【特別寄稿】みんな電力・西田滋彦「石川啄木と姫神ウィンドパーク」
(石川啄木 「一握の砂」より引用)
(石川啄木 「一握の砂」より引用)
国語の教科書などで一度は目にしたり、耳にしたことがある人もいるだろう。
社会人としての洗礼を浴び、荒んだ心の隙間を埋めるが如く詩を朗読していた時期があった。時代を経て語り継がれる詩は、後世に生きる人々に生きるエネルギーを与えてくれる。
啄木の父親がこちらの常光寺の住職であり、一年間をここで暮らした。
常光寺では、石川啄木の生涯の友であった金田一京助が揮毫した啄木の「生誕の地」碑を見ることができる。
「姫神ウィンドパーク」である。
白い雲、白い雪、そして白い風車が目を楽しませてくれる。
どうやら盛岡の青空は人の心をひきつける引力を持っているらしい。
(石川啄木 「一握の砂」より引用)
過去何百年もの間、東北地方の人々の暮らしを悩ませてきたであろう風を、エコ・パワー株式会社は風力発電所を建設することで価値化することに成功した。そして、自然がもたらす風の恵みを最大限に価値化するために風車を山の麓に建設する。
当然のことながら、この目の前の風車は、空から突然降ってきたのではない。地上から山の麓まで、人間が風車を運ぶのだ。時には風車を運ぶため、そこになかった道路をつくる工事までもが伴うことになる。
地上よりも山頂の方が風の恩恵を受けられることは直感的に理解できる。ただ、それにとどまらず、姫神ウィンドパークは「ダウンウィンド型」と呼ばれる風車を採用している。これは、地面から吹き上がる風を効率よく受けて回る国内の独自技術の強みを活かした風車だ。山の多い日本の地形にはこの型が適しているらしい。
この事実に驚くのは私だけではないだろう。
エコ・パワーの営業担当者からの説明を聞きつつ、私のこれまでの人生の順風、逆風に想いを馳せる。
まさに風任せな人生に意味を持たせようとするのが人間の営みなのかもしれない。
誰もがこの風車を間近に見た時、その迫力に圧倒されるだろう。
外観は直感的に価値を理解できる。
それは風力発電所でも人の容姿でも変わらない。
私は幸運にも風力発電所の内面を目にする機会を得た。姫神ウィンドパークの定期点検の現場に立ち会うことができたのだ。
この問いを発することができる人は、人生で素敵な人と巡り合うことができるかもしれない。
外観(容姿)は、風力発電所や人間の一面を見たに過ぎない。
何度も何度も安全確認をした後、昇降機で作業員は上昇していく。
みんな電力は「顔の見えるでんき」をコンセプトに事業を展開している。
私が姫神ウィンドパークで出会った顔とは、文字通り命懸けで電力のメンテナンス業務を行う作業員の必死な形相だった。
当該発電所は、平成25年11月に成立した「農産漁村再生可能エネルギー法」の理念を実現すべく、再生可能エネルギーの促進が地域の活性化と地域の農林漁業の健全な発展を図り、発電所地域への資金循環の役目も担う。
地域の一部の関係者に資金が循環するだけではなく、姫神ウィンドパークの近隣住人の一人でも多くの方が風力発電所の恩恵を体感してもらえるかが問われている。みんな電力がその一翼を担うことができれば幸いだ。
石川啄木の詩は、悲嘆にくれた人々に生きるエネルギーを供給し続ける。
どちらも持続可能なエネルギーだ。
発電所までのアクセス道路として一ノ瀬岩洞湖線が整備されており、同線途中の天望山からは、盛岡市内・岩手山が一望できる
西田滋彦 みんな電力 事業本部 パワーイノベーション部
1980年千葉県柏市生まれ。立教大学社会学部でイノベーションを専攻。四輪車メーカーで「走る茶室」をコンセプトにした商品企画に携わりたいとの思いから入社。京都への出向を志願し実現するものの、いつの間にか営業ノルマに対する精神の摩耗を癒す神社仏閣巡りに終始することになる。その後、大阪ガスグループのマーケティング会社で「新市場創造型商品コンセプト」に触れる。外資系パネルメーカーでは創業1年目より8年間国内の再生可能エネルギーの拡大に努める。
再生可能エネルギーの恩恵をより多くの関係者が享受する仕組みの構築を目指し、みんな電力株式会社に転職。イノベーションの実現こそが最大の社会貢献という信念の元、再エネ発電所の電力を中心とした価値の仕入れ、および新たな概念の価値創出の実現に取り組んでいる。
ENECT、次回は新記事公開。日本が誇るESG投資のスペシャリストによる世界、日本のエネルギーの”今”をお伝えします