【初回】コロナと戦う経営者|アフターコロナのサステナブル経営
右上はトークの司会を務めた、みんな電力・山下麻美
いろいろな想い、状況の変化はありながら、少しずつでも収束の方向に進んでいるようではある新型ウイルスの騒動。その中で、医療現場や音楽などカルチャー全般が置かれた状況に加え、「飲食業界の窮地」という認識は皆で共有できるだろう。
今回はメインゲストとして飲食業界の実態、経営者のマインド、窮地から救うキーとなるESG投資の最新の動向に迫るべく、外食産業の中で最も骨太にSDGs、ESGの実践経営をされてきた株式会社ゼットンの鈴木伸典代表取締役に参加いただいた。
加えて、ご自身でも日本とマレーシアで飲食店を経営、コンサルでもあるスタートアップスクエア株式会社の恵島良太郎代表取締役、投資サイドからは政府委員も務められ、ESG投資の今と可能性について語っていただくべく三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のプリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト、吉高まりさんをお招きし、ファシリテイターをみんな電力・三宅成也事業本部長が務めた。
ゼットンは2019年4月「SUSTAINABILITY STRATEGY 2019-2020」を発表
昨年4月に我々独自のサステナブル・ストラテジーの骨子を作成して、「まずはこのようなことに取り組みます」という発信をし、それをベースにサステナブル企業を目指す活動をさせてもらっています。
今回の新型コロナウィルスの影響に関して、ESG投資家の皆さんは、市場の不透明感は危惧しつつも、日本企業に対して強さも感じているようにも思います。日本企業は内部留保が多く、保守的なバランスシートでもあるという点が評価されているようです。
日本企業の強みとして、「サステナブルな企業」であるということを押し出す機会だとも思われます。今日は、「投資家を惹きつけるサステナブルな企業とは?」という視点で、お話ができればと思います。
個人的にはこのコロナの状況を肌で感じた時、これは「もはや営業で何とかなるものではない」ということを思ったんです。つまり会社のP/L(=Profit & Loss「損益」)軸を救済している場合じゃないと。それはつまり、テイクアウトをしようがどうしようが、じゃあ「それは、どこまでもつの?」と。
そこで我々が、やはり最初にこの状況を把握しながら、まずB/S(=Balance Sheet「貸借」)に目を向ける。B/Sに目を向けながら、まず最初にキャッシュの手当てをどうするのか、そしてその後、再度B/Sに目を戻してその状況をどう整えるか。そういった順番をとらないと、動くこと自体がロスとなり、赤字額が大きく膨らむだろうと考えました。
そういう風に考えるのは、我々のようなオペレーションが重要になってくる企業の特性です。その流れで、一つには「会社をどう継続させるのか」。もう一つは、コロナという世界的な災害を最終的に収束させるために、まだワクチンも薬もないわけです。その時に一番の対策は「感染しない」ということだと考えました。
ちなみに僕らは緊急事態宣言が出る前、3/25の時点でハワイはロックダウンして、お店の全店休業を経験していました。ですので、これは日本でも早めに全店休業して、その時に垂れ流さなくていい赤字をつくるのではなく、経費を限界まで抑えた中でどう切り盛りしていくか。その上で、「どのようにキャッシュの手当てをしていくか」という作戦に切り替える判断をしたのが4月の上旬でした。
ゼットンさんには弊社経由の再エネを使っていただいています。では今回の事態を経て、今後どのような取り組みを考えておられて、どのようにB/Sの価値を高めようとしていますか?
みんな電力が供給する再生可能エネルギー主体の電力を使用しているアロハテーブル湘南
そういった視点で見ている時に飲食銘柄の成長スピードは、倍率で言えば、どれだけ頑張っても15〜20倍くらいです。その掛け算でしかない時に、僕たちは経営理念である「店づくりは、人づくり 店づくりは、街づくり」を掲げて創業期から経営しています。しかし、いくら頑張っても常にそこが「投資家からはわかりにくい」という現実がありました。
300年の歴史に紡がれた美しい庭園を眺めるレストラン及びウエディングをゼットンが運営
例えば名古屋には、尾張徳川家の邸宅があった徳川園という公園があり、2004年にはその再開発をさせていただきました。かたや関東でも、横浜マリンタワーを再開発させていただきました。そのような仕事の流れから、昨年は葛西臨海公園の再開発を手掛けさせていただくことになりました。
海や芝生など公園の美しい景色が目の前に広がる中で楽しむソラミドバーベキュー
ゼットンが手掛ける葛西臨海公園でのウエディング
僕たちがこれから成長していくにあたって、自分たちの事業をもう少しわかりやすく「ESG」という切り口でプレゼンをしていき、それを受け取る投資家の方々に僕らのビジネスモデルを理解していただいて、そうやって僕ら自身が「外食銘柄」から「ESG銘柄」に変わっていけるのだと思っています。
そうなると僕らの企業価値というものも、今までどれだけ頑張っても超えられなかった先まで、また違うゾーンに移行できるのではないだろうか。そこで企業活動の、よりスピードアップを測ることも可能だし、当然パワーアップもできるんじゃなかろうか。
今、「このコロナ禍をどう切り抜けて行くか」ということと同様に、また別の車輪で「どうESG銘柄になっていくか」という、そのプレゼンを少しずつ各企業に始めさせていただいています。
一方企業は、投資家に評価されないと成長できません。そのあたり、投資家の目線について吉高さんに伺いたいと思います。
これまではわかりやすい企業成長が良しとされ、四半期ごとの利益を見ながら評価するような話だったり、何々銘柄ということでカテゴリー分けするのが普通でした。でも今鈴木社長のお話にあったような、ESG銘柄という新しい話は、投資家から見るとそこへの期待値は上がっているんでしょうか?
主なESG投資家は、今は年金、生命保険、信託銀行など、機関投資家と呼ばれる、長期で大規模な資産を運用する投資家のことをいいます。これらの機関投資家は、にわかに「E(環境)S(社会)G(ガバナンス)」など財務以外の情報(非財務情報)に基づいて、企業の価値を評価しなければならなくなりました。しかし、これまで機関投資家はそのような評価手法を持っていませんでした。
そこで今は鈴木社長が仰っていたように、投資される側(企業)から投資家に向けて非財務情報を開示し、わかりやすくストーリーを語っていかないと、上手く評価されません。これを「投資家とのエンゲージメント」といいます。
また、機関投資家の運用担当者は、各業界のアナリストの分析などに基づいて投資をしています。例えば小売業なら、その業界のアナリストは業界の中で比較して分析をしてきました。しかし、先ほど鈴木社長がお考えになるような、小売業にとどまらない業際ビジネスに関しては、投資家が評価をするのは容易ではありません。一つの業界内での評価だけでは十分ではなくなるからです。
例えば「CASE」とか「MaaS」を見据え、パナソニックさんとトヨタ自動車さんが組むと発表しました。パナソニックさんは電気機器の業種に分類されますが、その業界内だけで企業の真の価値が正しく評価できるでしょうか?一方、投資家が企業を非財務情報で評価しようと思っても、残念ながら企業側も情報開示を十分していないし、投資家側もこれまでにそのような情報の分析の経験がありません。
ですから今、ESG投資に何が必要かと言うと「情報開示」と「エンゲージメント」なのです。日本企業はアピールが決して上手ではないし、また批判を恐れて十分な情報開示をしない傾向にあります。しかしこれからは、徹底的に情報を開示し、投資家とコミュニケーションをとってもらいたいのです。
投資家は、今はAIやビッグデータによる解析システムを駆使し、これらの非財務情報が株価や企業の成長にどれくらい関係があるのか見い出そうとしています。投資家同士が、この「新しい評価手法で競争し始めている」という状況が、これからのESG投資だと思います。
もちろん投資家の中には、長期的視点にたったESG投資家もいれば、そうではなく、短期的視点で、相変わらず業績評価や利益率で評価する方もいるわけです。ただ、このような先行きが不透明な世界になって、短期的利益だけを追い求めるのではなく、長期目線で経済を見るようになってきているとういう点では、コロナがあろうと、ESG投資というものは、実は、投資手法の中でデファクト・スタンダードになろうとしているように思います。
この状況にあって、むしろ加速しそうな「ESG」。コロナ禍は倍速、週2ペースで記事公開中のENECT、次回は木曜の公開!
詳しくは↓コチラ
https://minden.co.jp/personal/report/2020/05/12/2283
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