
2025.12.09
日本最大級の生産量を誇る泉州タオルメーカー「ツバメタオル」。 その工場は、SDGsという言葉が生まれるずっと前から、静かにエシカルなものづくりを続けてきました。 特に、温泉や銭湯で誰もが一度は手に取ったことのある薄くて細長い、あの「銭湯タオル」。 実はその生産量で、ツバメタオルは日本一を誇ります。 なぜ今、彼らのものづくりが改めて注目されているのか。今回は、その知られざる製造現場をタドります。
そもそも「泉州タオル」とは?
あえてオーガニック100%にはこだわらない理由
発酵するタオル
せめて綺麗にして返そう。四人家族、約5年分の水を使う側の責任。
日本一の品質と オリジナリティの確立

天然由来素材で製造。化学薬品の使用を最小限に。
国産タオルの発祥地・大阪泉州で明治20年に誕生した「泉州タオル」。最大の特徴は、織り上げた後に糊抜き・漂白・染色などを行う「後晒し(あとざらし)」製法です。この製法によりタオルについた糊や綿に着いた油分、不純物を取り除くことで、清潔で吸水性の高い仕上がりになります。

タオルを選ぶとき、消費者の目線では、「オーガニック100%の綿や原料を使っていること」の方が良質でサステナブルだと感じがちです。しかし、製造過程を深く見ると、原料以外にエシカル度合いを左右する決定的な要素があることに気づきます。それは、製造工程における素材選びです。 タオルは、糸をつくるところから、織りやすくするためののり付け、製織、のり抜き...と私たちの手に届くまでたくさんの工程を通ります。その一つひとつの工程で環境負荷を減らすモノづくりがどうできるか。ツバメタオルは、みんなが日常的に使うことを優先して考えた結果、原料となる繊維よりも、のり付けやのり抜き、漂白、水洗などの処理方法にこだわることにしました。それは、オーガニックコットン100%だと、どうしてもタオルという消耗品には高すぎる値段になってしまうから。

オーガニックコットンを使用した商品「ナナイロ」
ちなみにお客さんの要望に応じて、オーガニックコットン100%も対応可能であるところも、ツバメタオルの魅力の一つである。

ツバメタオル営業 鍋田治彦(なべたはるひこ)さん
「タオルづくりで、一度化学物質を入れてしまうと掛け算のようにどんどん足さなくてはいけなくなる。だから第一段階であるのり付けがでんぷんのりであることが非常に大切なんです。」 そう語るのは、株式会社ツバメタオル営業担当の鍋田さん。 現会長の子どもがアトピーを発症した際、「もしかすると、自分たちがつくっているタオルが、知らぬ間に化学薬品を取り込む経路になっているかもしれない」という危機感から、製造工程の改善が始まりました。 製造工程で化学薬品の使用を最大限抑え、澱粉糊、酵素、大豆イソフラボンといった、植物由来の素材を使用するツバメタオルのこだわりの現場を見せてもらいました。

のり付け作業
まずは、紡績した糸の強度を高め、織る際の糸切れを防ぐための「のり付け」の工程。ツバメタオルは化学糊の代わりに、澱粉糊を使用します。その後、織機にセットされたのり付け済みの経糸と、緯糸を使ってタオル生地を織り上げます。

織り工程の様子
タオルは基本的に繋がったまま、一反木綿のように工場内を循環し、流れが止まらないよう従業員さんが丁寧に状態を管理しています。

織られたタオルは、酵素液につけ、40度の樽の中で16時間程かけてゆっくりとのり抜きをされます。この過程で、酵素液の中にいる菌が糊を食べ、タオルが柔らかくなることも大きな特徴です。


続いて、タオル生地を「漂白」の工程へ。ここでは、従来用いる塩素系漂白剤の代わりに、過酸化水素漂白剤を使用する「コールドブリーチ」という独自の手法で仕上げられます。 その後の「水洗」作業で、タオルに付着している糊や油分、汚れなどの不純物を何度も繰り返し取り除きます。

「タオルには、機織りするときにぴんと張るように、のり付けをする必要がある。 新品のタオルが『洗ってつかいなさいと』言われる理由は、タオルにノリが残っていると水分を吸収しないから。でもうちは洗ってから出荷するから届いた瞬間から吸収率が違う。」と鍋田さん。 高温での処理から水洗までの工程はまるで、サウナに入っているかのような状態だ。近年のサウナブームにも欠かせないタオルだが、まさかタオルの方が先に整っていたとは…!

乾燥中のタオル
洗い終わったタオルは「染色」を経て「乾燥」へと進みます。乾燥場ではリアル一旦木綿にお目にかかることができた。乾燥は、タオルの風合いや生地巾(幅)を安定させる役割もあり、乾燥方法によって大きく影響をもたらします。風を当てて乾かした後、上下から熱風を吹かせ、完全に乾かしていきます。

乾燥したタオルは、「縫製・裁断」工程でようやく一枚ずつの長さに断裁されます。規格外の注文ではタグは手縫いになり、職員さんは一日に400枚ほどにタグを縫い付けていることもあるそうです。

縫製の様子
こうして、数十メートルの長い工程を経て「検査・仕上げ」で丁寧に確認されたあと、私たちの元に届くタオルとして完成するのです。
タオルの製造工程を見学し、ようやく終わりかと思いきや、次は水の処理まで見せてくれました。工場でつかっている水は和泉山脈からのきれいな伏流水です。 「工場を動かすには一日に2000トンの水が必要です。これは四人家族の生活「約5年分」に当たります。これだけ多くの水を消費するから、せめてきれいにして返さないと。」 鍋田さんの言葉の通り、ツバメタオルは製造過程で使用した水を、染工場の工場内で濾過・分解し、不純物を取り除いて排水しています。

バクテリアによって分解。そのため表面に茶色の泡が浮き出る。
使用された水は爆気槽に溜められ、2日間かけて微生物によって分解されます。これができるのは、のり付けや漂白の工程で自然由来の成分を使用しているからだと改めて実感します。有害物質が多ければ、微生物による分解は不可能です。

浄水場の淵にコケが生えており、微生物が生息している様子からも、この排水が安全な水なのだとわかります。ツバメタオルの工場使用水は長い旅を経て、最後に近隣の川へと帰っていきます。工場の井戸に住むカメも、その水の安全性の証拠かもしれません。

染工場の井戸に住むカメ

鍋田さんは「一番使い勝手がいいタオルは銭湯タオル」と話します。 あの薄くて昔ながらのタオルは日本独自のもので、最大の特長は優れた吸収力と速乾性です。薄くても繊維密度が高いため、一枚で全身を拭き切ることができます。 そんなすごい商品を作るツバメタオルの名前をなぜ私たちは知らないのか。それは、彼らがメーカー、つまり裏方だったからです。タオルはギフトや店の名前を刻むことが多く、ツバメタオル自体の存在感を出すことができませんでした。 最近になって、雑誌などでツバメタオルとして取り上げられるようになりましたが、他のエシカルなタオルが一枚5,000円する現在、ツバメタオルは一枚2,000円程度。逆に心配になってしまう安さです。 お手頃な価格で提供できるのは、材料をオーガニックにこだわりすぎないこと、製造過程で使用する素材は自然にあるもので補うこと、そして古くからのエシカルな工場設計であるから。 営業を頑張りだしたのは最近とおっしゃる鍋田さんだが、ツバメタオルのインスタグラムフォロワーは8千人。2025年には、「2025年おもてなしセレクション(※)」を受賞しました。日本の古き良きものづくりを新たな形で発展させるタオルメーカーツバメタオル。今後の活躍が見逃せない。 ※おもてなしセレクションは、日本の優れた“おもてなし心”あふれる商品・サービスを発掘し、世界に広めることを目的に、2015 年に創設されたアワードです。有識者により、国際通用性、利用しやすさ、共感性、価格妥当性、独自性、持続可能性の6つの評価基準で現物審査を実施し、「世界に発信したい“日本ならでは” の魅⼒にあふれている」と認められた対象を、おもてなしセレクション受賞商品・サービスとして認定しています。 公式サイト:https://omotenashinippon.jp/selection/

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