【第3回】rimOnO(リモノ)|日本だからこその電気自動車
読みもの|6.12 Mon

  実は我々一人一人のやる気、本気が試されている、日本だからこその電気自動車「rimOnO(リモノ)」。確かに人口減少、高齢化、地域の過疎化などなど、私たちが抱えている問題は大きいし、まだ誰も明確な答えを出せないでいる。
 エネルギーや車という、私たちの生活に身近なものを基点にして、そもそもの「生活スタイル」を提案する。そして生活の基盤ができてきた時、私たちは、私たちがすでに持っているものを活用して、世界の生活を暖かく進歩させるイノベーションを生み出すことができるのかもしれない。
 記念すべき「Lab.」カテゴリー初めての記事。
 最終回、是非お楽しみください。

 

rimono

左から代表の伊藤慎介氏、取締役の奥村康之氏、クリエイティブディレクターの根津孝太氏

ー伊藤さんの仰る「我々」とは、どこまでが入りますか?
伊藤 rimOnOに関わっているメンバーです。会社自体は私とデザイナー、エンジニアの3人ですが、それ以外にも開発パートナーという形で三井化学さん、帝人フロンティアさん、Rolandさん、他にも東海地方にあるBクラフトさんなど何社かものづくりの面で関わっていただいている会社があります。別の形ですが、今回ではパルコさんも仲間になっていただいていますが、そういった輪をどんどん広げていきたいと思っています。

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 我々のプロジェクトに関心を持ってくださっている方に自動車関係の人たちもいます。例えば自動車の整備をやっていらっしゃる方がそうです。調布PARCOに展示している時に、たまたま自転車で通りかかった自動車整備会社の社長さんが立ち止まって下さりました。最初は通り過ぎそうになったようですが、実はおもちゃではなくて、本当に動いて真面目につくっている車なのかどうかを確認したかったとおっしゃっていました。
 なぜ自動車整備関係の方に関心を持っていただけるかというと、自動ブレーキやハイブリッド自動車などが増えてきて乗用車がどんどん複雑になっていく結果、地元の整備会社ではなかなか修理できないものが増えてきて彼らの仕事がどんどん減っているそうなんです。自分たちが修理することが出来て、お客さんに売ることができて、かつアフターサービスなり何らかのオプション提供などができる乗り物を探しているそうです。そういう方々は、我々にとっては将来一緒に組んでいける可能性のあるパートナーです。ただ、モノが出来上がらないことには組むこともできないので、将来的な可能性も含めてクラウンドファンディングでご協力いただけるとありたがいなあと思っています。
ー音の部分はRolandさんということで、それこそ『PPAP』の世界的ヒットはRolandの音質に依るところが大きかったということが話題になりました。その部分でも可能性が広がるような気がします。
伊藤 Rolandさんとはこの車に走行音を付けようという話をしているんです。電気自動車や燃料電池自動車などの静か過ぎる車は生活道路などで歩行者に知らないうちに近づいてくるので怖いと思われることから、であれば「走る時に着メロを付けたらどうか?」という発想です。Rolandさんが長年培った電子楽器のノウハウを活かして進めようとされていることなんです。rimOnOとしても携帯の着メロのようにいろんな音色を楽しめるようになると新しい価値の提案になると思っています。
 Rolandさんの件もそうですが、我々のプロジェクトの面白さは三井化学さん、帝人フロンティアさんなど異なる業界に属する会社が並んで一緒に車づくりに挑戦しているということです。化学素材の会社、繊維素材の会社、楽器メーカーが一緒に取り組めるような環境は世界中を見てもなかなかありません。しかもそれぞれの会社が世界的に有名な会社ですから。

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 実は、私たち日本人は素晴らしい技術や材料などを生み出している国にいるんです。それにも関わらず、「どうしてイノベーションをもっと起こせていないのか?」、「なぜAppleやTESLAみたいなワクワクするプロダクトを生み出せないのか?」という悩みを抱えている企業は数多くいると思います。今回、自らプロダクトに取り組むことで、日本という国の持つ潜在能力を感じられる一方で、なかなか実際のアウトプットにつながっていないという残念な実態も感じています。
ー伊藤さんが世に提案されたいことにはたくさんの側面があり、それを伝えるフィルター、ハブとしてリモノがあるように思えます。
伊藤 エネルギー事業に取り組まれている皆さまもそうですが、最終的には「どういう生活スタイルを提案していくか」というところまで戻ってプロダクトやサービスを考えていく必要があります。電力事業についても、コンセントから供給されている電気が原子力由来なのか太陽光由来なのかというだけではお客様に対しての訴求力が十分ではないように思うんです。
 電力の自由化が始まりましたが、現状ではどちらかというと価格の勝負になってしまっています。でもそれだけでは消耗戦にしかならない。どういう生活スタイルを選んでいくのかという全体のコンセプトと合わせてエネルギーについても提案していかないといけなくて、その一つのきっかけとして我々が提案するような乗り物も取り込んでいただいたり、「乗り物のあり方からエネルギーを考えていく」ということを一緒に検討できれば、お客様には自分たちの生活に近い話だと思って頂ける可能性があると思っているんです。

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ーそして、その必要性が確かにある。
伊藤 rimOnOのような電気自動車は新しい生活スタイルの提案力にもなると思っています。
 rimOnOは騒音も排ガスも熱も出ないので室内にも置けます。それこそ京都の町屋みたいな狭い長屋的なところでも、土間に停めることができます。日本の住居の多くは狭いにもかかわらず、今まではガレージのために大きな空間を取っていましたが、車が小さくなり生活空間の一部を駐車場所として活用することで、実際に利用できる生活空間を広くとることが出来るわけです。また、外を走るときはスピードを出すことなく近所をまわる乗り物ですし、バイクのような操作方法なので最近の高齢ドライバーによる踏み間違え事故のような問題にも一定の解決策を提示することができると思っています。このような生活空間の利用方法や地域交通のあり方なども、これからの地域社会を考えていく上での重要なテーマだと思っています。
ーパルコさんは、このあたりについても共感されている?
パルコ 私たちはプラットフォーマーなので、当然すべてのクラウンドファンディングに対して平等でないといけないんですが(笑)、勝手に肩入れさせていただいている背景として、企業理念が合致するということがあります。PARCOにとっては「インキュベーション」と「地域との共生」、そして「情報発信」といったことが大切です。引き続き試作車をPARCO8店舗で展示いただくし、実はその先も見据えた中で、近い将来公道走行車ができた暁には、我々も実際にPARCOのある地域周辺の住民におすすめしたいと思っています。
 先日のひばりヶ丘では地域の方々から熱い意見があったと伺っています。あの周辺は踏切もあり、道が細い。そういったところにも、ソリューション型の問題解決として繋がっていくんじゃないかと考えています。
ー日本から、地域に還元できる車、エネルギーのイノベーションがもっと出てくればと思います。
伊藤 TESLAも元はベンチャー企業ですが、「アメリカではどうして起業してベンチャー企業を立ち上げる人が多いのか?」ということが良く話題になりますが、ある知り合いが言っていた言葉が非常に印象的でした。「実はアメリカ人は起業したいわけではないんです」と言うので、それはどういうことかと尋ねたら、「実はCEOという職種が特別だと思っているんですよ」と言われたんです。アメリカでは、CEOとして一つの会社を経営することがすごく大変なことだと受け止められています。自分も会社をやり始めてから分かるようになりましたが、様々な不安定要素がある中で収益を上げながら会社を前に進めていくことは大きな会社であろうと小さな会社であろうと大変だと思います。「大きい船も小さなボートも船頭は大変だ」ということですね。アメリカでは、その大変さが社会全体で理解されているから優秀な人たちは経営の道に進もうとするのだと思います。

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 それに対して、残念ながら日本はそういう社会ではないんです。大きな会社に入った人は少しでも高いポジションに行こうと階段を上がろうとしますが、では、一番上の段まで上がって最終的に社長になったとしても、その段階でしっかりと経営ができるスキルが身についているかというと、そうでない会社が多いように思います。多くの場合、財務的な数字や取引関係などの呪縛にとらわれてしまい、なかなか新しいチャレンジに取り組めない経営者が多いように感じます。そういう風土のせいで日本にはシーズとして面白いものがいっぱいあるにも関わらず、アウトプットの部分で海外にやられているように思います。
 日本でもベンチャー企業としてチャレンジをする人がもっと増えてくればいいなと思っています。トヨタ自動車の若手社員が空飛ぶクルマをやろうとしているように、「若い人が新しいことにどんどんチャレンジしたいと思える世の中」にしていきたいですね。

 

(取材:平井有太)
2017.05.23 tue.

 

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