デンマーク発オーガニックCBD「ENDOCA」が目指す”グリーン革命”とは?(後編)
読みもの|12.3 Fri

デンマーク発、世界的なCBDのリーディングカンパニーENDOCAジャパン、松本敏さんへのロングインタビュー後編。

ご自身の体調不良からその効果を体感し、デンマークまで赴いてENDOCA代表のヘンリー氏に、日本社会にフィットする、しかも効能を失わないCBD開発の意義を直談判をされた松本さん。私たちの手元にENDOCAのCBDが届くまでには、多大な努力がありました。

結果、ENDOCAジャパンはそもそも自分たちの足元にある日本文化を掘り下げ、温故知新な姿勢を実践することから、CBDへの想いを強くしていきます。

CBDを巡るジャーニーを、お楽しみください。

ー日本専用の新たな製造ラインをつくる価値があるからとヘンリーさんに直談判された。

松本 彼らも日本のことを調べて、「日本はもともと麻の国」ということで、シンパシーを感じてくれていました。

 エンドカ代表はヘンリーというんですが、最初に僕がエンドカを訪れた時、「麻の国の民族が何しに来た」ということを言ってきたんです。続けて、「君たちが僕らから学ぶのはほんの数年のことしかない。でも僕たちが君たちから学ぶことには、一万年の歴史がある」ということを言われました。「世界で一番長い麻の歴史を持っている民族が、君たちだ」と。

 彼らは最初からそういう気持ちを持ってくれていて、売り上げこそ小さいものの、「日本のためならやろうか」という気持ちを強くしてくれました。そうして製造ラインが実現し、日本へのディストリビューションをはじめられたんです。

ー体調を崩され、エンドカやヘンリーさんに出会い、そこから実際の輸入に至るまで、本当に長い道のりです。

松本 CBDの運命に巻き込まれた感じはします(笑)。

 でもその中で助けてくれる方々も現れたり、一つの流れの中で、目の前に次々と障害が出てきては、時間こそかかりましたが、ただ本当にこれは素晴らしい「僕の命を救ったもの」だったので、迷いは生じませんでした。

 たぶんこれがビジネスだけだったら、心が折れていたと思います。

 CBDを当初からやってる第一世代の人たちは、これは他のブランドさんでも、何かしら人生においてCBDおよびヘンプに救われたケースが多いんです。だから結構、仲間意識みたいなものがあります。

 本当に皆さん苦労して、それぞれ厚労省に出向いては麻薬取締官の人たちに囲まれながら交渉して、許可をいただいて、輸入にこぎつけています(笑)。

ーヘンリーさんも指摘する日本古来の麻の文化は、現代社会のどういったところに見い出せますか?

松本 ヘンリーとENDOCA ジャパンをつくるとなった後、僕自身は「もっと日本のことを知らないといけない」と思いました。そもそもENDOCA ジャパンをつくろうと思った理由が、エンドカのクリニック設立でした。

 それはナチュラルクリニックで、食事の療法から、心のカウンセリングやメンタルトレーニング、ヨガやメディテーションを含めた総合施設をつくろうというビジョンを、ヘンリーは示してきたんです。その時に「日本の麻文化を考えなければいけない」ということで、いろいろ調べると、日本における麻文化の根源は徳島にあるということがわかりました。

 大麻比古神社という神社があったり、今も天皇家に麻を奉納している農家から「戦前はがん予防で麻の実を食べていた」というお話を伺ったり。飛騨の方でも麻の実はパワーフードとして捉えられていて、これまで意識してみていなかっただけで日本に根付いた麻の文化の片鱗を感じました。

 ですから「麻の解放」、「価値観の転換」というのは日本の根幹に関わる、アイデンティティの一つになっていくと思っています。

ー日本が麻をこんなに禁止しているのは、戦後の70年間くらいの話という理解です。

松本 ここでお店やっていても近所のおばちゃんが来て、「このあたりも麻は普通にあったのよ」という話をしてくれたりします。

 僕らがお店や各地でポップアップをやっていると、世代によって麻に対する価値観がバラバラです。

 20代くらいになるとネットにも普通に触れていて、当たり前に海外の情報を持っていて、麻に対する偏見が限りなくありません。

 それが70代以上になると、彼らのさらに親が麻を使ってヨモギのような治療に使ってくれていた経験を持っていて、まったく偏見を持っていなかったりします。逆にテレビ世代だけがごっそり「ダメ。ゼッタイ。」になってしまっているんです。 

 これは逆に捉えると「面白い現象かもしれない」ということで、その世代の価値観を変えることが重要だなと思っています。

ーまさに自分がテレビ世代、団塊ジュニアのど真ん中です。

松本 ですので、そういった日本文化の見直しは必要かなと考えて取り組みもしています。

 このお店の壁にはヘンプチップを埋め込んで、床にはヘンプの炭を入れています。表現が難しいんですが、それによって磁場を整えるというか、音をカットするような効果があるんです。

ーCBDはまだまだ、日本でしっかり理解されているとは言えないと思います。

松本 ヘンリーはもともと遺伝子学者で、エイズ治療のためにアフリカに行っていた人間です。

 その時に、HIVの薬はいわゆる副作用がひどく、結局はその副作用のために今度は別の薬を使い続けるという、製薬業界のシステムを目の当たりにしました。医療業界に絶望して、それで自然薬の道に進み出したと言います。

 彼が代わりに現地で希望を見い出したのが、アフリカでもカンナビスの治療を確認して、「これを自分の国でやりたい」という発想を持ったとのことです。

ーアフリカですでにカンナビスが治療に使われていた、、?

松本 使われているんです。

 そしてこれはアフリカに限ったことではなく、世界各地の土着の医療には高い率で、カンナビスの存在があります。中東もそうですし、日本だってもともとはそうです。そういった現実を、旅をしながら世界の土着医療を見て、ハーブの研究を続け、ヘンリーはその中でカンナビスがどこでも使われていることを知ったと言います。

 ヘンリーはコペンハーゲンに戻り、診療所を立ち上げます。まさに最初は、私たちのこの場所のようにこじんまりとした、そこで「ライフスタイル医療」というかたちで栄養学をベースに、患者を食やハーブで治すということをしていきました。その中で、ヘンプの食だけではない部分も見い出して再度大学に戻り、そこから改めて研究に深く入っていきました。そこで「CBD」を再発見するんです。

 本来彼は、カンナビスのいわゆるマリファナ種も含めてすべてを使いたかったんですが、それはデンマークでも違法でした。法律的に許可されているヘンプに着目し、THCを含まないカンナビノイドを利用するにいたりました。

 彼は、CBDはもちろん大事なんですが、その他のカンナビノイドもすごく重要だと考えています。この世には数え切れないほどのカンナビノイドが、それは私たちの体内を含めて多数存在しているんです。その事実の上で、いわゆる「フルスペクトラム」のヘンプのCBDオイルの研究をはじめて、このブランドを立ち上げました。2010年頃の話です。

ーそこからまだ、10年ほどしか経っていない。

松本 それは、世界的に見てもかなり早い方です。CBDは、アメリカでも2015年くらいからやっと市場ができはじめ、ヘンリーは当時すでにいくつか大きなブランドの設立にも携わっています。もっと「CBDについて会話する人間が増えなきゃいけない」という考えが根底にあり、アメリカに原料を供給し、ノウハウを教えてきました。

 ですので、エンドカはヨーロッパがベースではあるんですが、アメリカの方でも早く広がっていったブランドでもあります。

 ポイントはCBDについて、ただ単離されたCBDだけではなくて、東洋医療的な考え方に基づいた「ライフスタイルをベースにした治療のため」という位置付けだったことです。

ー食、ライフスタイル、環境などと深く関わるものである。

松本 そうなんです。そこには「考え方」がベースにあり、そうなるとおのずと、地球環境に対しての姿勢も関わってきます。

 ヘンリーは当初から「オーガニックは当たり前」という主張でした。それは当然として、「サステナブルな環境をつくらないといけない」ということをずっと言ってきています。

 バルセロナの方にもっているエンドカ村では、オフグリッド環境で、パーマカルチャーをベースとした「食べられる森」をつくっています。そこではハーブの研究もできます。ヘンリーは本質的に、テクノロジーと自然の共存を望んでいるタイプの人間だと思います。

ーデンマークには、一般社会から切り離された自由な特区として世界的にも知られる「クリスタニア」がありますし、サステナブルな社会としては島で発電して自給と循環を成功させているロラン島もあります。ですので、そういった価値観の先端地域と言えると思います。

松本 デンマークはある種厳しい管理社会ですので、そこに対するカウンターということもあったと思います。デンマークでも当初は医療用大麻が違法で、彼はその合法化活動もしていて、そうとう叩かれたこともあった人間です。

 それが今や、エンドカのチェアマンというかたちで国の大臣も参画しています。ヘンリーはそれくらい国の、カンナビスに関する価値観を変えた人間でもあって、活動家なんです(笑)。

ー他に、デンマークや北欧でだからこそ、そういった考えが生まれた必然性はあるのでしょうか。

松本 これはあまり知られていない事実ですが、CBDにおいてはヨーロッパが最先端でした。

 当初は、もちろん「マリファナ」という意味では一番最初に合法化されたコロラド州や、大市場であるカリフォルニア州のインパクトがありました。でもヘンプ由来のCBDに限定すると、アメリカには存在していませんでした。

 ヨーロッパでは、もともと高品質のヘンプを栽培してきている北欧、東欧という地域がありました。エンドカは2010年にブランドを立ち上げていますが、それはヘンリーが独自に続けてきた研究結果としてのことでした。当時はヨーロッパから CBDの原料がアメリカに輸出されていた背景があり、そういったことで、エンドカはパイオニア的な存在でもあったんです。

ー最後に、エンドカに込められた意味を教えてください。

松本 エンドカという名前は、「エンドカンナビノイドシステム」の略称からきています。このシステムがホメオスタシスにとって、最も大事なもので、それこそエンドカのドアや白衣の背中などいたるところにプリントされている「UNLOCKING THE SECRETS OF NATURE」に関わってきます。

 ヘンリーは大学での研究に戻ったときに、このエンドカンナビノイドシステムに出会いました。エンドカンナビノイドシステムは、ヘンリーが大学での研究に戻って、80年代に発見された人間の免疫に関わるとても重要なシステムです。にも関わらず、なぜかそれをどの教授やドクターに聞いても誰も知らない。ヘンリーにとっては大きな疑問だったと言います。

 その背景には、西洋医療と東洋医療のアプローチの違いがあるのかもしれません。なぜなら、西洋医療の短期的、局所的な治療と、エンドカンナビノイドシステムやホメオスタシスなどの東洋医療のホリスティックな治療はどうしても交わらないからです。

 西洋医療のプロセスは、バランスを崩すことに繋がっていきます。戦時中に発展した背景があって、瞬間的に繋ぎ合わせたり治したりということには長けていますが、治療範囲がどうしても局所的です。つまり、薬で短期的に、もしくは局所的に治しはするけれど思いっきり抑え込むので、体全体のバランスが崩れるんです。

 その一方で、エンドカンナビノイドシステムやホメオタシス、東洋医療はバランスを保つための考え方です。そして東洋医療に代表されるような考え方が大きくなると西洋医療自体の存在が脅かされてしまうので、そういう作用も働いてさらに交わることができず、封印されてきた経緯があるかもしれません。

 ヘンリーも当初は工場を封鎖されたり、メディアから根も葉もない事実で吊るし上げられたり、大変な経験をしてきました。最終的にはデンマークの大臣が味方についてくれたことで、医療用大麻の合法化に繋がったと聞いています。

 体に秘められたホメオスタシスの力を、そして、医療から見過ごされてきたエンドカンナビノイドシステムをUNLOCK(=解放)する。二重の意味でもENDOCAは特殊な、営利企業とはちょっと違う会社です。エンドカ財団を立ち上げていたり、「人助け」や「社会変革」が前提にある会社なんです。

ヘンリーという稀代の天才がアフリカでもカンナビスの効能を見い出し、埋もれていたCBDを掘り起こし、アメリカをはじめ世界にCBDの存在と知らせ、広げてきたENDOCA。

機会があれば手に取り、先入観を外して、ご自身で感じてみることをおすすめします。

▼前編はこちらから▼

#CBD #オーガニック #サステナビリティ #持続可能な社会 #読みもの
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記事を作った人たち

タドリスト
平井有太
エネルギーのポータルサイト「ENECT」編集長。1975年東京生、School of Visual Arts卒。96〜01年NY在住、2012〜15年福島市在住。家事と生活の現場から見えるSDGs実践家。あらゆる生命を軸に社会を促す「BIOCRACY(ビオクラシー)」提唱。著書に『虚人と巨人』(辰巳出版)など
photographer
Shinsuke Matsukawa
出版社の写真部に在籍後、英国、香港、バンコクに居住しホテルや食、ファッションの撮影で海外取材を中心に活動。現在は日本をベースに雑誌や広告で活躍するフリーランス。