【第3回】“土から力を引き出す”デザイナー・梅原真 「地域の力はどこ?デザイン的思考の源流を辿る」|ENECT プラチナム連載 Vol.6
福島では現場で考え、実際に動いている方々、今回の場合は果樹王国・福島の未来を担う果樹農家が、道なき道を切り拓いてきました。
そして、それに呼応し「デザイン的思考」をフル稼動、復興に向けた努力の結晶を全国に届ける協同に手を挙げた、梅原真さん。
幼少期に、きれいな鏡川で泳いで見つけられたという小宇宙。
それは足下を見直せばどの地域にもあり、それらはそのまま、その土地土地の力であるはずです。
「葡萄採れへんもん」、「美味しいワインができないじゃん」みたいな、それくらい合併しない理由というか、そういう規模で、みんな自分の土地に魅力を感じてるわけですね。
日本はちゃいますね。
合併も含めてそこもまたシステムで、それが余計に個性をスポイルさせ平均化させてることが、全国をフラット化させていく。
そこに、「高知は違うぜよ」と言いたい感じを、僕は持ってるわけですね。それにしたってここ10、20年はフラット化してる。大手代理店がきて、「広告してあげましょう」、「ええ、ウチも?」って(笑)。僕は「ちゃうな」と思って、でも政治家ではないので、そことは関係なしに自分の活動をしています。
「自分の土地に愛着を持つ」について、「なぜ持たないんだろう?」という質問に、オレはあまり答えを持ってないね。だって、小学校4年から土地に愛着を持っていたためにこうなってるから(笑)。「なんで持たないんか、わからない」という感じですね。
それは、「何を中心に物事を考えるか」。
それで遠くを見つめて、「あそこに行きたい」と。だいぶ遠くに行きたいところがあり、目線が遠くを見ている。
「あそこへ行きたいから、ここを歩いたらあそこへ行けるんだ」。「だから、あそこに行こう」みたいな情緒があるんだけど、その時に安倍総理の、国連に行って「エコノミック、エコノミック、アーンド、エコノミック」というやつを見た時に、「こいつ、全然空気読めへんな」と思ったのね。つまり、あれが何を言ってるかというと、「ここ見ておけよ」ということで、先を見てへんのです。
日本はエコノミックできたじゃないですか。座標軸が経済です。経済、経済、経済できて、パッと顔を上げたら「ここどこ?」みたいな、今はそういう世界。
本当は遠くに目線を置いて、「あそこに行こうね、日本は」と。常に、「あそこだよ」と言ってそこに向かって行けるはずが、エコノミックばかりでずっときて、しまいには「え、どこ行ってるの?」と。僕は、ビジュアル的に言えば、そういう気がしてる。
そこで言う「距離」は、本質ですよね。遠くを見据えて、そこに向かって歩いて行くことができなくて、みんなの中には「経済の座標軸」しかないんじゃないですか。
足下の経済を今日のテーマにしながらずっと歩いてきたから、見えなくなっちゃう。そこを「コツは?」と言われたら、「遠くを見つめろ」ということになりますね。
だから今日の会も、笑いがあるようにどっかで設定した方がええんちゃうかと。それは講演会のタイトルだけでもよくって、そこって普段からのトレーニングじゃないですか。
普段物を売って行く時に、そもそもなんでコミュニケーションするか。
「おまえなあ」って怒ってもコミュニケーション。泣かしても、笑わしてもコミュニケーション。それは全部コミュニケーションで、何にも表情が動かんのはコミュニケーションじゃない。
だから「笑う、泣く、怒る」のどれかやらなあかんのなら「ほな、笑わしたら一番ええやないか」と。
それは相手がそれを受け取ったということ。顔の筋肉が動いたってことは、脳神経が言葉を聞いて、筋肉を動かしたってこと。「相手の笑いの筋肉を動かす」って、それは大きいことです。
それこそが「伝達すること」でしょう?
「福島の売り」をね、自分たちをあまり誉め過ぎないで、むしろ笑いの中に飛び込んでしまうような感覚がなくて、ここで、「うつくしまふくしま」みたいの思い出しました。だから「そりゃないやろ、あんたら」って、反感持っちゃうわけ(笑)。
「ENECT」プレミアム・インタビューに、最初に登場いただいたホセ・ムヒカさんに最後伺った質問は、「贅沢とは?」。そして意図せず、梅原真さんインタビューの最後、自然と口から出た質問は、「豊かさとは?」でした。
大都会の暮らしから地方に目を向け、農業=第一次産業に関わる方から伺う話と、世界の注目を集めるリーダーから伺う話に共通項があることは、偶然ではありません。
まったくエネルギー無しで暮らせる存在は稀。そして、最先端技術を駆使する巨大企業しかできないと思っていた発電を突き詰めると、またそこで第一次産業=農業との共通項が見えてくる。
その「共通項」部分に、新たな社会のヒントがある気がしています。