【最終回】老舗銭湯「電気湯」のサステナビリティ
読みもの|2.1 Mon

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開店直前の女湯にて。大久保さんは「電気湯ラジオ」なる配信もしていて、最新回のゲストはみんな電力・間内賢氏

  100年超の歴史を持つ銭湯「電気湯」の若き後継ぎであり、誕生日は10月10日、つまり千十(せんとお)=銭湯の日というDestiny’s Child・大久保勝仁さんのお話もついに最終回。電気湯は明日2/2(記事公開日は2/1)、みんな電力に電気が切り替わります。
 実際に振興策を必要としている業界から、「銭湯の申し子」と呼ばれることもある大久保さんのお話、ここまでいかがでしたでしょうか。
 都市デザインを学び、SDGs特使として日本の若者を代表すべく国連で経験を積み、「もっと地域で生きる人たち」をつくりたかったし、または「そういう街であって欲しい」と考えてきたと語る大久保さん。最終回のお話は、下町全域が抱える海抜0m地帯の、気候変動リスク=荒川や隅田川の氾濫の可能性からはじまります。
 全3回を経て、近所の銭湯に行けば、またその心地よさも変わってくるのではないでしょうか。ぜひ、お楽しみください。

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大久保 あとこの辺は、海抜マイナス3mとか高くても0.何mとか、海抜がとても低いエリアです。万が一、荒川や隅田川が氾濫したら水の底に沈むんです。
ー同じく海抜の低い深川の方で、あの辺りはエレキテル発祥の地でもあるので、そこをフックに再エネ化を進めている動きもあります。
大久保 めっちゃわかります。だって僕が今いろいろ考えて必死に動いて、やっとできたと思ったら30年後には街として海の底みたいな、それは悲し過ぎます。そしてそれに対して声をあげようにも、そもそも自分がそういうことに加担しちゃっているとしたら、それは本当によくないと思います。
 だから僕、本当にめっちゃやりたいんです。BEAMSの時の「でんきのカード」を売って、同じイベント時のコンセントの壁も置きたいです。そういった、自分のやりたいこともできればと思って、今内装の改装工事もしています。
 BEAMSさんて、最先端のおシャレなアパレル企業なようでいて、実はすごい地産地消みたいなことも推してて、もともと興味がありました。
ー大久保さんは、銭湯の世界でやはり異端なんでしょうか?

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大久保 最近の銭湯界隈の風潮は加速主義というか、その風潮に対しては、乗れていないかもしれません。
 だって銭湯って本来もっと、それは「ご近所銭湯」という風に呼ばれる、ちょっと汚くても居心地よくて実家みたいな雰囲気というか、それが最近の流れで、デザイナーズ銭湯みたいになってきています。そうやってハードルが上がってしまうことで、ついていけない店舗も出てきてしまう。とはいえ銭湯って本当は自分の店や地域だけじゃなくて、「みんなが繁盛するように」ということを考えないといけない業界なんです。
ーその考え方、在り方も協同組合的な気がします。

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大久保 そうかもしれません(笑)。
 最近のデザイナーズ銭湯を見るとみんな焦って、「きれいにしなきゃ」「格好よくしなきゃ」という風になりがちです。でも、そうじゃない。まずはちゃんとした「ご近所銭湯」として、それぞれをアップグレードさせていく必要があると思っています。もちろん、銭湯側がそのままでいいということではありません。
 そのすごくいい例が北区、JR駒込駅にある殿上湯という銭湯があります。ここは本当にすごいです。おシャレなのに、ちゃんとご近所銭湯もやれている。地元の方々がすごい来ていて、めっちゃセンスもよくて、ウチもちゃんとそうあれればということで、模索しているところなんです。
 だから、「銭湯」が注目されたのは確かにデザイナーズ銭湯のおかげなんですが、銭湯業界自体に閉塞感、行き詰まり感があるのもデザイナーズ銭湯のせいでもあるかもしれないという、、功罪ともにあるというか(笑)。
ー絶妙なバランスとセンスが求められるようになってきた。

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大久保 あと、最近の若い銭湯経営者には、SNSで自分の個人アカウントのフォロワー数の方が銭湯本体のアカウントよりも多いみたいな現象があって、それも少し不思議に思っています。電気湯は、「現場の人がどういう顔をしているか」というか、お店の看板の裏側にどんな人がいて、その方々は日々、どんな頑張りを見せてくれているのかというところをしっかり見せて、銭湯のより重層的な姿を見せたいなと思っています。
 例えば銭湯に牛乳を運んでくれるおっちゃんだって、「そんな店は今や小村井に一軒しかなくて、そこから毎日車で運んでくれて、しかもそのおっちゃんはもう80歳だ」みたいな、本来発信すべきはそっちのストーリーなんです。
ー銭湯の世界のもともとの在り方が、社会全体が資本主義とか新自由主義とか加速主義を経て見えてきた地平と、重なってきている。

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一番湯のために開店前から並ばれているお客さまとも、すでに旧知の仲

大久保 自分も反省するのは、よく出先で電気湯のステッカーとかあげて「ぜひ、来てください」と言うことがあります。でも、それを言うべき相手というのは地元のまだ来てくれてない方々であって、遠くの方々には「時間があったら来てくださいね」くらいのテンションでいいなって(笑)。
 それは、川口市にある喜楽湯さんという、中橋悠祐さん(初回記事に写真アリ)という方がやっている銭湯があって、、
ー次々と広範囲、各地にある銘銭湯のお話がでてきます(笑)。

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大久保 それは、銭湯にはやっぱり、めちゃめちゃ行くからですね(笑)。
 電気湯の仕事とも関係なく、行く先々で近くに銭湯があれば行ったりします。あとは僕自身がまわりと自分を相対化しながらでないと案がでないタイプで、ちゃんと「まわりを観察・分析しながら自分のポジションを見つけていく」作業が必要なんです。
 そしてその喜楽湯さんは2016年頃からリニューアルした銭湯で、デザイナーズ銭湯の先駆けみたいな存在です。
 本当にいい銭湯なんですが、コロナの時に極端にお客さんが少なくなってしまった。その理由は、そこはすごくいい銭湯なのに、来ている大多数が遠くの人たちでそれもあって毎日混んでいて、比較的地元の方々が少なかったそうです。それで店主の方が、今また改めて地元のお店をまわってコミュニケーションをとってということをはじめられています。
 そういう話を聞きながら、やっぱり「地元にしか愛されてない店もいいな」ということを考えています。
ー理想形も成功例も一つじゃないけれど、地域とのリスペクトある相互関係は必須であると。

待合室改修

待合室の改修も、仲間たちと力を合わせて

大久保 そうなんです。
 それで僕は、そもそもは「電気湯」のブランディングをしようと思っていたんですが、もっとその手前に「電気」というブランディングもあるんだなということに気づいたんです。それが、「みんな電力さんとちゃんとコラボがしたい」と思った発端でした。
 「持続可能な銭湯」は、ちゃんと極めたいなと思っています。銭湯で持続可能性を言う銭湯はそれなりによくあります。でも、何というか、やることと言うと、例えば「〜湯」と言って、不揃いな野菜をお湯に浮かべちゃったりするんです。ああいう野菜だって、普通に食べられるもので「もったいないな〜」と思ったりしています。
 まだ「持続可能=サステナブル」の意味がいまいち噛み合ってないというか、もっと着実にできたらと思います。
 僕は、もともと国連関係の仕事をして、SDGsについても研究機関と一緒にやった経験も通じて、普通に詳しくはあるかなと思います。ちなみに岸田元外務大臣が国連で発表した時、一緒に行った僕を含めた6人くらいのメンバーが、当時日本からの代表団でした。
 それ以降、国連に日本のユース代表団として参画していたのですが、やっぱり実際に「銭湯」となった時、みんなから「ちゃんと持続可能性を」と期待されても、正直「できるかな??」という感覚もありました。
 でもこれから、みんな電力さんと、そしてウチとしてはガスも課題なんですが、しっかりやっていきたいと思っています。
 その取り組みの一環として、待合室を一つにしても手を加え続けるというか、「柔軟さを失わないように」という姿勢とか、やりたいことはイロイロあって、例えば「LGBT風呂」とか、、
ーそれは、両方どっちも入っていい、的な?(笑)

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ぜひ、ゲストにみんな電力・間内が登場した大久保さん「電気湯ラジオ」もお聴きください。銭湯と再エネが組んだことで広がる可能性がわかります

大久保 これはすごく難しくて(笑)、銭湯の風呂が2つあるそもそものしつらえをどう使うか、アイディアはたくさんあるんですが、それと一緒に「考えることは尽きないな」という感じです。

銭湯界の未来を担う大久保さんのお話はこれで終わり。近所の銭湯に行きたくなりましたか?私はこれから、行ってきます!

 

(取材:平井有太)
2020.12.07 mon.
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