【初回】老舗銭湯「電気湯」のサステナビリティ
メイン画像、男湯の赤富士を描かれたのは、もう日本に2人しかいないと言われる銭湯絵師・中島盛夫さん
墨田区は京島で創業100年以上の歴史を持つ、老舗銭湯「電気湯」。まだ20代で、家族にも「後を継ぐ」と言ったら驚かれたという若き経営者、大久保勝仁さんのお話です。
どちらかと言えば廃業の話を耳にすることが多い銭湯。しかし、建築学科で都市デザインを学んでいた大久保さんは、実家の家業が街づくりの観点から重要な役割を担っていることに気づきます。また、国連本部で日本の若者代表としてSDGs特使の大役も経験したことで、サステナブルな銭湯経営を標榜するようになり、その中で自らに冠された「電気」の部分をブランディングする一環で、みんでんを見つけてくださいました。
聞けば聞くほど、運命的に再エネを取り入れ、そして一緒に広めていけそうなポテンシャル。全3回、間延びすることも一切ありません。ぜひ、お楽しみください。
あと墨田区には「にこにこ入浴デー」という、浴場組合に入っている銭湯は65歳以上の方が一律無料の日があるんです。週一回65歳以上が無料で、その受付日が木金なんですが、そこを休みにすると無茶苦茶怒られます。この前、僕は長野県の松本にある銭湯と繋がりがあって、そこへの挨拶で金曜日に休んでしまったことがありました。それは今でも反省しています。
そこは菊の湯さんという銭湯で、そちらには僕がやっている「電気湯ラジオ」に出ていただきました。
菊の湯さん、喜楽湯さんと
とはいえこの無料サービスの日は、運営側としては無料で来て、シャンプーを盗んで帰る人なんかもいて大変なんです。ウチはもともと地域のお客さんが多くて、若者が少なかったのが最近やっと増えてきたんですが、それで最近理解できるようになったことがあります。
僕も、もともと「にこにこ入浴デー」推進派だったんですが(笑)、その木金は若者と、もともとのお客さんの間のトラブルが増えがちということもあるんです。
地域としてこの辺はもともと風呂なし物件が多い。おかげでウチがもってるということもあるんですが、この前は隣の人のシャンプーを使っちゃったおじいちゃんがいました。そのおじいちゃんは「初めて来た」と言ってて、何とか「無料のシャンプーあるから」という説明をしてその場をおさめました。そうしたら別の常連さんから、「あの人オレのシャンプーもとってたよ」という報告があって、そういうドラマはいつもあります。
大晦日の夜。一年の最後、自転車の数で、地元の方々がどれだけ電気湯に来ているかがわかる
だからそういう物件が多くて、最近はアーティストの方々が長屋を買い取って何かやるみたいなことも増えています。そういうことで、この辺は結構面白いんです。
銭湯ってもともとはみんな薪で、今はほぼほぼガスなんです。それなのにわざわざ電気で沸かしてたことがあるって、すごく面白い歴史だなと思っています。電気湯という名前の銭湯が国内だと大阪か東京にしかなくて、大阪の方はたぶんもう潰れちゃっていると思います。
自慢の高い天井は、改装後も健在
でも、「ボイラーつくるお金がなかった」みたいな理由はありえそうな気がします。ボイラーって高いので。
ですから、「電気湯」を引き継いだ時は「名前勝ちだろう(笑)」ってみんなで言っていたんですが、最近はその「電気」の部分を全然ブランディングできていないんです。電気湯の名は、僕は今27なのでその前、30年くらいなんだと思います。
僕はこの建物の3階で生まれ育って、ここに住んでいるのはおばあちゃんで、ここに来てはラムネを食べてバイバイするのがいつものパターンで、記憶の中ではその時から電気湯です。でも、ウチも今やガスで沸かしています。
先ほどもお伝えした、メチャクチャ資料にあたっている銭湯を研究しているメンバーですら、ここが創業した時の資料を見つけられていません。そして、組合の一番昔の資料にもここはあったので、確実のその前からあるというか、100年以上かもしれないし、もしかしたら100年以下ということもありうるかもしれません。
下町で、銭湯カルチャーの核心に迫るお話と、そこに再エネが加わることで紡がれる未来。次回は25日の公開、お楽しみに