【特別寄稿】narii|あえて都心から離れて勝負する美容室
登録手続きに関しては、一契約ごとにメールアドレスが必要なところが面倒でした。あと、僕は個人事業主なので、明細は紙のものがあると便利です。マイページの明細画面を印刷すればいいんですけどね。
でも、メールに検針票を添付するだけで申し込みが完了したので、それは簡単でした。申し込みして、クレジットカードの登録さえすれば、あとは何もしなくても勝手に電力会社が切り替わっているんですよね。発電所の応援先は、奥さんの実家の長崎にしようかな。
(*nariiはオーナー名義の個人契約で、みんな電力をご利用いただいています)
では、なぜ切り替えることで「再生可能エネルギーを使用している」と言えるのかというと、まずみんな電力が仕入れている電力が、FIT電気・再生可能エネルギー(以下、再エネ)75%以上であり、プレミアム100プランでは「非化石証書」というもので再エネ100%を証明しているからです。
でも、再エネを選択する人が増えれば、その需要の高まりに比例して、再エネ発電所が増えます。そうすれば、混ざっている電気の中の、再エネシェアは高まります。みなさん一人ひとりの選択肢が、温暖化の原因といわれるCO2を排出するような発電方法を減らして、再エネ発電所を増やすことに繋がるんです。
かつて原宿、表参道、青山、代官山といった場所のブランドサロンは、経験を積んだ人だけがお店に立ち、他では絶対かなわないような技術を提供していました。けれどSNSが普及してどんな美容師でもセルフプロモーションできるようになった影響か、今はそのエリアでも必ずしも全員が上手いというわけではなくなってきた。場所のブランド価値が変化してきました。
また、僕はもともとブランドサロンで働き、そのあと1年間はフリーランスの美容師として原宿のシェアサロンに立っていましたが、たった1年でフリーランスが急激に増えました。旧体質のブランドサロンは一部が富を独占するような構造なので、この現象は当然なんです。
ただ、あまりにもフリーランスが増えてきて、働き方の選択肢が増えたことはいいことだと思いますが、同じことをするのもつまらなくなり店を持つことを決めました。
場所は自分の地元と東京の間くらいがよくて、小田急沿線でいろいろ調べました。ちょうど向ケ丘遊園が再開発されることを知り、将来的な発展を見込んでここに決めました。
あとは自分のまわりの人と一緒にnariiをつくりたくて建築デザイン、照明、ホームページ、ロゴ、看板はぜんぶ知人にお願いしました。今、Tシャツもお客さまに作ってもらっています。nariiは人の繋がりでできていて、ここからまた別の繋がりが広がっていくといいなと思っています。
プライシングは、向ヶ丘遊園ってカット4,000円くらいなんですけど、同じ金額で埋もれないようにあえて高い価格を設定しました。「価格に見合ったいい技術をお客さまに届けなければ」という、自分へのプレッシャーの意味もあります。もちろん届けられるという自負はあります。
また、不特定多数の方に来ていただいて、店とお客さまがアンマッチになるとお互いに不幸なので、ビューティーサイトには掲載していません。店の前に出している看板やホームページ、インスタグラムを見て、下調べして「nariiがいい」と選んで来ていただきたいと思っています。
おかげて新規のお客さまは、「中学生以来はじめて地元で切ろうと思った」とか、「子育てが始まって都心まで出るのが大変だけど、あのクオリティが欲しい」とか、「ホームページのプロフィールを見て『ここしかない』と思った」という方がいらっしゃいます。
上原 卓也
nariiオーナー/ディレクター。1988年生まれ、神奈川県相模原市出身。住田美容専門学校卒業後、代官山RITZを経て、フリーランスとして独立し原宿GO TODAY SHAiRE SALONでマネージャーを務める。令和元年7月4日、向ケ丘遊園にnariiをオープン。現在は毎週水曜にGO TODAYに立ちつつ、木〜月曜はnariiでサロンワークを行う。
ENECT、次回は新記事公開。スイスの老舗時計ブランド「ORIS」が店舗をビルごと再エネに切り替えた背景に迫ります