企業の脱炭素戦略をタドル!~RE100ってなんだ?~
学生の皆さん、将来自分が働く企業をどのように選んでいますか?
年収やブランド、転勤の有無、風通しの良さ等々、基準は人それぞれです。
私は、企業の「環境ビジネス」を軸に企業を選んでいます。
なぜ「環境ビジネス」を軸にしようと考えたのか。
私は、企業が持続可能な社会に向けて積極的に環境ビジネスを行うことで、その企業のさらなる成長と発展につながると考えています。
そのため、先を見越して行動に移している企業で、高まるニーズに答えられる人材になりたいからです。
2020年10月、菅元首相は所信表明演説で、日本は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると宣言しました。
企業はこれまで以上に、早急に目標を定め、行動に移していくことが求められるようになりました。
数ある気候変動対策の取り組みの中で、皆さんはRE100という言葉を知っていますか?
「RE100ってなんだ?」「どんな企業が参加していて、どんな効果があるのだろう?」
そんな疑問から、環境ビジネスが進んでいる企業をタドリます。
目次
RE100って?
そもそも「RE100」ってなんでしょうか?
聞いたことがない方は多いかもしれません。
「RE100」とは、脱炭素社会への移行を目的として、国際環境NGOのThe Climate Groupが2014年に開始した、企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的企業連合です。世界ではアップルやアマゾンをはじめとして、329社が加盟しており、日本ではリコーや日清食品、丸井グループなど60社が加盟しています(2021年9月14日現在)。
「RE100」に加盟し適切な企業活動を行うことによるメリットは、一般に次のようなものがあげられます。
・企業価値を高める
・機関投資家からの投融資を受けやすくなる
日本で、最初に「RE100」に加盟した企業が「株式会社リコー」(以下、リコー)です(2017年4月)。
リコーってどんな会社?
リコーはどのような企業なのでしょうか?
リコーは、お客様のデジタル変革を支援し、そのビジネスを成功に導くデジタルサービス、印刷および画像ソリューションなどを世界約200の国と地域で提供しています。1936年の創業以来、変わりゆくお客様の“はたらく”に変わらずに寄り添い続けている会社です。また、環境保全と利益創出を同軸にとらえる環境経営に早くから取り組むなど、持続可能な社会を目指し活動しています。
リコーが取り組むRE100
現在のリコーのRE100の取り組み
それでは、「RE100」に加盟しているリコーはどのような脱炭素実現への取り組みをしているのでしょうか。
リコーの取り組みは大きく2つに分けることができます。それは、再生可能エネルギーの積極的な利用と徹底的な省エネです。
再生可能エネルギーの積極的な利用
● 太陽光パネル設置による自社発電、PPA契約
● 再エネ電力の購入
● 再エネ証書の購入
徹底的な省エネCO₂削減活動の展開
● 生産・業務のプロセス改善
● 高効率な省エネ設備の導入
● 社屋のZEB(Net Zero Energy Building)化
● 社有車の低燃費車・EV車への切り替え
以上の主な取り組みにより、2050年には事業活動で使う電気を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指しています。
今度は、これまでに見てきたリコーの取り組みがどのような数値として表れているのか、見ていきます。
下の表は2020年までのリコーのGHG排出量及び電力の再エネ率の推移を示したものです。
上の表から、温室効果ガスを2015年に比べ36.5%も削減していることがわかります。また、使用電力における再生可能エネルギーの割合も2.9%から17.6%に伸びていることがわかります。
リコーがRE100に取り組む目的
リコーがRE100に加盟して、積極的に脱炭素社会実現に取り組むのはなぜでしょうか。その理由は大きく4つあります。
- 再エネの積極活用の企業姿勢をグローバルに明示し、社内の意識づけを図る。
- 推進中の省エネ、創エネなどエネルギー関連ビジネス展開の後押しを図る。
- ESG投資、各種企業評価制度における評価向上に繋げる。
- 電力需要家の立場から再エネの必要性を意思表示、供給側の変革を促す。
引用:リコーESG戦略部にヒアリング
以上の理由から、リコーは自社の企業価値向上、革新的な技術の創出や新事業の展開、意識改革を求めていることがわかります。
まだまだ再エネの必要性や重要性が認知されていない中、このようなリコーの取り組みや行動が、日本において非常に大きな意味を持ちます。なぜなら、他社や消費者が再エネの必要性や重要性を知り、再エネの普及活動や環境教育など具体的な行動に移すきっかけになるからです。
これからの課題
これまでリコーの先進的な取り組みの内実を見てきました。企業のバリューチェーン全体が、それぞれの過程で、「脱炭素」や「RE100」を達成するのは厳しい道のりです。そんな中、リコーが抱く未来のビジョンとそれに対する課題はどのようなものでしょうか?
2020年の統合報告書から、2030年と2050年の環境目標を見てみましょう。
【2030年目標】(いずれも2015年度比)
● GHGスコープ1・スコープ2排出量:63%削減
● GHGスコープ3 排出量:40%削減
● 事業に必要な電力を50%再生可能エネルギーに切り替える
【2050年目標】
● バリューチェーン全体のGHG排出ゼロを目指す
● 事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーに切り替える
2030年までに早急に求められるのは、目標とする数値まで、GHG排出量を削減するという量的な対策です。これは、前章で述べた取り組みを拡大していくことで達成に近づくことができると考えています。
しかし、2050年目標のバリューチェーン全体でのGHG排出量をゼロにするには、自社以外に対する、より積極的なアプローチが求められます。たとえリコーがGHG排出ゼロを達成したとしても、リコーに部品等を納入する外部のサプライヤー企業が大量にGHG排出をしていたら意味がありません。
いかに外部の企業に対して「GHG排出をゼロにしましょう」と訴えかけ、変化させていくのかが、リコーの課題と言えるのではないでしょうか。
また、事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーに切り替えるには、2050年目標までの量的な対策を講じるために、革新的技術の創出や経営内容の見直しなど、質的な部分での改革が求められてくると考えます。
まとめ
今回は気候変動に関して「RE100」と最初に加盟した「リコー」の取り組みについてタドリました。
先進的に環境課題に取り組む企業の姿をとらえることが、就活を控えている学生にとっては企業の知らなかった一面を知り、企業を選ぶ際の重要なファクターになるかもしれません。また、私たち消費者にとっては、投資や商品の購入の際に、「自分が使ったお金はどうなっているの?どういう意味があるの?」と考えるきっかけになると信じています。
参考URL:
RE100について
RE100 日本企業最新リスト 56社 [2021.7.5改]・脱炭素社会への期待|コラム|メンバーズ
環境省RE100の取組
RE100
日本企業で初の「RE100」加盟、リコーはなぜ再エネ100%を目指すのか
RE100目標達成に向けて生産拠点における再生可能エネルギー由来電力の活用拡大 | リコー
再生可能エネルギー使用率の2030年度目標を50%に引き上げ | リコーグループ 企業・IR | リコー
「リコーグループ統合報告書2021」、「リコーグループESGデータブック2021」、および「リコーグループTCFDレポート2021」を発行 | リコーグループ 企業・IR