槌屋先生のエネ噺 第6回目
読みもの|6.26 Fri

槌屋先生の槌屋先生のエネ噺
槌屋先生のエネ噺
では、先生。石油はいつから世界で使われるようになったのですか?
世間的に広まったのは、自動車や船の燃料として。それを広めたのがイギリスのチャーチル首相なんです。チャーチルが海軍大臣の時代は船は石炭で動いていました。しかし石油で動かす船の存在を知った瞬間にチャーチルの指示で全部石油に変えたんです。石油の船は石炭の船に比べてハンドリングが圧倒的に簡単なんです。石炭というのは固形物だから、輸送する度に移し替える手作業が必要なんです。しかし石油はパイプに繋いで蛇口をひねるだけで移し替えらます。それからは石油の価値が急上昇し『石油の一滴は血の一滴』と言われるまでになる。戦争用にこんなに適したエネルギー源はないって
槌屋先生のエネ噺
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戦争の為に石油を利用したことによって、世界中に石油に広がっていったのですね
石油を含めほとんどの技術がそうですよ。戦争で開発されたという技術は非常に多い。戦争は、相手に打ち勝つために今までに無い技術開発というのをしますからね。原子爆弾もそうだし、レーダーもそうだし。
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グーグルアースもそうですよね
あれは戦争のためなの?
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人工衛星って戦争で開発されたのではないんですか?違うんですかね。
人工衛星は戦争のためではないですが、それを打ち上げるロケットは戦争のために開発されたね
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ところで、1959年にドレーク大佐によって発見され、チャーチルによって世界中に広まった。あと、先生。ロックフェラーという人も石油に大きく関わっているのですよね?僕はロックフェラー財団という言葉だけは知っているのですが
石油が出ることが分かったから、多くの人が色々な場所を掘りだした。しかし石油は、掘り続けていると、汲みだす量がどうしても減ってくる。油田が枯渇するんです。だから、石油を掘り続けるビジネスをやり続けるといつか駄目になると、頭がいいヤツが気がついた。それから何をしたかというと、石油を買い集めて、取引先に届けるというリスクのない流通ビジネスだったのです。つまり掘って当てるのは、リスクの高いビジネスで、それをやりたいヤツはやれば良い、駄目になればまた別の所を掘れば良いと。掘った石油を買い集めて需要のあるところまで運ぶという仕事をまとめたのがロックフェラー。
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そうなんですか
それと非常に似ているのが例を紹介します。1980年代にパソコンが普及したのはご存知ですよね。コンピューターのソフトを開発して売り出すというのを頭の良い人達がしていた。しかしコンピューターのソフトは作って普及すると当然、売り上げも減るんです。それを見ていて流通過程だけをやればよいと注目した人がいたんですね。それがソフトバンクの孫正義社長ですね。だから孫正義とロックフェラーは、時代は違えどビジネスモデルは同じなんです
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真似たんですかね?
いや真似たかどうかは知らない。私は見ていてそう思った。つまり、石油を掘るというのは非常にギャンブル。コンピューターソフト開発もギャンブル。しかし流通過程を支配すれば長期にわたって事業が営めるし、リスクも少ない。石油の値段も決めることが出来る。ロックフェラーはテキサスを基準にして目的地までの輸送費用を計算に入れて値段を定めたんだ
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それで儲かってロックフェラー財団というものが出来たんですね。ニューヨークにビルとかありますもんね
世界で一番金持ちなビルね。今じゃそうじゃなくなったかな。しかし単一の事業だと石油ほど大きなビジネスはないんじゃないかな
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では、この時代は石油ビジネスにみんなが挑んで、失敗したり成功したり
失敗した人がほとんどですね。石油、ソフト、これからは太陽エネルギーかもね。新しい時代への変革期は、みんな色んなことを仕掛ける。太陽光発電で起きてることはちょっと似てますね。太陽光発電パネルの製造技術を持っている会社が良い製品を作っていても、中国が安いものを売り出してきてみんな潰れているわけですね。アメリカで何が起こっているかというと、太陽光パネルを設置する業者が儲かっている。元々屋根の修理などをしていた業者が民間の家に行って「お宅に太陽光発電をつけませんか?設置すると今より少ない電気代になりますよ」と言って、電気代をその業者が代わりに払うんです。それで屋根に太陽光発電を設置して、その料金ということで電気代よりいくらか安い金額をを月々払ってくれということですね。そんなことが始まっている
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ヨシムラの今週の一枚
槌屋治紀
1943年千葉生まれ。東京大学工学部機械工学科卒業、同大学院博士課程修了。(株)システム技術研究所所長。京都・仙台エコエネルギー学院学長(リンク付き)工学博士。システム工学専攻。エネルギー・資源分析、情報科学の手法を使い、持続可能な社会への道筋を提案しつづけている。WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)にて「脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案」を発表。著書に『エネルギーのいま・未来』(岩波ジュニア新書)『エネルギー耕作型文明』(東洋経済新報社)など、訳書に『ソフト・エネルギー・パス』著エイモリーロビンス(時事通信社)などがある。
『ソフト・エネルギー・パス』は日本に初めて「再生可能エネルギー」という用語を紹介した書籍と言われている。

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