クマの出没も食料自給率も関係してる!?耕作放棄地をタドる
読みもの|8.26 Thu

 TADORiで2週間ほど前から紹介している「おひるねみかんジュース 2月の味」、私の家にも先週届きました。みかんのそのままの美味しさがぎゅぎゅっと詰まった美味しいみかんジュース。「美味しいだけじゃなくて、耕作放棄地問題を再開墾した畑で作られたみかんなんだよな〜有難い。」とか思いながら飲んでいました。しかし、そんな時、ふとした疑問が脳裏をよぎりました。

「実際のところ、耕作放棄地ってどんな場所?何が問題なんだっけ?」

 そこで、今回は耕作放棄地をタドリます!

目次

そもそも耕作放棄地とは?

 耕作放棄地とは、農業などの耕作に使用されておらず、そのままになっている土地のこと。また、耕作放棄地のうち、通常の農作業では作物の栽培が不可能となっている土地は荒廃農地と呼ばれます。

photo by SANJU Production

耕作放棄地が生まれてしまう原因

後継者問題

 農業界における後継者不足の問題はよく聞きますよね。
 筆者は20代前半ですが、私の周りで、農業をやっている人は祖父母の年齢の人ばかり。同年代の人で農業に携わっている、または携わりたいと言っている人は少数派です。
 実際に、農林水産省のデータを見てみると、日本における農業従事者(個人経営体)は2020年時点で136万人となっており、2015年と比較して約40万人が農業から離れています。
 また、農業従事者の平均年齢は67.8歳となっており、若い農業従事者の割合はとても低い。
(参照:農業労働力に関する統計:農林水産省)
 このように、日本の農業界において、土地はあっても働く人がいない状況が続き、耕作放棄地を生み出しているのです。

土壌の劣化

 さらに、土壌の劣化も耕作放棄地を生み出してしまう原因の1つです。
 家庭菜園などをしたことがある人はわかるかと思いますが、土があっても、肥料や土壌を知しっかり整えないと、植物はなかなか大きく育ちません。
 例えば、窒素は土地を農地として活用するためには大変重要な成分です。しかし、日本の多くの水田や畑では、たい肥の利用が減少していることで窒素が減少し、作物が実らなくなってしまったり、実ってもサイズの小さいものしかできないなどの土壌の劣化が顕著です。
 このような土壌の劣化のせいで、農地として利用されなくなり、耕作放棄地となってしまっているのです。
(参照:土づくりの現状と課題https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/07/pdf/ref_data2-10.pdf)

税金対策問題

 さらに、一般的に農地の固定資産税が宅地や他の目的で利用するよりも安いため、農地として使うあてがなくなっても、税金の増額を避けるために農地のままにしていることもあります。
 ただ、農地は農地としてしか使用できないため、税金対策のためだけに農地として登録されている土地は働き手がいなければ、耕作放棄地になるリスクは高いのです。
(参照:農地の保有に対する税金(固定資産税))

日本における耕作放棄地とそれに伴う問題

 ここで、日本における耕作放棄地の現状を見てみましょう。
 農林水産省のデータによると、日本において荒廃農地の面積は年々増加しています。また、そのうち再生利用可能な農地の割合も低くなっており、通常の農作業ができるように戻すために大変なコストを要する耕作放棄地が増えていることがわかります。
 日本全国でここまで増えている耕作放棄地、もしかしたらあなたの住む地域にもあるかもしれません。

(参照: 農地に関する統計:農林水産省荒廃農地の現状と対策について、https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/2030tf/281114/shiryou1_2.pdf)

耕作放棄地はなぜ問題なの?

 耕作放棄地の問題は、環境や食にも関わっており、私たちの生活にも大きな影響があり、これからさらに深刻になっていく可能性があります。
 例えば、クマやイノシシなどの野生動物の出没。
 果樹園などを放棄すると、働く人はいなくなりますが、果物は季節が訪れれば実を付けます。おいしい果物がなっていて、管理する人がいなければ必然的に野生動物たちは食べ物を求めて山から下りてきます。すると、土地が荒れ、土地の再生が難しい荒廃農地になってしまうのです。

illustration: Akane Hirose

 神奈川県・小田原で農業を営む小山田大和さんによると、「一度荒廃農地になってしまった場合、元に戻すには数年かかる」とのこと。まずは今ある農地を耕作放棄地にしないことが荒廃農地を増やさない取り組みの第一歩です。
 また、クマやイノシシは畑を荒らすだけでなく、人々の生活を脅かすことも。農業従事者だけの問題ではありません。

 そして、農地として活用できる土地が減る、農地として利用する人(農業従事者)が減ると、農業によって生産される作物の取れ高も必然的に減少します。
2021年8月25日には農林水産省は、2020年度の食料自給率(カロリーベース)が前年度に比べて1ポイント低い37%だったと発表しました。 米の消費量の減少や、飼料や原料を海外に依存している畜産物や油脂類の消費量の増加で国内で生産された食料の消費は減少傾向にあります。 また、新型コロナウイルスの影響で外食需要が減ったことも食料自給率を押し下げている1つの原因と考えられるようです。
(出典:日本の食料自給率:農林水産省https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210825-OYT1T50245/

 さらに、世界の食料自給率を見てみると、日本の食料自給率は大変低い水準なのです。このまま耕作放棄地が増えつづければ、国産の野菜は私たちの食卓から徐々に減ってしまうかもしれません。

(引用:世界の食料自給率:農林水産省

まとめ

 耕作放棄地問題は日本の農業、環境、食に関わる大きな問題です。
 このような状況を受けて、日本各地でさまざまな取り組みがされています。TADORiでは、耕作放棄地を再開墾した畑で作られたみかんからつくられたみかんジュース「おひるねみかんジュース」をご紹介してますのでぜひご覧ください。詳細は以下↓のボタンをタップ!

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記事を作った人たち

タドリスト
廣瀬あかね
横浜出身、東京在住。国際教養大学在籍中。メンタルヘルスの医療化と新自由主義の影響について研究中。好きなことは読書、お絵かき、誰かと話すこと。最近は相席食堂にはまっています。