【第2回】DJ KRUSHが25年の節目で発表するラップ・アルバム
日本において、かつてないほどラップ・ミュージックが盛り上がっている昨今。その中でも選りすぐりの新旧トップ・プレイヤーたちが集結したVISIONの夜は、出演者それぞれの軌跡を言葉の粒のかたちで、全身に浴びる体験となった。
「親子ほども違う」と笑うラッパーたちを、氏はどう選んだか。そして、彼らのラップに何を見出し、結果としてアルバムに詰められたものは何で、エネルギーとの接点はどこに見えてくるのか。
全3回インタビューの第2弾を、お楽しみください。
ソロ活動25周年、初のラップアルバム。
feat. アーティスト(読み五十音順)
R-指定
OMSB
志人
5lack
チプルソ
Meiso
RINO LATINA II
呂布カルマ
人は…地球は…宇宙は…どこから来てどこに行くのだろう。
過去…現在…未来…そこには一体何があるのだろう。
生の喜び…生の苦しみ…生の悲しみ…その先にあるものは?
アナログの時代…テクノロジーの進化…遺伝子の組み換え…
その先の未来は?
DJ KRUSHの重く厚いビートの上で国内屈指のラッパーが
言葉巧みにそれぞれの”軌跡”を繰り広げる最上のコラボレーション作品!
僕の長女は30です。その年代の子も多いし、5lackくんとかは28くらいでしょうか。だから、親子でヒップホップみたいな(笑)、「すごい時代になったな」って。それで子どもに「親父、そこスネアいらないだろ」みたいなダメ出しされたり(笑)。
どうしても一緒にやりたくなって、「触ってみたい」という欲望があって、その欲望が出たのが今回参加してもらったラッパーだし、今までやってきたアーティストだし、その個性に僕らは刺激されるんですね。
もっと若い、自分が知らなかった子たちもいるから、ラップに詳しいやつに聞いて、「面白いやつがいたらリストあげてくれ」と頼んで、音源も聴いてみて。それで「いや、若すぎるな」とか、「フロウはいいんだけど、今回のアルバムじゃないな」という感じでは選びました。リストはすごい数になって、全部聴いて、その上で判断したんです。
(左上から時計回り)リリースパーティでは一人15分ずつ、OMSB、チプルソ、呂布カルマ、Meisoの順番で登場
僕らの頃には、机の上に何も並んでなかった。足と手をつかって、自分で探しに行って、見つけて並べてみて、その上で「これがいいのか」って選んでいった。でも、今の時代は全部が一通り机の上に並んで「さあ、どうだ」って。
音づくりもそうだと思います。でも、そこで飛び抜けてすげえ奴がいるかという話で。
昔はあんまりやる奴がいないから、それが目立っていました。だから、ラップやって言葉を吐いてる現在と、我々の、数が少なくて試行錯誤してる時代、どうなんでしょうね、、?
ただそれも時代で、リズムに対して倍で刻んでいったり、かたやトラップみたいな、言葉を本当にポツン、ポツンと「こんな露骨な言葉を置いていくんだ」とか(笑)。そういう意味では、ヒップホップは枝分かれもして、良い悪いは置いておいて、進化はしていったのかなって。昔はそこまで需要もなかったから。
たださっき言った、我々は昔のものを聴いて育ってきてるから、どこか安心できない感じはあります。80、90年代をリアルタイムで見て、育ってきた人たちは、話すとやっぱり「あの頃はよかった」って、おじさんたちになっちゃうというか(笑)。酒呑んでて話してても、「今最高だね」って言う人はたぶんいない。でも、「あんまり昔のことばっかり言ってても」というのもあるしね。
だから、その辺の結論としては「歩くしかない」。自分と向かい合って行くしかなかった。今までアルバムを何枚も出してきたけど、それは変わりませんね。
5lack、志人、RINO LATINA Ⅱと続き、最後は全員が名曲『証言』のトラックでマイクリレー。R-指定はスケジュール合わず
初期衝動からくる「躍動感」と、20年以上かかって、やっと実現して若干興奮した自分がいて、その気持ちも、20年前のKRUSH POSSEを「あの時MURO、ああだったよな」とか家で思い出しながら、日本語ラップをスピーカーから鳴らしつつ自分のビートをつけるという、そういう意味で、いろいろなことが含まれていますね。
前に一回一緒にやってますしね。それはMUROくんのアルバムだったけど。
お互い違う道を歩んできてるけど、歳もとってきたから、ヒップホップというルーツがお互いにあって、「どう自分を太くしてきた」みたいなところでいずれかち合わせたいというか、、30周年じゃ、みんないいおっさんになってるな(笑)。
全3回、最終回へ続く
DJ KRUSH (ディージェイ・クラッシュ)
サウンドクリエーター/DJ。選曲・ミキシングに於いて抜群のセンスを持ち、サウンドプロダクションに於ける才能が、海外のクラブ・シーンでも高く評価されている。1992年からソロ活動を精力的に行い、日本で初めてターンテーブルを楽器として操るDJとして注目を浴びる。1994年に1stアルバム『KRUSH』をリリースし、現在までに9枚のソロ・アルバムと1枚のMIXアルバム、2枚のセルフリミックスアルバムをリリース。ソロ作品はいずれも国内外の様々なチャートの上位にランクイン。現在も年間、約30カ所以上のワールドツアーを敢行している。地域を越えて、多岐に渡り高い評価を得続けるインターナショナル・アーティスト。