【第1回】薬樹|新たな風を吹かせる薬局の「電力切り替え」
読みもの|10.2 Mon

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お話を聞かせてくださった、代表取締役・小森雄太氏と、薬樹グループ/Liko-netの照井敬子さん

  薬局の世界にも、みんな電力の在り方に賛同し、電力を切り替えてくださった会社があった。
 それは、首都圏を中心に1都5県、約150もの保険薬局を店舗展開しながら、「あえて全国展開はせず『地域に根ざした薬局』をめざす」とか、薬局なのに「薬を減らす」と公言している企業で、名を「薬樹株式会社」という。事前に関連書籍に目を通すと、そこには「健康さんじゅうまる」や「”進”理念」といった、意味がわかるようでわからない、しかしどこか興味をそそられるキーワードが目に入ってきた。
 場所は青山一丁目、山王病院並びのビルに入る薬樹・青山オフィス。2代目の若き代表である小森雄太氏と、薬樹グループ/Liko-netの照井敬子さんにお話を伺った。
—まず、みんな電力に切り替えてくださった理由を聞かせていただけますか?
小森 私たちの会社は、「健康さんじゅうまる」というテーマを掲げています。それは人と社会、地球の健康に対して、「持続可能な社会に向けて私たちに何ができるか」というコンセプトで、今後は「薬を減らす薬局じゃないと生き残っていけないだろう」と。
 それには、薬局は「人に薬をもたらす」ものではなく、「健康という価値をもたらす」べきという前提があります。そう考えた時、おそらくは「再生可能エネルギー(以下、再エネ)も持続可能な世界に何らか寄与する」と。そこに気付いた人間の責任として、「できることから取り組んでいこう」という姿勢が合致した、つまり「コンセプトにおける密接な共感」が一番大きなポイントでした。

コンセプトボード

—社内では、電力の自由化があった時点で「どこに替えようか?」という話はあったんでしょうか。
小森 いえ、コストの再調査などは去年の年末頃から始めました。最初から「再エネを念頭において」というよりも、いわゆる備品類とか購買関係の見直しなどの一環として、電力自由化に伴ってコストダウンができるのであれば、ということが経営判断としてあったんです。そこで一つの選択肢として、今年に入ってみんな電力(以下、「みん電」とも)さんが出てきたんです。
 それは単純に「コストオンリーで選ぶ」ということではなく、我々の企業理念との合致が大きなファクターとしてありました。でも、最初からみん電さんありきで切り替えがあったわけではないんです。
—薬局業界では、電力の切り替えはどれくらい浸透しているんでしょう?
小森 実際に友人、知人で電力自由化に際して替えたという話は、あまり聞きません。ただ「コストが下がるのであれば」というレベルでの入り口は、それは携帯電話のキャリアとかコピー機を替えるとか、「経済活動の一環として変更する」というレベルで、医療業界だからといって意識の高低はないと感じています。
—電気の切り替えを受けて、現場からの反応は?
照井 「健康さんじゅうまるだからこうなんだ」ということと、エコステーションももう7、8年地道にやってきていますから、ある程度意識は「そういうことね」と、理解はしていただいています。

エコステーション

エコステーションでは、使用済み家庭用天ぷら油、ペットボトルキャップ、古着を回収している

小森 もともと、全店ではありませんが、ペットボトルキャップがワクチンになるとか、天ぷら油の回収ステーションとか、衣料のリサイクルも約10年やってきていますので、そういったリサイクルについては、今さら社内リリースを出さなくても理解はしてくれていると思います。
 その流れもあり、店舗的には「経費が増えなかったらいいよ」くらいで、大きな流れは理解してくれているのではないでしょうか。
—ここまでの流れの中で、エネルギーの切り替えは自然なことだった。

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照井 正式な社内報が今月末頃になりそうで、ポスターはもうできています。これがほぼほぼ完成品で、やっとお客様に社員が説明するツールが揃い、月末からリリースしていくところです。
小森 そういった、もともとのTOKYO油電力さんとのタイアップもあるので、「あなたが持ってきてくださった天ぷら油が、あなたの電気になりますよ」的な感覚は、気にされる層にはすごく刺さる取り組みなんだろうと思います。
—TOKYO油電力さんとの関わりはもう長いんですか?
照井 私が、2007年に出会ってしまったんです(笑)。当時のTOKYO油田さんにとっても、弊社がたぶん一番最初の、数十カ所レベルでの回収ステーションだったんだと思います。
—TOKYO油電力さんは、そもそもはお爺様の代から「とりあえず油集めておけば商売になる」と言われて「TOKYO油田」をやられていたのが、気が付いたら発電、売電もはじめてしまったと。

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照井 昨年末くらいから、TOKYO油電力さんから「ウチも電気やるから!話、聞いてよ(笑)」というアプローチはありました。
 そしてその頃、実はもうみん電さんの話もいただいていて、「2社と契約は現実的ではないな」と思いつつ、やはり「回収ステーションを通じたTOKYO油電力を」と考えていました。ですから、心情的に一番は、「TOKYO油電力とみん電が連携してくれないかな」と期待していたんです。「そうなるのが私的には100%」と思っていたのが、最終的には本当に実現して、その延長線上で弊社の切り替えも実現したという。
—すごい巡り合わせだったんですね、、!
小森 ご縁が幾重もあったんです。
—さらには、そこに関わる全員が「持続可能な地域社会をつくる」という意識を共有している。そしてそこには、御社が掲げる「健康さんじゅうまる」が関わってくる。
小森 仰る通りです。
 私は10数年前、大病院の前に薬局がズラズラッと並んでいるのを見ていて、「気持ち悪いな」と思ったんですね。一昔前は免許センターの前に代書屋さんが並んでて、それがパソコンの普及とともになくなっていきました。ですから、そういったスタイルのビジネスは「いつかなくなるんだろうな」と思っていました。
 じゃあ、実際になくなるんだろうけど、それを嫌だといって否定する以上は、代替案を提示しなければいけない。その時に、いわゆる「コバンザメ商法」ではなく、「地域の方々に本当に必要とされる薬局をつくりたい」ということが、そもそものスタートだったんです。

 

次回へ続く

 

(取材:平井有太)
2017.09.13 tue.
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