【第3回】ホセ・パルラ Jose Parla|”Small Golden Suns”
読みもの|11.30 Wed

  ニューヨークを拠点に活躍し、キューバをルーツに持つアーティスト、ホセ・パルラ(Jose Parla)インタビューの最終回。エネルギーとアートの関係性について、聞きました。
 「芸術は癒しとなりうる」とパルラは言いますが、「それ以上にできることがあるはずだ」と付け加えます。パルラにとって芸術とは、感情を揺さぶり、物語り、すべての年代の人間が共鳴できうるような冒険です。「アートはその日をより豊かなものに変え、子どもも大人も芸術によってポジティブな影響を受けます。世界中で日常的に見られる負の繰り返しから、想像力の世界へと抜け出せるように、それがたとえ一瞬だとしても、芸術は背中を少し押してくれたり、あるいは飛び込ませてくれたりするのです。」と、語っています。
 個展は天王洲に移転したユカ・ツルノ・ギャラリーにて、12月3日まで。

 

jose

Courtesy Yuka Tsuruno Gallery

——アートが本来私たちの生活に密接なように、電力と関わらないで生きられる人間はいません。そこで、今日私たちは電力会社として、アートとの親和性を探りに、お話を伺いに来ました。
パルラ おかしいのは、誰もがたいていの場合はただ電気代を払い、自分が何に対して料金を支払っているか考えもしない実態です。それがマジョリティで、ほんの一握りの人々だけが車のガスを電気に代えたり、家にソーラーパネルを設置しています。
 アートの世界にいると、比較的意識の高さは感じます。それは、アーティストたちは今世界にどんな波がきていて、そこで何をすべきか考えたり、喋るのが好きな人種だからでしょう。シェフは食材について考え、建築家は素材、それこそエネルギーについて考えます。
 同時に現実は、アートや建築の世界の外では日々の生活が忙し過ぎて、エネルギーのことなどに想いを馳せる時間などないこともわかります。仕事をし、子どもの世話をし、買い物をして料理して、時間がなくなる。だからこそエネルギーや食、もちろんアートについて、そして教育についても教育していくことが必要です。
 エネルギーは独占的に扱われるべきではありません。若者が関われるよう、透明性が重要です。アフリカなど、世界の街はこれからも進化と成長を続けていくわけですから、電力はもっと必要です。透明性があってこそ、エンジニアも建築家も育っていくでしょう。
——日本で語られることは少ないですが、近年の世界的なメインイシューは気候変動です。
パルラ 現状ではごくごく少数の人間だけが、エネルギーの維持、保持に必要な教育を受けることができます。誰もがエネルギーと関わらずに生きていけないのに、なぜ大多数に向けた教育ができないのか。それができれば、もっと明確で有効な解決法を皆で見出すことができるのではと思います。それなのに、科学者も政治家も「気候変動が大変だ」と騒ぐだけで、誰も本気で教育に問題を持ち込もうとはしません。
 NYには、さらにビルが建てられ、人口は増える一方です。ということは子どもも増え、「それでは学校も増えている?」と街を見渡すと、誰も学校を建てていません。限られた、少しだけある優良な学校は高額の学費で、入学するには高い倍率をかいくぐらないとなりません。

jose

Courtesy Yuka Tsuruno Gallery

——まるで、あえて大衆を教育したくないかのような、、
パルラ しかし世界が終わろうとすれば、富裕層の住む世界も終わってしまうわけです。誰もが火星行きのチケットを手にすることはできない(笑)。
 2週間前、私はNASA主催のコンベンションに呼ばれて、コネチカット州にいました。選ばれた50人のアーティストが宇宙飛行士と会い、交流する企画でした。その時に印象的だった、スペースステーションの設計士が言ったシンプルな言葉は、「私たちが解決しなければならないのは、地球の問題です。私たちに行く場所はないんです」ということでした。
 20年経てば、人類は火星に着いて、スペースステーションで活動するようになります。火星では氷が発見されています。私は彼らに、「地球では氷が解けています。火星の氷を地球に持って行けないんでしょうか?」と聞きました。でも答えは返ってこなかった。彼らの問題意識はそれよりも、オゾン層の修復にあったようです。
 宇宙について今のところわかっているのは、この地球だけに、太陽から発せられる強烈な放射線を防ぐ防御壁があるということです。一体何の為に、地球にそれがあるのでしょう?誰がつくったのでしょう?そのおかげで私たちはもちろん、動物も植物も水もここに存在しています。その奇跡を私たちは意識すらせず、維持することにも苦労しているのが現実です。
——壮大な話になりました(笑)。詰まるところ私たちにできることは、日常生活から、その生活を支えるエネルギーから、一人一人が意識を持って「選ぶ」行為を重ねていくことかと思います。
パルラ その通りです。エネルギーがどこでどのようにつくられているか。自分が何を食べ、身体の中に入れるか。それらがどこから来ているか、常に意識することが重要です。すべては繋がっているからです。

jose

Courtesy Yuka Tsuruno Gallery

——その時、特にアートが担える役割とは?
パルラ アートは一つのメディアと言えます。それは一つの、私たちが普段使うのとは違う言語です。アートは何らか、あるコンセプトをプロモートします。例えばある作品が「何もない」と言ったとしても、アートは「何もない」ことを伝えます。だからその意味で、アートは常に何かをプロモートし、メッセージを伝える力を持っています。
 アートは私たちに情報を与えますが、その時に一歩、人々を一般的な新聞やニュース、学術的な情報の外に踏み出させます。視覚を通じて、心を今までとは違う場所、意識していないところに導くのです。
 例えばブラックとピカソはキュビスムをはじめました。彼らは当時フィルムの傷などを作品にしていた実験映画に影響を受け、そこに観たかたちを作品に反映させました。そして建築家がピカソの展覧会に行き、キュビスムに影響を受けた建築物を設計しました。そうして市民がその建物に住むようになると、そこにある空間に適応していく中で、生活のかたちが変わっていくわけです。創造力がどう機能し、流れていくか。一つの表現が、次の何かに影響を与えていくのです。
 アブストラクト・アートができるのは、例えば建築家、科学者、シェフ、批評家、ジャーナリストに影響を与えることです。もっと直接的にメッセージを訴えかける、バーバラ・クルーガーのようなアーティストもいます。JRというアーティストは、写真を通じてインド、ブラジル、カンボジアにある問題を喚起しています。パフォーマンス・アートの領域にも同様に、詩的で政治的なことを表現するアーティストがいます。
 見るもの、感じるものの精神を開く、たくさんの契機をアートは提示します。それがアートの仕事であり、アーティストは人々の想像力を、自分自身の想像力で触発していくのです。
jose

ホセ・パルラ/Jose Parla

パルラは1973年マイアミ生まれ。サバンナ美術大学とニューワールド・スクール・オブ・アーツでペインティングを学び、現在はブルックリンを拠点に活動しています。これまで国内外での様々なパブリック・プロジェクトに取り組んできていますが、近年ではニューヨークのワン・ワールド・センターのロビーに設置された約27メートルの大規模な壁画や、バークレーセンター(ブルックリン)の壁画、第11回ハバナ・ビエンナーレでのフランス人アーティストJRとのコラボレーションプロジェクトなどが大きな話題となりました。最近の個展に、ハイ美術館(アトランタ)、メアリー・ブーン・ギャラリー(NY)、ブライス・ウォクコヴィッツ・ギャラリー(NY)、ハウンチ・オブ・ ヴェニソン(ロンドン)などがあります。パルラはジャクソン・ポロックやジョアン・ミッチェルのようなアメリカの抽象表現主義の系譜を引き継ぐ作家として世界的な注目を集めており、国際社会におけるアイデンティ、マイグレーション、イマジネーションなどをテーマにした大型作品を中心に活動しています。

 

(取材:平井有太)
2016.11.30 wed.
SHARE: LINE Facebook
URL
URLをコピーしました