる」ということで「(ブロックチェーンは)使えない」。2018年末頃はだいたいそういう結論が出てしまいました。
ただ世界を見渡すと、開発は延々と続いている。
そして、その中で気づき、直そうとして、時に劇的に改善したり、進化が常に起きている。壁が出てきては乗り越え、それを繰り返す流れだし、まだまだそれが続いていくんだろうと思います。
それが直近の状況ですので、18年末頃に触れていた方に声かけると、「あんまり使えないよね。次が出るまで待とうぜ」という空気があと半年、一年は漂うと思います。
そしてだからこそ、みんな電力にはすごいチャンスがあるのではないでしょうか。皆が「待ち」のスタンスの間に、みんな電力がブロックチェーンを着実に続けているのは、企業優位性が高いと思います。
例えばベーシックインカムはいろいろと論争を起こしていますが、勝手な予測としては、よほど豊かな国が小規模に、より市民の生産性を上げるために導入するのであれば機能するかもしれませんが、いきなりアフリカの貧困国に導入しても、何の解決にもならないと思います。
ブロックチェーンは、新しいお金の流れのインフラになりうるでしょう。一つの側面として寄付や募金として、ユニセフなどを通さず、一気に仮想通貨で現地に流通させられるということはある。でも「人々の普段の生活を潤わすために、天から突然恩恵が降ってくる」ということではないと思うんです。
ブロックチェーンはどれだけ弱い立場の人でも、歳も関係なく、貧乏な地域でも、端末さえあれば世界の人と交渉ができ、その後一度貧困の差は広がるかもしれないけれども、そこに芽が出ます。芽さえ出れば、チャンスがなかった人たちが国の圧政や不平等から離れて潤える、平等なチャンスに触れる機会が増えます。
たとえ10人に一人でも潤っていければ、その人の例えば飲食など経済活動によって、近くの人たちにも恩恵が伝播していきます。ブロックチェーンは間違いなく、それこそ銀行口座をつくりたくてもつくれない存在にも、そういう部分でパワーとなり、自ら普及し、個人の自立を後押しします。
今、新しい潮流がどんどん出てきていて、それはブロックチェーンだけでもなく、それらが複雑系になってたくさんのチャンスが出ては消えまた新しく出てきて、そういった時期が今後しばらくは続くでしょう。
僕は、チャンスがいっぱい出てくることの方が大事だなと思っています。「ずっと沈まない船はどこにある?」、「どこに掴まれば頭を使わなくても生きていける?」じゃなくて、潰れもするけれど、同時にチャンスも出続けるという状況に、ブロックチェーンの変化と浸透がかなり寄与すると思います。
「次に繋がるものをちゃんと育てる」とか、「世の中を自分の眼で見る眼を育ててあげる」ということが大事です。今の世の中は、いったん貧乏くじを引いた人間がなかなか立ち上がれず、既得権益者は甘い汁を吸い続けるようなところがあって、それが次々に出てくるチャンスによって、ひっくり返せるようになってきているわけです。
どう開き直って、どう行動に移せるか。
「藁をも掴む」という言葉がありますが、藁が実際に掴めるのにそれさえもしない人が結構多い気がしていて、「何をやってでも生きる」というハングリーさは、アジアでも日本以外の国々が強い気がします。
ブロックチェーンも変化して、今までと全然違う、これまでまったくお金にならなかったものがすごくなるという現実がたくさん出てきて、「どれに自分の人生をベットするか」という選択肢は広がってきています。もう、あとはそれをどう掴むか。ブロックチェーンなんか、今ならまだ3ヶ月頑張って学べば、その後最低限の給料もらえるようにはなりますから。
速さは確かに重要な要素です。そして、需要家が使った電気の「量」には今まで価値はありませんでした。でも、そこから計算される電気代には価値があったのかもしれない。
今回電力トラッキングで可視化したのは、電気を使ったその「量」であり、そこにその電気を「誰」が発電したかを紐付けしたからこそ、SDGsとかESG投資といった全世界的な流れの中で、データそのものに付加価値が加わりました。
それがどんなスキームであれ実行することで、今まで価値のなかったものにどう価値を持たせるか。そこが「速さ」のような性能と同じくらいか、もしかしたらもっと重要なテーマになるのかなと思います。
この次は何か?
速度だけじゃない何か、それは「乞うご期待」という(笑)。
写真は飛峪氏(左端)がブロックチェーンハッカソンイベント「Decrypt Tokyo 2019」優勝時のもの。
同氏は賞金でVRゲーム機(Oculus Quest)を購入しVRとブロックチェーンの可能性について研究しているとかなんとか
私は、こちらで話を伺った「種プロジェクト」の話が忘れられません。
あれはすごい歴史的にも重要な観点のプロジェクトで、本当なら財団を立ててでもやるべき事業だと思います。種の歴史的価値、農作業も含めた文化を集約して、ブロックチェーンでそれらを受け継ぎ育てていくプロジェクトだと理解しています。それをお手伝いできる機会があれば、「ボランティアでも何でもさせていただきます」ということは話させていただきました(笑)。
今後もそんな風に、ブロックチェーンを通してみんな電力と関わることができたら嬉しいなと思っています。
(注釈 ※ 「種プロジェクト」のほか、みんな電力ブロックチェーンチームは、電力以外にも「食・住・空気」にフォーカスした様々なブロックチェーンプロジェクトを多数企画中。乞うご期待!)
飛峪(とびさこ) 龍一
1974年大阪生。Grid World合同会社代表。
小学生の頃からプログラミングに親しみ、アセンブラで書いたゲームソフトが雑誌掲載された事が自慢。専門学校で情報処理とコンピューターサイエンスを学び、社会に出てエンジニア/プロジェクトマネジメントを多数牽引。
2016年に暗号通貨と出会い、ビットコイン投資を歴てブロックチェーン技術に興味を持つ。海外ブロックチェーンホワイトペーパーの紹介記事を執筆し雑誌掲載複数。
後にブロックチェーン専門企業でエンジニア兼マネージャーとして開発従事、ブロックチェーン教材開発、ブロックチェーン大学校の講師担当、海外ブロックチェーン実証実験参加、ビットコイン取引所アプリ開発参加等を経て、みんな電力プロジェクトに参画。
みんな電力ブロックチェーンチームと共にスケーラビリティー問題解決に従事する。
ブロックチェーンハッカソン「Decrypt Tokyo 2019」優勝
森本 詢
1990年東京生、日本大学第三高校、京都大学農学部卒業。
2013年から2018年までコンサルタントとして国内の企業の組織開発、事業開発の支援に従事。インダストリー4.0のインパクトの大きさに危機感を持ち、グローバルな開発者コミュニティの東京ブランチ立ち上げに参画。
コミュニティの技術者との会話の中でサイファーパンクのメーリングリストのことを知り、技術者の描いた世界観が、40年後に現実のものになってきている事実に衝撃を受けてブロックチェーンの世界に興味を持ち、ブロックチェーンエンジニアにジョブチェンジ。
現在はみんな電力のブロックチェーンチームで開発業務に従事している。
鈴木 雄介
1985年静岡生、静岡県立農林大学校卒業。
園芸店・生花店勤務を経て12年前にシステムエンジニアへジョブチェンジ。3年前に、当時関わっていたシステム案件を通し再生可能エネルギーへ興味を持ち、みんな電力へJoin。
現在はシステム案件の立ち上げ支援やシステム部メンバーの後方支援を行う。
最後の写真は、この取材の企画からブッキング、調整まで辛抱強く携わり、あたたかく見守ってくれた鈴木さんの写真で〆。
勝手にとっつきにくい思いがちなブロックチェーン、そしてシステムチームへの門戸を開いてくれたこと、深謝いたします。
次回記事もお楽しみに