【第2回】ASAPRI|再生を可能にする印刷会社
アサプリ社屋の屋根にも敷かれた、ソーラーパネル
その原動力を支える、「当社に縁あって勤めてくれた社員を全員幸せにする」理念はブレることないと語る、松岡代表取締役。本人も笑いつつ、「エネルギーの話になかなか繋がらないね」と仰りながら、その根底に、新しいエネルギーが支える社会でも通じるだろう姿勢、想いが見え隠れする。
インタビューの第2回、まず話は初回からの続き、松岡氏が語られた「コストメーター」、「見える化」、「管理会計のシステム」、「一時間あたりの付加価値を4000円以上に」といった方針に対する、社員さまの反応から。
コチラは、グループ会社オリエンタル敷地に設置したソーラーパネルの発電量モニター
僕はそれをちゃんと全社員に、朝礼でも会議でもコトあるごとに言っています。当社の社員たちに、「まわりの印刷会社が無くなっても、当社はなくなりません」と。そして「当社の社員は、同地区同業他社、同年齢の人たちよりも、10%以上高い給料にしましょう」と。そしてそれを実現するには、「全社員が理念を共有して意識改革を行い、無駄を省いた個人事業主みたいな意識で仕事に取組んでほしい」と。
皆がコスト感覚を持って、自分ごととして仕事を行う。そうするために仕事の「見える化」が重要です。しかも、毎月目標利益に達成すると、これは上司部下関係なく、全社員に一万円の報奨金が現金で出るんです。ガラス張りで経営し、出た利益は社員に還元していく。そうすることで全社員が目標達成に向けて、取り組んでくれるようになります。
破綻した会社の社員は、みんな必ず「頑張っている」と言います。
しかし、あなたの一時間と僕の一時間は同じです。あなたの1000円と僕の1000円も一緒です。そこは誰でも皆が平等に同じ尺度です。だからこそ時間あたりの付加価値をあげていかないといけません。つまり、課題は現場にあるんです。
そこをみんなで考えて、それぞれが個人事業主のような意識改革をしてもらったら「強い会社になる」と。その上で、なるべく「時間内でたくさん給料稼いで、早く帰ろう」と。その代わり「会社では時速4キロじゃなくて、6キロの早足で歩こうよ」と。そうして「生き残る」と言うとネガティブなので、あえて僕は「勝ち残れ」と言っています。
要は、会社として、安く売っても利益が出るんだったらそれでいいんです。それはすごい経営努力をしているわけだから。でも、そこが「よそがいくらだからウチはいくらにする」というのでは、本当の原価もわからずに安売りを行う、ただのどんぶり計算なんです。僕の方針というのは一品一品の個別の工程別の原価をリアルタイムに出して勝ち負けを出します。そしてPDCAを回し「社内に眠っている埋蔵金を掘り起こしていく」ということです。
しかし「見える化」は守りです。守っているだけでは負けませんが勝てません。一方で攻めるためにはマーケットの拡大がいるんです。
その時に価格でとりにいくと価格で取り返されるので、「仕組みでとりにいきましょう」という話をしています。
それに加えて、商売は、お客さんが困っていることを解決すれば成立します。だから僕らはマーケットの拡大戦略として、ウェブで校正するシステムも導入しています。それは富士フィルム・グローバル・グラフィック・システムズさんと共同開発したものです。ウェブ校正のシステムを導入することで、お客さんはインターネツトが繋がる環境であれば、いつでもどこでも校正ができます。お客様の業務改善のお手伝いと当社の業務改善も同時に可能になります。
他には、印刷物をウェブから発注できるシステムも自社開発しました。印刷物を安くするというよりも、そういう「システムを通じて発注や校正していただくことで、お客様の労働改善や残業時間、コスト削減ができます」という提案をさせてもらって受注に繋げています。
このようなIT活用とM&Aが当社のマーケット拡大の戦略です。M&Aとはつまり、市場を取っていくことです。消耗戦はしないで、そもそも戦いをしないでも勝てるようにする。それは電気の世界でも同じではないですか?消耗戦には、電力も余計に必要になってしまう(笑)。
戦略とは「戦わずして勝つ」ということです。M&Aで「エリアを取っていく、また印刷の前工程であるデザインや後工程の製本や配送、Webや動画制作等の周辺分野を取っていく」ということです。
富士フィルム社製CTP(刷版室)
そこでも見える化が活きてきます。雇われの従業員の立場では、自分にゆとりがあっても自発的に動こうとしないのが普通です。しかし当社ではある部署の仕事が溢れているのが見えると、手が空いてる人間が手伝いに行きます。自分の加工高がリアルタイムに全社に表示されますので、加工高の少ない社員は加工高を上げようと創意工夫してくれます。他部署を手伝うと社内通貨みたいなもので換算されるから、年間を通じて多い人は表彰もされるし、評価もされて報酬にも還元されます。
そして「幸せ」というのは、具体的にまず「末永く雇用を守る」ということです。イメージからすると、当社に勤めてくれたら、子ども2人が大学まで出れて、地元でマンションか一戸建ての家を買えて、夜の8時か9時くらいのドラマは家族と観れる、そんな「幸せ」の感じです。
会社というのは、膨張はダメですが、絶えず成長が必要です。急激に伸びる必要はありませんが、確実にずっと伸びていくためにはM&Aが必要です。逆に、仮にアサプリ一社で売り上げ10億円、社員50人としたら、営業課長は上司が退職しなければ一生課長止まりです。それでは年収もそんなに増やせない。しかしM&Aを行えば、次の会社でやる気のある人のポジションをつくることができます。だから上を目指している社員には、「次の会社に僕といくか?」と聞きます。
僕のイズムは、各社の部門長に行き渡っています。それぞれの部門長を中小企業の経営者みたいに育てているから、M&Aをしてまったく新しい会社に行っても、理念の共有をできている彼らはめげずに活躍できます。
M&Aと再生、そして成長を続ける印刷会社が創電をはじめた理由が明らかになる
26日(月)公開の最終回に続きます