鎌田安里紗さんと考える、「ファッションのあり方」。
読みもの|1.11 Tue

モデルやエシカルファッションプランナーとして、ファッションのあり方を追求する鎌田安里紗さん(以下、鎌田さん)。鎌田さんが共同代表を務める、一般社団法人unisteps主催のファッション・フロンティア・プログラム(以下、FFP)、コミュニティ型で、自身が栽培したコットンで製品をつくるプロジェクト「服のたね」をはじめ、鎌田さんのファッションへの見解をお伺いしました。

鎌田さんと「ファッションのあり方」をタドる

ー多くの環境負荷をもたらすとされる、ファッション業界を牽引する人材を発掘・育成する「FFP」。何をきっかけに始まったのでしょうか?

現在「サステナブルファッション」というと、アップサイクル、リメイク、環境負荷が低い素材に変えて服をつくることなどが頻繁に議論されていて、それはもちろん重要なんですけど、「もっと根本的に衣服のデザインを考え直してもいいんじゃないか」という話をしていて。

日本でも海外でも、ファッションの専門学校では、「服のつくり方」や「ファッションのビジネス」を中心的に学ぶので、環境のことだけじゃなくて社会的なトピックに関して包括的に学びながら、衣服のことを考える場所って少ないですよね。

なので、表彰するだけじゃなくて、選出されたファイナリストがエデュケーションプログラムを受ける期間があって、そのあとに作品を完成させて受賞者が選ばれるという仕組みになりました。

ーこのプロジェクトの率直な感想をお伺いできますでしょうか?

ファイナリスト8名の、ファッションとソーシャルレスポンシビリティへのアプローチの多様さが印象的でした。

サステナビリティーはじめ、社会的なトピックに取り組む時って、どうしても外に課題があって、それに対する解決策を提示していくというか。

例えばCO2を減らすことがゴールだと、やるべきことが決まりがちなんですけど、今回のファイナリスト8名が、内発的にどうしても自分が手放せない課題を軸に、社会を持続させる作品をつくろうと試みていたところが、面白かったなと思いました。

ファッションフロンティアプログラムの写真
FFPファイナリストによる作品

ーこのプログラムを通して、今後必要なアクションは何だと思われましたか?

やっぱり「教育はすごく大事だな」と思っていて。モノが生まれる現場へのリアリティーが全然なくて、つくる人と使う人の距離が非常に遠くて、断絶があるじゃないですか。

今の社会の中で育て上げられた消費者マインドって、できるだけ低い出費で高いリターンを得るっていう感じになってしまってる。でも、モノを受け取る時、そのつくり手側の論理が想像できる状況になった方が、いろいろ健全だなと思いました。

まわりまわってみんな生産者でもあるし、消費者でもある。教育でもっとファッションの文化的なことを取り扱って、現場に行く機会があってもいいかもしれないし、「服のたね」を学校でやってもいい。やっぱり教育は重要だなと思っています。

ー私も今着ている服が、「どこで、誰が、どのくらいの資源でつくっている」など全くわからないまま手に取ってしまっているので、これからどんどん見える化していったらいいなと思います。

資本主義のルール上、どれだけ安くつくって売り上げを出すかが勝負の仕方になってしまってるけど、ルールそのものが変化していく必要があるなと思います。

この間いろんな人と雑談ベースで話してたのは、例えば、洋服の輸入関税が上がって、その税収が国内の産地のサポートに回ったらどうなるかなとか。さらに、つくった分を完全に売り切ってロスゼロを実現できた場合、還付がありますとか。

そうなったら、安く大量生産大量消費することで、儲かるモデルが変わるはずなので、そういう動きが変わるルールチェンジとかが、今後は必要なのかもしれません。

「服って本当に植物だったんですね」。消費者行動に影響をもたらす「服のたね」

ーコミュニティ型で、自身が栽培したコットンで製品をつくるプロジェクト「服のたね」。きっかけは何でしょうか?

一番最初は自分の着ている服が、「どこで、どうやってできてるか」とか、全然わからないなという、ちょっとした疑問から、いろいろ調べたり産地に足を運ぶようになって、実際工場に行ったりすると、すごく面白くて。

これ知らずに服を着てたのは「本当にもったいない」と思って、この体験をみんなにもシェアできないかなと思い、スタディツアーを企画しました。海外や国内の生産現場で生産者のお話を聞いたり、実際にコットン畑で摘んでハンカチを織ってみたり。そうすると、普段ものづくりに関わってない人たちが、現場を見た時のリアクションがすごく良かったんです。

繊維工場ツアーの様子の写真
繊維工場ツアーの様子

講演を90分聞いて、消費行動が変わるかって言われると、なかなか難しいと思うんですけど、体感したことって、ずっとじわじわ残っていくなと思いました。

一方でツアーだと人数やお金の制限がかかったり、もっと別の方法で「こういう体感ができないかな」って考えてた時に、たまたま知り合いの繊維商社さんにもらった、コットンの苗を家で育ててたんですよ。

家で一人で育ててたんですけど、収穫できた時にすごく嬉しくて。でもシェアする人がいなくて、使い道ないからどうしようってなって、みんなで育てて、製品にするところまで企画したら、もう完全に自分事になるんじゃないかなと思って。

繊維工場の写真
繊維工場にて、鎌田さんの一枚

ーツアーに参加された方の中で、印象的だった感想はどのようなものがありますでしょうか?

やっぱり一番印象に残ってるのは、コットン農場に行った帰りのバスで隣に座ってた、たしか19歳ぐらいの方が、「服って本当に植物だったんですね」って。

何か素朴な感想ですけど、本当に「腹落ちしたんだな」と思いました。だって、彼女は絶対知ってたと思うんです。だけど、本当に土から生えてるのを見て、自分でそれを収穫して、糸にして、生地にしたら、「本当にファッションと農業はつながってるんだ」という実感が得られたんだなと思って、その瞬間が印象的でしたね。

服のたねの写真
服のたねのカバー
服のたねの写真
服のたねのコットン発芽

ー鎌田さんは服を買う時、どんなことを配慮していますか?

すごくシンプルですけど、「本当にいるものだけを買う」。以上です(笑)。

もちろん、素材や産地やいろんなことを知ろうとしますけど、「本当に着るものだけを、よく考えて選ぶ」ということを一番大事にしていると思います。

その中でも、自分が買ったものを振り返ってみると「生産会社の規模」と「素材」には共通性がある気がします。

大きい会社よりは小さい会社から買っていることが多いように思います。小さい会社は、デザイナーやその社内の人たちの考えてることとか、大事にしてることが行き届く範囲で、何かをしようとしている傾向があって、そういう人たちにお金が渡って、その人たちが考えてることの一部を着させてもらいたいなとか、その人たちが考えていることが広がったり深まったりする一助になったらいいなって。

あと、「白い服」を買う時はルールがあって。どうしても汚してしまったりするので、染め直せるように天然繊維のものを選びます。

「古着」もいいですよね。もうこの世に生まれているものだから。「いい出会いがあったら、ハッピーだな」と思って、古着屋さんはよく覗きます。

ー「本当にいるものだけを買う」。シンプルに聞こえますが、本当そうだなと思います。一年間一回も着られていない服は、平均で一人あたり25 着という環境省のデータを拝見しました。

私、高校生と大学生の時はいっぱい服を持ってました。雑誌の着回し企画には、「先月載せた服は載せれないな」と思って、これはインスタグラムでも起こる現象だと思います。

ある日、高校生か大学生の頃、家帰ってきて部屋を開けたら、服が山のようにあって、でも「どれにもそんなに、愛着はないな」と思ったんですよね。

服がありすぎて、クローゼットにぎゅうぎゅうに入ってるから、もう全部の服を引っ張り出しても、ヨレみたいな感じで、全然素敵に見えないのが、すごく残念でした。

お店にきれいにかかってると、服って輝いて見えるじゃないですか。今自分のクローゼットは、洋服がゆっくり椅子に座ってる感じでいられるようなスペースを担保できる範囲でしか、服を持たないようになりました。そうすると、一着一着が素敵なままでいてくれるんです。

ー現在は、以前より少ない服の中で、新しいコーディネートを考えているのですか?

「常に違うコーディネートをしなきゃいけない呪い」みたいなものを解いていきたいなと思って、同じ服でいます。

意図的に同じ服でいるわけじゃなくて、自然とそうなるんですけど。たとえばメディアに出る時も、「すでに着た服とは違うものを着なきゃ」と以前は思ってたんですけど、それだって今では、「全然いいじゃん」って。

もちろん私も、新しい服が欲しくなる時はあるし、飽きることは当然あるので、新しい服も買います。でも、基本は飽きない限り「ずっと好きなもの着てればいいじゃん!」と思ってます。

FFPでの鎌田さんの一枚

今後の展望

ー今後の目標や、新たにやっていきたい活動はございますか?

今やってることを着実に進めていきたいですね。

現在事務局として関わらせてもらっている、ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)という企業連携のプラットフォームでは、毎月の会議で、「どうやったら本当にサステナブルなファッション業界になるんだろうか」ということを、企業の皆さんと熱く議論しています。

先程のルールチェンジの話のように、誠実な取り組みをしている人や企業が損をしない仕組みをつくる方法を考えて、実行していきたいです。

あとは、FFPは来年以降も続いていきます。今回はファイナリスト8名に対して学びの機会を提供したのですが、その8名に限らず、応募してくださった約100名のみなさんに学びの機会をお届けする、それにとどまらずFFPをウォッチしてくれている皆さんに思考のきっかけを提供するなど、もっとプログラムの広がりをつくっていきたいですね。

まとめ

私たちの生活から切っても切れないファッション。ビジネス、環境、生産過程など、課題は多岐にわたりますが、それらがうまく共存する理想の「ファッションのあり方」について、思いを巡らせました。サステナブルファッションをリードする、鎌田さんの今後の活動からも目が離せません。

関連記事はコチラ

SHARE: Twitter Instagram

記事を作った人たち

タドリスト
Saemi
多様な価値観を尊重する社会づくりに貢献することを目標に活動中