【第3回】ムハマド・ユヌス × 大石英司|世界を治す具体策
みんでん代表の大石さんは、ユヌスさんから受けた影響を要所要所で公言している。
その視点は常に社会的弱者の支援にある。とはいえ、それは安直にお金を渡して支援は終わりというものでなく、それぞれがそれぞれだからこその力を発揮することに繋がる、持続可能な自立を促すものだ。
そもそもの起業の目的を、「貧困の解消」と当初から口にされていて、ユヌスさんの存在を抜きに考えると、実際「電気とどう繋がるの?」とピンとこないこともあった。それが、起業から10年の節目が近づくタイミングですべてが一つに集約されてきた、そんな必然性まで感じる今回の邂逅。
両者終始笑顔で、さらには未来に向けた協業の可能性まで見えたエポックメイキングな対話、ぜひ。
ユヌスさんのまわりの起業家、例えばリチャード・ブランソンさんや「チームB」と呼ばれる方々の行動は、コロナパンデミックを受けて変わりましたか?
そこでは、例えば「プロフィット(利益)、プラネット(惑星)、ピープル(人類)」という3つのPを融合させ、それらをどう年間レポートに反映させるか、そこにカギがあります。企業は現在、プロフィットのレポートしか出していません。株式市場もプロフィットのことしか意識にないので、プラネットのこともピープルのことも見落とされています。本来であれば利益だけでなく、この惑星のこと、そこで暮らす人々のことまでを含めて、評価の対象にしなければいけません。
私がいつも指摘するのは、皆さんはそれだけ働いてきて、価値観は確かに少しずつは変化してきているものの、オペレーションそのものにまだ変化がないということです。
また、最近ですとユニクロがソーシャルビジネスとして、バングラデシュで製造をしています。しかしユニクロはグラミンの工場からだけでなく、バングラデシュ全土の工場と取引をしています。ですので結果として、様々な窓口からバングラデシュ製品は日本に流通しているかと思います。
これまでそれをやっていない理由は、あるのでしょうか?
理由としては、私たちは製造を請け負っていて、これまでマーケティングには携わってこなかったからです。私たちはオーダーを受注し、その通りにつくるということをシンプルにやってきました。
もしオファーがあれば、グラミンの名を使う上で、そこに込められた意味を理解、共有してくれる企業とジョイント・ベンチャーのようなかたちで協業することは可能です。それはもちろんあなた方、みんな電力とも「グラミン」の名の元に日本でマーケティングを開始できたら、嬉しく思います。
私たちの日々の暮らしの参考にもなるであろう、グラミン銀行はもちろん、ユヌスさんの様々な取り組みの背景にある哲学/思考については次回、そして最終回にお伝えする。
かたや日本の起業家の意識変革は、まだまだです。彼らの意識は利益中心ですので、私からも働きかけていこうかと思っています。そして私の娘、息子にもその精神をしっかり伝えようかと思います。
ワクワクする協業の可能性まで飛び出したユヌス×大石対談。ユヌスさんの哲学的背景に迫る次回は、9/23(水)公開です