【最終回】文化の力を再生させる|NAZWA!(Watusi+Naz Chris)
読みもの|11.24 Tue

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  そもそもNAZWA!が走らせていた「TDMW(TOKYO DANCE MUSIC WEEK)2020」があり、そこにコロナ禍が重なり、いとうせいこう氏が立ち上げ、牽引した自律分散型配信フェス「#MDL=MUSIC DON’T LOCKDOWN!」があって、充分希望はあった。
 最終的に、音楽好きには説明不要なJ-WAVE(81.3FM)、S/U/P/E/R DOMMUNE、Roland、Pionner DJといった名前が配信プラットフォームや協賛企業として並び、そこにみんな電力が加わったことで新しさもあった。そして9/13(日)、大団円の会場となった東京タワーの電気が再生可能エネルギーで光る中、ただでさえ豪華な出演者に、盟友Chieko Beautyさんと共に、小泉今日子さんがいた。
 そのことを、Watusi氏は「彼女は80年代後半から90年代の頭にかけて、僕らのところに降りてきてくれた。必要もなかっただろうに、旺盛な音楽的好奇心でサブカルなところにきてくれて、本気で真っ向から渡り合って作品をつくってくれて」と回想し、Nazさんは「最大級の感謝とリスペクトを、間違いなく伝えてください。MCでダンスミュージックへの敬意についても語ってくださって、時にはそういう経験を隠す人もいる中、素晴らしかったです」と話した。
 どこに希望が生まれ、何がどのように新しく、それらがどう未来に繋がっていくか、ぜひお読みください。

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Watusi(以下、W) テレビに出られなくなると困るようなバンドは「ロックやるな」と思うんですが、もっと極端な例まで言うと、出られないフェスまであったり、ある意味「NO NUKES」自体が業界のつまはじきにされるような、「そんなことになってるんだ」ってびっくりしちゃって。
 「え、みんな逆だったんじゃないの?」という気持ち、発想で、それを思い出させてくれたのが3.11なんだから、「生き方いろいろ少しずつ改めたんじゃないの?」と思っていたんです。ところがあっという間に経済優先思考にコロッと戻っていて、もちろんこれは国とかアメリカとか、すべての地球的規模の国策が人間を動かしてはいるんですが、ショックを受けました。
 その中で出会ったのが、この再生可能エネルギーでした。
 しかもあの、大石さんの本当のポジティブさには素直に「気持ちいいな!」と思って。電気のこととそれについて話す大石さんは単純に、本当にシンプルに、そう言える存在でした。
ーコンセントの向こう側に想いを馳せて欲しい。
W 「そうだよね!」ってみんなで言って。
 教授の企画でまず出会って、MDLでより近くなって、何というか思し召しみたいなことを感じました。そして東京タワーがあって、Nazがグイグイ近づいていく、それは必然的な偶然を感じました。

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S/U/P/E/R DOMMUNEと連動したTDMWの9/11(金)、議員の方々とSaveOurSpaceスガナミユウ氏、いとうせいこう氏と共に熱く議論したみんでん・大石代表

Naz Chris(以下、N) 「顔が見える電気」、「選べる」というのはキーワードだと思っていて。
 海外だとビリー・アイリッシュや大坂なおみちゃん、アリシア・Keysやレディー・ガガも、アーティストは普通に声を出して、政治発言やBLMのことを言うじゃないですか。私はもっと、前に出る職業の人たちには「選ぶ選択肢」について、「実践してくれたらいいのに」って思っています。
 何かしら「決まっちゃっている」のが私は嫌で、そこに大きな力が賛同してしまうと、例えば「どこどこ支持者じゃないとダメ」とか「どこの電気を使ってないとダメ」みたいな、アーティストはもっとそういうことから離れて、もっと「自分の生き方を選べばいい」と思うんです。
 それを、大石さんみたいに受け入れてくれる「それいいから、やろう」みたいな。「うん、電気?東京タワー?もしかして、東京タワーならやる気ある?」って声かけたら、「東京タワーか!ヤバいな!」。それもNO REASONみたいな、そうやって自分たちが選んだ生き方を受け止めてくれる器の広い人がいて、「企業の人でもわかってくれるんだ」というのは、間違いなく勇気になるわけです。
 だから「ダンスミュージック・再エネ宣言」もすごくいいと思っていて。仮に誰が反対しようとも、私がいいと思ったんだから「NO REASONじゃん」みたいな。
ー決して強制するわけではない。あくまでも「選択肢はあるよ」という。
N 私が選んだだけであって、もし「いいと思ったら、それはあなたが自分でやってよ」という、「選べる」ということ自体がキーワードなのって、「それも含めていいな」って。

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東京タワーでのカンファレンスにて、左からいとうせいこう氏、Watusi氏、マイクを握る環境省環境再生・資源循環局の川又孝太郎参事官、みんでん・大石代表

W だって、「ラスベガスは今再エネですよ」って、単純にカッコいいよね。「あ、そうか」「そりゃそうだよな」って。
ーMDLやTDMWに出演した方々の、みんな電力を知っての反応や手応えはいかがですか?
W (小泉)今日子ちゃんなんて「え、ずっとこういうの、気になってたのよ」とマジで言ってて、だからそれがMCでも普通にサラッと出てきていました。
N 嬉しいと思ったのは、私が個人的には知らないアーティストがすでに再エネに切り替えていたということをみんでんさんと出会って知って。
 それは大沢伸一さんとか一青窈さん、ACIDMANさん、TOSHI-LOWさんみたいな、私が「この人たちの音楽いい」と思っていたり、近くにいるアーティストが自分で選んですでに替えているというのが、「すごくいいな」って。
ーどこか巡り合わせやタイミングで、替えてくださった。

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N 皆さんたぶん、誰かが替えたから替えたとかじゃないんです。「自分で選んで替えた」というのがすごくいい。
ー皆でああいう場に集まれて、一旦考えが整理されて入ってきて、それがそれぞれのタイミングやかたちでアウトプットされていくというのは、それこそ音楽の力かなと思います。
W もっと、例えば「予想以上にディスられたら、まだいいな」と思ってたんだけど、そういうのも少なかったね。「お前ら、勝手に『ダンスミュージックの祭典』とか何とか掲げやがって、相談もなくやりやがって」みたいな、そういうことがどこかで掲げられてたらと思っていたんですが、なかったですね。
 参加してくれた人以外で、外から「お疲れさまでした」みたいなこともないし、かといってネガティブな声がけもほとんどないから、ますます今のことよりも、どんどん未来のことを想って「勝手に突っ走っちゃおう」みたいな気持ちは強くなっています。
ーまず突っ走ったからこそ、他に誰が実際に動いたか、よく見えるということもある?
W だから、実際はこんなにダメなのに、エンターテイメントの可能性を信じてくれた大石さんには心から感謝です。同時に今回、自分たちがやったことの責任の一つになって重さを感じているのは、自分が「無視すりゃいいや」と思ってしまいがちな人たちにも、「何らか広げていかなきゃいけないな」って。
ー今回これをやって、それで終わりなわけではなく、むしろはじまりとなった。

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W 希望の光はないんですが(笑)、それでも電気を切り替えることで少しずつでも再生可能エネルギーが広まっていく街に、結果としてでもなったらいいなと思っています。結果が先でも、その後にもしかしたら何かがついてくるかもしれない。
 何も再エネのことや環境のことなんか考えていなくても、後追いで、「安くなるんだ」できっかけは十分だと思います。そこから少しずつ学んでいけば、今の今は本当にみんな苦しいんで、過度な期待はしないようにしつつ、それによって誰かからリアクションがあったら、その時はちょっと違うサプライズもできると思うんです。
ーTDMWを成し得たからよかったということではない。
W だって僕、街としての渋谷がなくなると思っています。ライブを観たりクラブに行くなんていう機能は、半分以上失うんじゃないかって。
 どの物件が手放されるか、だいたい半年はかかるんです。だから5月、6月にギブアップしているところがあるとすると、12月から年明け1、2月にクローズが発表されていきます。契約解除は半年前に言わないと違約金が発生するので、そういった背景でまだ出てこないんです。
 だからこれから、相当大変な時代がきます、、
ーすごくそもそもの質問になりますが、お二人は当初、何を成し得ることをゴールとしていたのでしょう?この状況で何が答えか誰にもわからないとして、そのゴールらしきものに対する達成度は、どんな感触でしょう?

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N 成し遂げたことは、自分の20年史だと思います。
 東京で、学生の時にはじめてマスコミのアルバイト、最初はフジテレビだったんですが、その後「これは!」と思って渋谷のクラブHarlemの中2階に忍び込み、MCリュウという人に「仕事させてくれ!」と土下座して。そうしたら「J-WAVE来る?」みたいな、それでJ-WAVEさんが私のことを拾ってくれて、そうして今に至ります。
 当時の米粒みたいな自分を支えてくれて、「面白いからいれば?」みたいな、そういう人たちのおかげで自分はここにいます。その時繋げたい、関わりたいと思ったことにどんどん関わって、クサい言葉で言うと「恩返し」ではないですが、「繋がれたものを私が繋ぎ返します」と。
 そういう風に人やエネルギーは循環して次の世代に渡っていく。ラジオだってすごく素敵な番組も3〜5年経てば次にバトンが渡されて、クラブシーンも5年も経てば、人気のハコは次のハコに受け継がれていくわけです。
 時代の節目をつくっていくのがカルチャーだったり、繋ぎ合わせたり、記憶に残っていくものが音楽だったりするわけで、そこで出会いをつくっていくことが、壮大に言えば人類の生きるモチベーションじゃないですか。それがみんな楽しくて毎日生活して、消費して、衣食住する。
 そういうものを、自分もカルチャーや文化サイドからつくれるんじゃないかという、ようやくその最初のステップに立てた、そんな「成し遂げた感」があります。しかもこれが一人か2人かでは全然違っていて、私にとってこれは、Watusiさんがいなかったら絶対できないことでした。
 一人じゃ無理だけと、2人ならできた。
 「人は2人以上いれば、何かはつくれる」という、私はソロでは無理だったけど、ユニット以上であれば何かをつくれるんだという、時代の節目をハブ的に繋いでいく役割としての達成感。それはTDMWなのか、自分なのか、NAZWA!というユニットがそういうものかもしれない達成感があります。これを、これだけ大変な時代の中でできたという、少なくとも人や文化との間にある大切なものを繋げた感触があります。

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W 僕みたいな、60過ぎたのがしゃしゃり出ているのは嫌だったから、実行委員長にはNazにやってもらって。だって「ダンスミュージック」なんて言ってるので、なるべく若い、しかも「女性っていいな」と思って、それで「わかった、わかった」なんて言っていたらいとうくんが来てくれたり、ジブラがフリーでやって来てくれたり、それは実行委員長パワーがどんどん浸透してきた証なんだと思います。
 だから、来年はさらにNazに話をふって、「自分はもっと楽になれるかな」ということが成し得たことでしょうか(笑)

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東京タワー、メインデッキからの夜景

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NAZWA!

COLDFEETのメジャーデビューから20周年を迎えたWatusiと、ロンドン、インド・カリフォルニア経由のDJ/キュレーターで、若手オーガナイザー・ プロデューサーとしても多忙なNaz Chrisという世代・性別・国やジャンルを超えた2人によるDJユニット。
”繋がり”、”垣根”を超えユナイトする”WA (輪)”をテーマに【Ring Link Music】を提唱。国内外の野外フェスにも人気の2人によるプレイはバレアリックの精神を背景にTechno/House/Nu Discoなどのジャンルをも自由に行き来きし、壮大な一夜の絵物語を描き出す。
2018年、東南アジアツアーを敢行し、シンガポール、インドネシア、ハノイ、ホーチミンなどでプレイ。
2019年には、1st EP「 KISS THE TOKYO GIRL」をリリース、2020年にJ-WAVE「TOKYO M.A.A.D SPIN」のナビゲーターに就任すると共に、1週間、ダンスミュージックと共にカルチャーと人が繋がる祭典「TOKYO DANCE MUSIC WEEK」を旗揚げした。

【Watusi (COLDFEET)】 (Official web/SNS)
www.coldfeet.net
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【Naz Chris】 (Official web/SNS)
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(Instagram)https://www.instagram.com/xnxaxzx_christina_dj/
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(Twitter)https://twitter.com/NazChris_dj

「ニューノーマル」が本当にあるとして、今、はじまったばかり。NAZWA!の活躍、そして再エネとの展開にも乞うご期待!

 

(取材:平井有太/撮影:森拓実)
2020.9.16 wed.
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