味の素でヒット商品を手がけた敏腕マーケターの壮絶人生と赤いシロップの物語
読みもの|8.30 Wed

目次

「葉山コーディアル」誕生秘話              <その1 つなぐ人。>

昨年からTADORiで取り扱っている「葉山コーディアル」の赤紫蘇シロップ。今年も無事収穫を終え2023年版が発売されました。赤紫蘇は代々農薬不使用にこだわる「いさむファーム」さんを中心とした葉山の農家さんたちのもの。鎌倉のきしろホームさんのお婆ちゃん達が手作業でシソを洗浄し、平塚にある社会福祉法人しんわ学園の生徒さん達によって瓶詰め・ラベル貼りを行っている、そして1本につき100円が一般財団法人シャンティハウスに寄付され、母とこども、障がいや病気のあるひとのサポート活動の支援につながるという地域密着型商品。と、聞いだだけでもこれは何かいろいろな背景がありそう…一歩突っ込んだお話を伺うべく企画販売元であるfreebeeの中島広数さんを鎌倉に訪ねました。

ソーシャルビジネスを展開する「freebee」の中島広数氏

生まれる前から死を宣告 障がいのある子の親になった大企業戦士

大手食品メーカー(味の素)入社3年目の中島さんが海外駐在員として中国に赴任する1か月前に生まれた長男・優大くんは、水無脳症という重度の障がい者でした。先天的に大脳が欠落してるため何年生きられるかわからない不安、一日に数え切れないくらい起こるてんかん発作、常に緊張状態の海外での子育て…。

「当時の中国はひとりっ子政策で、障がい者の子供は珍しく奇異の目にさらされるというか。家族は一緒にいればなんとかなると思っていましたが……とても辛い経験でした。」

4年後に帰国して念願の商品開発マーケティング担当に。奥様とは東京外語大ラグビー部の部員とマネージャーという間柄で、猛アタックした最愛の女性。

「その頃はまだ自分のキャリアが優先で、子育ては妻に任せっぱなし。かなり負担をかけてしまいました。」と振り返る中島さん。

生まれる前から死を宣告された優大くん。。。中島さん夫婦の大きな愛と味の素という大企業の懐の深さ、周囲の協力と理解、やがて生まれた弟と4人家族の中で10歳まで精いっぱい生き抜きます。

優大くんの親でいた10年間は、人間の生きる力と向き合い、小さな幸せのあたたかさと次々と襲う苦難の連続の中で、夫婦にとっても、中島さん個人の人間形成の上でも、かけがえのない時間となりました。

優大くんの死と前後して

「自分の横にいる人を喜ばせたい」

という純粋な気持ちが強くなり、<cook doきょうの大皿>を企画。ご存じのようにシリーズは大ヒットし敏腕マーケターとして飛ぶ鳥を落とす勢いで出世街道を歩んでいた中島さんでしたが、駐在先のタイで読んだ、ディスレクシア(文字の読み書きが困難な障害)に悩んできたイギリスの実業家リチャード・ブランソンの著書と、バングラデシュの経済学者でマイクロクレジットの創設者ムハマド・ユヌスの著書に大きな感銘を受け、

「自分もマーケターとして利益を生む社会のしくみをつくりたい!」

と一念発起。順風満帆なサラリーマン生活から飛び出して2018年に独立、ソーシャルビジネスの会社「freebee」を立ち上げます。

幸せ循環型ソーシャルビジネスのムーブメントを起こしたい

bee=ミツバチを社名とした由来を伺うと

「ミツバチはすごいマーケターなんですよ。いろんな花の蜜を集めて自分たちで蜂蜜を作り出すわけでしょう?それともうひとつ、自由になる・幸せになるという日本語を英語ではbecomeではなくbeを使いますよね、be free、be happy。つまり自分に許可を出すこと、そうであることを認めたら、自由で幸福になれるんです。これは私が仕事で行き詰まったときに旅したインドのリシュケシュ(ヨガの聖地)で学んだ境地でもあるのですが、そのダブルミーニングでfree beeという社名にしました。」

freebeeが企画販売する商品「葉山コーディアル」の赤紫蘇シロップは、中島さんが目指すソーシャルビジネスの実例として手がけているもの。2019年から始めて1年目は飲む酢、2年目からシロップに、3年目はコスト高に悩んで、ミドルスケールのものづくりを地域でやりたいという想いがカタチになってきたのが、4年目となる今年。

写真奥の赤紫蘇酢からはじまった「葉山コーディアル」。今年も出荷時期を迎えました。

「農家支援、地域貢献、課題解決…葉山コーディアルの成功事例をほかの地域に共有してもらって○○コーディアルとして広がり、世の中全体のムーブメントになっていけばいいなと思っています。目的は価値の連鎖。幸いなことに鎌倉には賛同してくれるシェフやホテルも多々あり、じわじわと手応えを感じています。冬にはゆず、春にはミントのシロップと、シリーズも拡大予定です。」

炭酸で割れば色も風味も暑い夏にぴったり。爽やかな赤いシロップを味わいながら、赤紫蘇の生産者であるいさむファームさんを訪ねてみたくなりました。次回につづく。

中島さんと優大くんのお話を詳しく読みたい方はこちら
「優大とわたしたちの10年間の物語」

https://www.shantihouse.life/yudai-and-ours-story

▼ご注文はTADORiオンラインストアから

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記事を作った人たち

タドリスト
古谷尚子
神奈川県出身、鎌倉在住。某出版社に33年、編集者としてカリスマ美容家IKKOさんの書籍をベストセラーに。カラスミから器まで、なんでも自分で作ってみたい症候群。