【第2回】フジロック、NGOヴィレッジについて
読みもの|10.27 Thu

  前回、フジロックでNGOヴィレッジ担当であり、野外フェス黎明期から活動を共にされてきたグリーンアップル代表・中島悠さんのお話は、ある意味で日本のフェスが過去20年歩んできた、環境問題に関する道程のおさらいのようでした。
 今年夏、フジロック20周年の節目に参加させていただいた、みんな電力。
 今回はフォーカスをエネルギーにしぼり、電力自由化がそもそも持っている可能性。中島さんの視点から見た、そこでみんな電力が担える役割。最後には、フジロックとみんな電力の協同によって見えてくる、または目指すべき、新しい社会のかたちにまで話は及びました。
 関わらないで生活ができる人のいない「電力」が本来持つ可能性と、ワクワクする未来のお話、お楽しみください。

 

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忙しく、年間60ものフェスやイベントに環境担当で参加する、まるで生き字引き、中島さん

——フジロックのエネルギーの取り組みは、先ほど話に出た、軽油をバイオディーゼルに替えた以外には、何がありますか?
中島 他には、太陽光パネルを入れたりしています。現代は、充電器などもかなり進化してきました。しっかり最新のバッテリーで充電して、発電機で軽油を使わないオペレーションなどを、みんな電力さんと一緒にやれればと思っています。
——ここまでは、ごみ箱や環境保全の話が多くありました。エネルギーは常にテーマにあったんでしょうか?
中島 アースデイ東京の事務局長を担っていた時代からバイオディーゼルに取り組んだり、色々なことをやってきました。「燃料電池を使ってステージの電力を賄おう」とか、太陽光だけのステージをつくってみたり、「色々なエネルギーソースを使ってイベント運営できると楽しいな」と思って、取り組みを続けてきました。イベントで電力は欠かせません。
 ごみは減らしやすいのですが、イベントにおける電力を減らすのは難しい問題。省エネも中々しづらいので(笑)、ごみとエネルギーの問題は常に、一緒に考えていかないといけないことだと思うんです。
——そういった経験、4月の自由化を経て、何か理想のかたちはありますか?
中島 僕自身も電力自由化を機に色々調べたんですが、正直「よく、わからない」というか、「どれも一長一短だな」みたいなことがあるじゃないですか。そこも含めて、携帯電話を選ぶように、電力も「ちゃんと選べるような社会にならないとダメなんだろうな」と思います。選べて、さらに自分自身で判断できるというか。
——まさに、みんな電力が得意とするところです。
中島 そうですね。自分で使う電力は自分で選ぶべきだと思うんですよね。みんな電力は自然エネルギーから明確にソースが選べて、「すごくいいな」と思いました。

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NGOヴィレッジ、ドーム前でのトークにはみんな電力・大石代表(向かって右)も参加

 

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しかし同じ時間帯には、一番のお目当てザ・クロマニョンズがヴィレッジから遠い、レッド・マーキーで、、

——今後もエネルギーとは関わられていきますか?
中島 色々やれるといいなと思います。社会に対して新しい提案というか、「新しい影響力をしっかり出すことができれば」と、思っています。みんな電力では「solamaki」って、つくられていますよね。ああいう形態でキャンプサイトで充電できたり、キャンプサイトで使えるバッテリーと太陽光パネルのセットみたいなものがあればいいなと思います。
——2、3日キャンプサイトで過ごすとなると、携帯の充電は普通保たないですもんね。
中島 だからこそ、喜んでもらえるんだと思います。貸し出しでも売っていてもいいですが、他のキャンプフェスでも使えたりすると、さらにいいんじゃないかと思います。
 フジロック自体、「自分たちがフェスの先駆者だ」とか、そういうつもりはまったくないと思うんです。でも、せっかくやる取り組みならそれが「いい」もので、色々な人たちに使ってもらいたい気持ちで、「そのための実験場所」という意識は強いかもしれません。
 例えば2005年にバイオディーゼルを始めた時も、当初なかなかレンタル会社がOKしてくれませんでした。自分たちの責任で「何かあった時は弁済します」ということで始めたんです。だから、誰かがそういう覚悟で実証実験をしてこその広がりだと思うので、そのきっかけになればと思っています。
 そこをもってパイオニアとしてのやる気や覚悟、矜持という風に言えるとしたら、そうかもしれませんね。

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福島から、親子が放射能を気にせずのびのび遊べる巨大インドアパーク、CHANNEL SQUAREも

——中島さんはフジロック以外に、年間60ものフェス、イベントに関わられています。社会全体の環境意識に変化は感じますか?
中島 僕の携わるイベントは社会性があったり、環境をテーマにしたイベントばかりなんですが、フジロックは中でも環境への意識が高いと思います。
 例えば僕は、祇園祭で、「祇園祭ごみゼロ大作戦」というプロジェクトをやっています。街中の露天で使われている使い捨て容器を、再使用できるリターナブルなものに替えたり、ごみを分別回収したりしています。そうして6、70万人が来るイベントの中でお客さんの声を聞いてみると、まだまだ「リサイクル、リユース」など知らない人が多かった。「フジロック来場者の意識の高さ」を、日々実感しています。
——そういう場では、方法があるとしたら、何が有効なんでしょう?
中島 そこはどちらかと言うと「仕組みの問題かな?」と思っていて。
 それこそ「ごみを出せばコストが上がり、出さなければコストが下がる」といった、当たり前のことを当たり前に実施することが大切ではないかと思っています。
 例えば、「環境に配慮した取り組みを行わないと会場を借りることができない」、「環境配慮行動を行っている来場者は得をする」といった仕組みの設定が大切になってくると思います。
——エネルギーは「自分と関係ない大きな問題」と捉えがちですが、実は日々の生活において、一人一人が意識することで変化が生まれる。
中島 仰る通りです。そこがどう広がるか、どう仕組みを変えられるかをよく考えるんですが、そこからが難しい。
 一番は「いい成功事例をつくること」なのかなとも思います。それこそフジロックがいい成功事例になって、「うちでもバイオディーゼル使おうかな」みたいに広がって、それが模倣モデルになるといいなと思っています。いいものはどんどん真似して広がっていけばいいんです。
 どう広がるかは、一つにはしっかり「わかりやすいモデルをつくり続けること」だと思います。ただ太陽光パネルをたくさん並べてどうこうではなく、ちゃんと太陽光でつくったエネルギーをバッテリーに充電して、それをどう使えるか。そこはお客さんも、キャンプサイトで本当にエネルギーを自活できたり、それらが実現することで違ってくるかなと思います。

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丸めて持ち運べる、みんな電力の製品「solamaki」をステージで紹介させていただきました

 

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年始にsolamakiウェアを贈呈し、それを発端に一緒に曲をつくったLee”SCRATCH”Perryさん

——例えばフジロックで、ステージそのもののエネルギーは、どう賄えるといいでしょう?
中島 もちろん本当は、全部自然エネルギーで賄えたら、素敵ですよね。成功事例を積み重ねていきたいです。ステージをバッテリーだけで賄う。その上で、「このエリアは発電機をやめ、CO2を出すことをやめました」と言うのは、わかりやすいですよね。実際に成果を見せながら、「こんなことができるんだ」と見せていくことができるといいなと思っています。
——まだ先は長い。
中島 挑戦することはいっぱいあると思っています。
——中島さん個人として、グリーンアップルとしての目標はありますか?
中島 イベントって始まりがあって終わりがある。しかもやると毎回反省点や課題が出てきます。なので、「毎年少しずつ良くなっていくのがいいのかな」と。
——そのスタンスも昔から?
中島 グリーンアップルは、運営スタッフの満足度が高いイベントこそ、効果の高いイベントだと思っています。来場者数が多くても、それが「ひとときの祭り」で終わってしまったら、効果は限定的。
 イベントが終わった時、運営スタッフから「来年もぜひスタッフをやりたい!」という声があがり、「来年はもっとこうしよう」というアイディアが活発に出てくるイベントは、結果的に、主催者、来場者すべての期待に応える「効果の高いイベント」として、息長く育っていきます。
 僕らが目指すのは、そういうイベントです。

 

(聞き手:平井有太)
2016.10.27 thu.
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