【特別寄稿】narii|あえて都心から離れて勝負する美容室
読みもの|11.5 Tue

IMG_8464

  新宿から小田急線で20分の向ヶ丘遊園駅。北口から徒歩1分の場所に7月4日、「narii」という美容室がオープンしました。この美容室では8月から、みんな電力の「スタンダードプラン」をご利用いただいています。電力会社の切り替えは、オーナーの上原卓也さんにとって初めての対応。率直な感想をお伺いしてきました。

IMG_7725

ーみんな電力への切り替えはどうでしたか?
上原 うちの美容室はもともと、従量電灯Cと低圧、2つの契約をしていましたが、どちらもみんな電力のスタンダードプランに替えると安くなるというシミュレーション結果だったので、「替えない理由はないな」と思いました。ただ、自宅は高くなるようでした。電気の使用量が少ないと割高になるんですよね。

 登録手続きに関しては、一契約ごとにメールアドレスが必要なところが面倒でした。あと、僕は個人事業主なので、明細は紙のものがあると便利です。マイページの明細画面を印刷すればいいんですけどね。

 でも、メールに検針票を添付するだけで申し込みが完了したので、それは簡単でした。申し込みして、クレジットカードの登録さえすれば、あとは何もしなくても勝手に電力会社が切り替わっているんですよね。発電所の応援先は、奥さんの実家の長崎にしようかな。

(*nariiはオーナー名義の個人契約で、みんな電力をご利用いただいています)

ーそうですね。今後はクレジットカードの引き落としがあるだけです。マイページにログインすると、明細だけではなく30分ごとの電気の使用量もわかるので、ぜひ見てみてください。一つのメールアドレスで複数の契約ができるようにしたり、マイページの明細を印刷しやすくする改善は、社内で検討させていただきます。

IMG_8492

上原 ぜひお願いします。ところで、僕は電気のことを全然知らないので、もう少し教えていただけますか。その方がお客さまや知人にも紹介できるので。
ーありがとうございます。電気は、火力発電だろうが太陽光発電だろうが、どこの発電所でつくられても一つにまとまって、混ざって、電線を通じてみなさんのところに届きます。電力会社(小売業者)を変更しても工事が不要なのは、従来のインフラをそのまま使っているからなんですね。送配電インフラは、東京電力でも、みんな電力でも、どこと契約していても同じ業者がメンテナンスを請け負っています。だから停電のリスクが変化することもありません。

 では、なぜ切り替えることで「再生可能エネルギーを使用している」と言えるのかというと、まずみんな電力が仕入れている電力が、FIT電気・再生可能エネルギー(以下、再エネ)75%以上であり、プレミアム100プランでは「非化石証書」というもので再エネ100%を証明しているからです。

上原 そういうことなんですね。なんとなくわかってきました。
ー「なんだ、家に届いている電気が再エネ発電所で作られたものというわけじゃないのか」と思うかも知れませんが、再エネ発電所から自宅までそのまま電気を送るためには、専用の電線が必要になります。それは現実的ではないですよね。

 でも、再エネを選択する人が増えれば、その需要の高まりに比例して、再エネ発電所が増えます。そうすれば、混ざっている電気の中の、再エネシェアは高まります。みなさん一人ひとりの選択肢が、温暖化の原因といわれるCO2を排出するような発電方法を減らして、再エネ発電所を増やすことに繋がるんです。

上原 なるほど、よくわかりました。僕のまわりの友人も、30代前半になって子供ができて、食べものや着るもの、子供の将来のこととか、色々考えるようになった人が増えてきました。それに、同じ個人事業主で電気をたくさん使う人がいます。そういう人たちに、みんな電力を紹介できたらと思います。

IMG_8467

ーありがとうございます。nariiが色々と調べたお客さまに選ばれているように、みんな電力も選ばれたら嬉しいです。話は変わりますがnariiのことも少しお伺いしてもいいですか?
上原 どうぞ聞いてください。
ー向ヶ丘遊園って、都心から離れているし、ちょっと言いにくいけど「おしゃれな街」というイメージがあまりないですが、なぜここにサロンを出そうと思ったのでしょうか。
上原 場所にとらわれず、自分の技術で勝負したいと思ったことがきっかけです。あとはお客さまに、都心を離れてのんびりして欲しいという想いもありました。

 かつて原宿、表参道、青山、代官山といった場所のブランドサロンは、経験を積んだ人だけがお店に立ち、他では絶対かなわないような技術を提供していました。けれどSNSが普及してどんな美容師でもセルフプロモーションできるようになった影響か、今はそのエリアでも必ずしも全員が上手いというわけではなくなってきた。場所のブランド価値が変化してきました。

 また、僕はもともとブランドサロンで働き、そのあと1年間はフリーランスの美容師として原宿のシェアサロンに立っていましたが、たった1年でフリーランスが急激に増えました。旧体質のブランドサロンは一部が富を独占するような構造なので、この現象は当然なんです。

ー一部が富を独占するというのは、電力業界も同じだと思います。2016年の小売自由化で変わってきてはいますが。
上原 どの業界も似ていますよね。アパレルや建築業界もこの流れだと思います。フリーランスの彼らと働くことで、美容の本当の価値はなんだろうと考えるようになり、「場所のブランド力ではない」と思うようになりました。

 ただ、あまりにもフリーランスが増えてきて、働き方の選択肢が増えたことはいいことだと思いますが、同じことをするのもつまらなくなり店を持つことを決めました。

 場所は自分の地元と東京の間くらいがよくて、小田急沿線でいろいろ調べました。ちょうど向ケ丘遊園が再開発されることを知り、将来的な発展を見込んでここに決めました。

ーその読みどおり、ここ最近はおしゃれなお店が遊園に急増していますね。このサロンもいい意味で遊園ぽくないです。インテリアもプライシングも。それぞれの狙いを教えてください。
上原 居心地のいい空間にするためにゆったりできるスペースを確保するのはもちろん、美容室にこだわらず人を集める空間にしたくて、鏡や椅子、シャンプー台、造作の家具まで、すべて移動式にしています。フリマやポップアップストア、パーティーなんかでも使えたらいいなと。

 あとは自分のまわりの人と一緒にnariiをつくりたくて建築デザイン、照明、ホームページ、ロゴ、看板はぜんぶ知人にお願いしました。今、Tシャツもお客さまに作ってもらっています。nariiは人の繋がりでできていて、ここからまた別の繋がりが広がっていくといいなと思っています。

 プライシングは、向ヶ丘遊園ってカット4,000円くらいなんですけど、同じ金額で埋もれないようにあえて高い価格を設定しました。「価格に見合ったいい技術をお客さまに届けなければ」という、自分へのプレッシャーの意味もあります。もちろん届けられるという自負はあります。

 また、不特定多数の方に来ていただいて、店とお客さまがアンマッチになるとお互いに不幸なので、ビューティーサイトには掲載していません。店の前に出している看板やホームページ、インスタグラムを見て、下調べして「nariiがいい」と選んで来ていただきたいと思っています。

 おかげて新規のお客さまは、「中学生以来はじめて地元で切ろうと思った」とか、「子育てが始まって都心まで出るのが大変だけど、あのクオリティが欲しい」とか、「ホームページのプロフィールを見て『ここしかない』と思った」という方がいらっしゃいます。

IMG_8456

ー上原さんのお話を聞いていて、旧体質にとらわれないとか、選択肢が増えたとか、価格競争に参加しないとか、顔の見える人と仕事をするとか、人の繋がりを大切にするとか、実はみんな電力との共通点が多いなと感じました。よいお話しを聞かせていただき、ありがとうございました。これからもみんな電力をよろしくお願いいたします。
IMG_7727

上原 卓也

nariiオーナー/ディレクター。1988年生まれ、神奈川県相模原市出身。住田美容専門学校卒業後、代官山RITZを経て、フリーランスとして独立し原宿GO TODAY SHAiRE SALONでマネージャーを務める。令和元年7月4日、向ケ丘遊園にnariiをオープン。現在は毎週水曜にGO TODAYに立ちつつ、木〜月曜はnariiでサロンワークを行う。

ENECT、次回は新記事公開。スイスの老舗時計ブランド「ORIS」が店舗をビルごと再エネに切り替えた背景に迫ります

 

(取材・文:髙橋智里)
2019.09.08 Sun.
SHARE: LINE Facebook
URL
URLをコピーしました