【第2回】ORIS|1904年創業の時計ブランドの電力切り替え
読みもの|11.18 Mon

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  スイスで1904年創業の時計ブランド「ORIS」。昨年設立されたばかりのORISジャパン社長に就任され、早速電気をみんな電力に切り替えてくださった田中麻美子さんインタビュー、第2回。
 初回で田中さんは、物事のそもそもの成り立ちに目を向けず、あらかじめ用意されたもの、大勢が良しとするものを無条件に受け入れがちな日本人の気質に警鐘を鳴らされた。
 では、田中さんの姿勢の根底には何があるのか?
 そこを掘り下げていくと、電気のトレーサビリティを可視化するみんな電力の在り方とはもちろん、お好きという銀座、そしてサステナブルを体現し、店舗には大きく「Go your own way(自分の流儀を貫く)」と掲げられているORISとの共通項が見えてきた。

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ー田中さんのお考えは、何かそういうことを学ぶ経験がおありだったのか、どなたかからの影響か、もともとそういう性格だったのか、、?
田中 もともとそういう性格だったと思います(笑)。何でも「なんで、なんで?」って。
 何かの時に、学校で怒られても「どうしていけないんですか?」と先生を追いかけて、「うるさい」と言われても「そういうことを教えるのが先生の仕事じゃないんですか?」と言ってしまうような、いやな子供でした(笑)。
 だから、若いうちは日本から外に出たくて仕方なかったんですが、それは必ずしも窮屈に感じていたということでもありませんでした。「もっと違う場所で、違う生活をしてみたい」と思って青年海外協力隊に参加し、フィリピンの難民センターに派遣されたんです。
 その中でいろいろな人と喋ったり接しているうちに「私、別に異常じゃない」と思ったんです。ずっと過激だとか変わってるとか面倒くさいとか言われてきたけれど、「あ、いいんだ」って海外で気づきました。
ー時が経ち、社会は変わりつつあると感じますか?それは例えば電気についても、当初はみんな電力に対して「電気に付加価値なんか必要ない」と言われていたところから、徐々に反応が変わってきていると感じます。

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田中 はい。「電気に色はつけられない」と言われていたところから、ブロックチェーンを使うようなこともして、素晴らしいことだと思います。
 私も勝手に応援してきて「同じ電線を伝ってくるのに、区別できないでしょう」みたいなことを言われたり、「それってギミックですよね」と言われたりしました。でも、ちゃんとそうじゃないということを証明してこられたのは、素晴らしいことです。それによって受け止め方も大きく変わります。受け手が「本当かな?」と思ってしまわない、実感を提供されているのですから。
ーそこから理解が進んできている。
田中 昔から「それはいいことですね」と言ってはきたけど、そこが確認できる、本当に「顔が見える」のか、そこはブレイクスルーを起こす上での大きなボトルネックの部分だったんじゃないでしょうか。そこがクリアになれば、もっと多くの人々が「じゃあ、私も」と参加してくださるんじゃないでしょうか。
ーちなみに、御社ではどこの電気を選ばれたんですか?

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田中 みんな電力さんは変なところから電気を買っていることはないと信頼していますので、ある意味どこでもよかったんです(笑)。「ORIS(オリス)」はスイス本社の近くを流れる河の名前なので水にまつわる発電所がいいということで、長野県の高遠にあるダムの水力発電所を選びました。
 ちなみに自宅も電気は切り替えていまして、家では銀座みつばちさんの電気を応援しています。私も「みつばちを護りたい」と思っていますので。
ーお互い銀座同士でご面識はおありですか?
田中 実はまだなんです。ぜひ、お知り合いになりたいと思います。
 銀座はいろいろな意味で注目されるところですし、銀座自体がブランドなので、皆さん様々な取り組みをちゃんとやってらっしゃいます。そういう意味でも、銀座商店街全体でできることがあればいいなと思っています。
 私はずっとブランドビジネスをずっとやってきました。そういう経験を通して銀座には特別な印象を持っています。ビクトリノックス時代もその前のブランドでも銀座にお店を開けました。だいぶ変わってはきていますが、個人的にもとても好きな街です。古き良きものを護って、往年の雰囲気を残そうとする商店会の方々がいらっしゃって、あまり他の街にはない強みだと思います。
ーそういった感覚と、ORISの大事にしているものは、繋がっていますか?

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          2014年、創業110年記念に発表されたキャリバー110をベースに進化させた新作自社製キャリバー搭載モデル「キャリバ−115」。
          本体だけでなく香箱までがスケルトン仕様で、長い主ゼンマイが10日間かけて巻き戻る様子までを可視化している

田中 はい。ORISには機械式の時計だけをつくるというポリシーがあります。つまり電池を使わないんです。そういう「アナログなものを大切にしたい」という想いが強くあって、なんでも電気で稼働させるということに少なからず抵抗があるのは確かです。でも、電気がないとできることが限られますので、それなら「せめてクリーンな電気を使いたい」と思っています。
 それを使いながら、「本当ですか?」、「どうクリーンなんですか?」ということを、一つ一つ関心を持つことは大切だと思います。批判的になるわけではなく、物事をちゃんと自分で考えるということが大切で、本当にちゃんと考えるには、いろいろなことを確認必要がある思います。

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独立を貫き、実用的かつ独創的な本物の機械式時計にこだわってきたORIS。このVRで、熟練の技術が詰まった上記キャリバ−115の内部を探索できる

ースイスから特に学べることは、なんでしょう?
田中 「日本が参考にしたらいいのにな」ということはたくさんあります。
 例えばビクトリノックスはスイスでいうトヨタのような、国を代表するくらいの会社なのに、本社があるのはチューリッヒから電車で約1時間半の田舎町です。ネスレなどの大企業も、都会にありません。日本的では、ずいぶん前から「一極集中は良くない」と言われてきているのに東京の人口は増え続け、地方都市の過疎は進んでいます。それでいて「地方創生、地方創生」と、かけ声ばかりが先行しているように感じます。
 スイスは「集中する必要がどこにあるの?」、「特に今のどこでもコネクトされている世界で?」というスタンスです。地理的にかたまる一方で、なぜ例えばリニアモーターカーなどを走らせるのか(笑)。スイスでは、ORISを含め、多くの会社が創業の地から動きません。もともと、その土地の「雇用を創生する」というモチベーションがあって、そのコミュニティにいることを大切にしている傾向が強いと思います。

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みんな電力はオリスジャパンへ、オリス銀座ブティックのオープン記念としてコースターを贈りました。
このコースターは「シードペーパー」で出来ています。シードペーパーとは、再生紙にさまざまなお花の種をすきこんだ、環境にやさしいリサイクルペーパーです。
コースターを一晩(8時間程度)水につけ、土に植え水やりを続けると、1週間ほどで発芽し、2カ月ほど育てると花が咲きます。忘れな草、ナデシコ、ヒナゲシ、イングリッシュデイジーなど10種類以上の花の種が入っています。

ORISと銀座、そしてみんな電力が自然に繋がっていった第2回記事。最終回は、来週月曜25日の公開です。お楽しみに

 

【初回】ORIS|1904年創業の時計ブランドの電力切り替え
【最終回】ORIS|1904年創業の時計ブランドの電力切り替え

(取材・文:平井有太)
2019.10.30 Wed.
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