グラミン日本『やっと見つけた、私に優しい働き方』
みんな電力が自らを「ソーシャルエネルギーカンパニー」と呼ぶのは、まさにユヌス博士の影響によるところが大きい。2020年には、グラミン日本との協同プロジェクト「グラミンでんき」を発足。すでに、応援金を通じてシングルマザーや生活に困窮する人々を支援する取り組みがはじまっている。
本記事はグラミン日本で就労支援を受けているメンバーから、その取り組みをレポートいただく、初の試みである。
私は難病を抱えながら、家族と暮らす30代女性です。
1つは、全身の筋肉に炎症が起きる病気で、もう1つは脳を含めた体全体に炎症が起きる病気。
それらは原因が明確でないため治療法が確立しておらず、長期の療養を必要とする疾患として厚生労働省が指定する難病でした。
状況も飲み込めないまま、診断されてすぐに、人生で初めての入院生活と劇薬を多量に用いる投薬治療がはじまりました。
右も左もわからない不安の中、ただ、とても怖かったことを鮮明に覚えています。
本来ならゼミの出席日数の関係で卒業は許されないところ、教授や大学職員の方々のご厚意で、特例的に留年することなく大学を卒業できました。
大学卒業後は通算6年間、契約社員や派遣社員として働き、非正規雇用ゆえの貧困を身に染みて感じてきました。
その後、2015年に結婚して専業主婦になりました。
「どうして私だけこんなに落ちぶれてしまったんだろう」
社会人として誇れる実績がないぶん、過去の栄光にすがるように、学生時代へ思いを馳せることが多くありました。
また一方で、同年代の人たちよりも健康面で不利なことは重々自覚しています。
キャリアを手に入れるためには同じ働き方を求められ、無理し続けなければならないのかと、やるせなさを抱えていたのも事実です。
その都度責められているようで、居心地の悪さを感じてきました。
「正社員を目指すものの、病状に左右され叶わなかった」と正直に話せばいいのですが、面接の場で自分から持病の話はしたくありません。
でもその話をしないと、まるで何も考えず生きてきたと面接官の方から思われそうで、もどかしく悔しい気持ちでした。
何のスキルもなく、正社員としての職歴もなく、今後誰が私を雇ってくれるんだろう、、」
「何がいけなかったんだろう」と、病的とも言えるほど強い自責の念に取りつかれ、思考は後ろ向きになっていました。
理想とかけ離れた現状に対して納得できる理由を探すべく、いつまでも自分の人生にダメ出し続けていたのです。
お話を最初にいただいた時、「お金を貰いながら、学べるなんてすごい!」と感激しました。
蓋を開けてみると、自分が好きなライティングの講座で、とても嬉しかったです。
一方で、自分が支援を必要とする「支援対象者である」という事実には、看過できない違和感を感じていました。
毎日の通勤が辛く、初めて「内部疾患者であることを表明するヘルプマーク」を鞄につけて乗車し、座席を譲ってもらった際のこと。
これはあの時の「自分はもう、席を譲られる側の人間なんだ」と、視界がにじんだ時と同じ種類の感情なのだと思います。
「きちんとしてこなかったから、見知らぬ方々から支援を受けるような身分になったんだ!」と、私の中で、なけなしのプライドが悲鳴をあげていました。
「この温かく居心地のいい環境はなんだろう?」
境遇が近いメンバー同士で、これまでの人生を振り返って夢を語り合い、課題提出に向けて切磋琢磨し合います。
それがこの就労支援プログラムの特徴であり、最大の強みです。
そこで一番最初の課題として、私たちはそれぞれの人生について語り合いました。
ところがはじまってみると、なにか自分の居場所を見つけたような、安心感のようなものを覚えました。
ずっと辛かったから、仲間の話に自分を重ねて、お互いに心が震えたのかもしれません。
中には、相手の話に共感して涙するメンバーもいました。
壮絶という言葉さえ浮かんで来るような体験談を耳にし、私は疑問に思わずにはいられませんでした。
それなのに彼女たちの生き様はとても真っ直ぐで、気づけば、尊敬の念を抱いていました。
私たちの距離はこの時ぐっと縮まったのです。
グラミン日本では、チームのメンバーも支援してくださるサポーターの方々も、私を大切な一人の人間として扱ってくれました。
心を込めて私の話を聞いてくれ、頑張りを評価し、寄り添ってくれました。
「私にも、できる仕事があるのかもしれない」
そして以前の自分と比べると、格段に伝わりやすい文章が書けるようになったと思っています。
また、課題でライティングスキルを磨くのと並行して、フリーランスとしての仕事のはじめ方も学びました。
ランサーズを通して、私は実際のクラアントから仕事を発注していただけるようになりました。
依頼を受けるには、自分の長所をアピールし、数いるライバルの中から選んでもらわなければなりません。
それは一番に手を挙げることです。
どんなに怖くても自信がなくても、そうしようと決めました。
この心がけから、挑戦していく自分に成長できたのだと思います。
「自分が好きになり、私に優しい働き方が見えてきた」
グラミン日本が私に価値を見出して育ててくれたことで、受講前の毎日からは想像もできないほど色々なことができるようになりました。
まさか自分が、企業経営者の方々に取材をしたり、求人広告を代筆したりするなんて!
自分が好きな「文字を書くこと」で、自己実現と他者貢献ができ、とてもやりがいを感じています。
なにか特別な選ばれた人たちにしかそういった仕事はできないと、漠然と思っていたからです。
フリーランスとしての働き方はすべてが自己責任となるため、正直不安もあります。
しかし、自分でペースを調整できるので、私の身体に合った働き方だと実感しています。
そのため、一般的な働き方に合わない自分は落ちこぼれだと悲観的になっていました。
体が弱いことも含めて私は私であり、そんな自分を軸にした「私に優しい働き方」をしてもいいのではないか、と意識が変わったのです。
気持ちに寄り添うだけなら、カウンセラーの方がいたかもしれません。
スキルを学ぶだけなら、独学や他の就労支援でも身についたと思います。
今後はご恩を返していけるように学びを活かし、仕事を自らつくり出せる人となって活躍してまいります。
グラミン日本:https://grameen.jp/
▼みんな電力×グラミン日本の活動はこちらのリンクから▼
グラミンでんき:https://minden.co.jp/personal/grameen/
▼グラミン創始者ムハマド・ユヌス × みんな電力大石英司対談はこちらの記事から▼
ムハマド・ユヌス × 大石英司|世界を治す具体策:https://tadori.jp/professoryunus-01/
Kさんの記事、いかがでしたでしょうか。
みんな電力はグラミン日本の取り組みに賛同し、「グラミンでんき」を通じて今後も協業を続けていきます