【最終回】ソーラーシェアリング|農業とエネルギーの融合
読みもの|10.29 Sun

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  ソーラーシェアリングの可能性は、多方面から、大きな期待を集めている。それは、本年4月に開催された「匝瑳メガ・ソーラーシェアリング第一発電所」落成式に集まった、豪華な面々を見れば明らかだろう。
 日本の農業は慢性的な高齢化、後継者不足に悩み、常に安価な海外産の作物の脅威にさらされている。それが同じ農地で創電により収入が増え、電力の供給を通じて社会を支えている自負が生まれ、本来あるべき地産地消の新鮮で美味しい作物が流通するとしよう。
 その好循環は、何よりまず消費者である私たち市民の生活に影響をもたらす。大量生産と大量消費が巻き起こしてきた歪みについて考えるにつけ、食とエネルギーを地域で賄う以上の贅沢はないのではないかと思うのだ。
 ソーラーシェアリングをすすめる千葉エコ・エネルギーの馬上代表に聞いた話の最終回、この新しい創電と農業のかたちが、社会に広がるきっかけとなりますよう。

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取材を受けるお三方がどなたで、それぞれがエネルギーにどのような立場かは言わずもがな。一番右が、千葉エコ・エネルギーの馬上丈司代表

ー式典には細川、小泉、菅という3人の元首相が集まりました。どうしてそんなに注目されているのでしょう?
馬上 一番の理由は、ソーラーシェアリングが自然エネルギーの普及と農業の再生を一度に成し遂げられる取り組みだからだと思います。飯塚開畑地区では、広大な耕作放棄地が耕地として蘇り、若手の農業者が集い、更に地区の電力需要を超える発電設備ができました。
 脱原発の流れでの自然エネルギー普及だけでなく、わが国にとってもう一つ重要な「農業への大きなインパクト」が注目される理由でしょう。
ー3人の元首相から、何か印象的な言葉はありましたか?
馬上 小泉元首相の「こんな雄大な景色の中で式典に参加したことはない」という言葉と、「大きな転換期にある農業とエネルギーを、ソーラーシェアリングなら両立できる」という言葉が印象的でした。
 3人の発言に共通していたのは、エネルギーも農業も日本にとって重要な課題であって、それにソーラーシェアリングは大きな貢献ができるだろうということでした。
ーソーラーシェアリングの利点と課題はなんでしょう?

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馬上 ソーラーシェアリングの利点は、農地を活かしたまま自然エネルギーの生産拠点としても活用できること。そしてそのエネルギーや得られる収益によって、農業者の方が潤うと言うことです。ただし、そのためには地域の農業者の方々がソーラーシェアリング事業に関わっているか、飯塚開畑地区のように主体的に取り組む必要があります。
 課題は、まだまだ社会的な認知度が低いこと、設備があることによる農業への影響が体系的に研究されていないこと、そして先ほども述べた資金調達です。設備の設計や資材については開発が進んでおり、現在のFITによる調達価格でも十分に収支が合う水準にあります。しかし、野立ての太陽光発電とは勝手が違う部分もあり、FITが事業用太陽光発電を一括りにして扱っていることも懸念事項です。
ー匝瑳市のソーラーシェアリングでつくられた電力は、どのように使用されるのが理想とお考えですか?
馬上 最も理想的なのは、ソーラーシェアリングのある地元で消費されていくことです。そしてもう一つは、畑でつくられた農産物と一緒に消費者のみなさんへと届けて使ってもらうことですね。
ー以前いただいた、ソーラーシェアリングの畑で採れた大豆でつくったお味噌、とても美味しかったです。

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視察と取材後、農家さんのお宅で食べさせていただいた昼食。採れたて野菜のサラダ、卵ご飯、自家製味噌の味噌汁の美味しさは改めて言うまでもなく

馬上 ありがとうございます。
 先ほどもお話ししたとおり、飯塚開畑地区のソーラーシェアリングでは有機JAS認証に向けて、農薬や化学肥料を使わない栽培方法をとっています。そうやって取れた大豆を農家さん自身がお味噌に仕込んでいる特製なので、私も毎日美味しくいただいています。
ー電力を使う側、つまりこれは私たち全員になりますが、消費者に期待することはありますか?
馬上 一口に「自然エネルギー」と言っても、一つ一つに様々な背景があります。その発電所がどういった経緯で作られたものか、発電所のある地域に貢献しているものであるかに考えを巡らせていただければと思います。
 匝瑳市のソーラーシェアリングは、「地域の農業を復活させたい、将来に繋いでいきたい」という地元の方々の強い想いでプロジェクトが築き上げられてきました。東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故でエネルギー問題に大きな関心が集まりましたが、その裏で国内の農業は危機的な状況になっています。ソーラーシェアリングの電気を使っていただく中で、同じく自然の恵みを活かす農業にも想いを馳せてください。
(取材:平井有太)
2017.10.01 sun.

 

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